坂の上の雲を目指して 医療事故調 | noburindesのブログ

noburindesのブログ

ブログの説明を入力します。

 

医療事故調査制度 8年経過に思う    

24.4.13 第10回 医療安全学会に参加した。事故調査制度が発足して8年。法の設立趣旨から大幅に機能を縮小して、スタートした8年、小さく生んで大きく育てようの思いは実現していない。本学会に「医療事故調査制度における誤った理解・運用と正しい理解・運用」と銘打ったシンポジュームを見つけたので、参加を決めた。法の施行直前の省令案の検討会の構成員で機能縮小の立役者が座長以下勢ぞろいしたシンポジュームであった。当時と全く変わらない意見を聞かされ、調査支援センターは予算獲得のために届け出数の増加を画策しているなどの聞くに堪えない意見を聞いた。座長は月30件の届け出は妥当であると言い、フロアーからの発言も時間がないと封じてセッションが終わった。

 

24.4.22 M3の記事に接した。 前立腺がん術後9年での腹部CT画像の際に指摘された肺がん疑いを放置し、3年後に確認され治療開始したが3年後にがん死亡した80歳代男性の報告事例である。部外専門家を中心とした事例調査委員会の調査結果を公表した。手続きとして事故調届出、警察届出、文科省届出。遺族への説明、反省謝罪、再発防止、賠償を済ませる。遺族の許可を得てHPにて公表したものである。名古屋大学である

 
   

世界的に医療安全元年と言われている1999年から四半世紀が経つ。「事故は起こる」を前提として、透明性と説明責任と標準化が求められた。「逃げない、隠さない、誤魔化さない」文化の醸成が求められた。事故から学んで、事故の発生を減らしていこう。2002年名大で起こった腹腔鏡による出血死事例で当時の二村雄次病院長が透明性を確保した検討委員会で上記スローガンを宣言されたことは医療界の心あるものに大きな共感を呼んだ。

その原則を実現するための要の制度が医療事故調査制度である。8年3月が経った結果が年報に報告された。88ある特定機能病院のうち3病院が未だに届け出0件。16件以上の届け出が3病院である。どちらが安心・安全な病院だろうか。11万の医療機関中届け出機関は8年で1.457施設である。当初予想された届け出数1.300-2.000件/年であったがコンスタントに年360件である。寝た子を起こすな、隠し、誤魔化す旧弊文化が残っている。

   医療事故死の母数は2-~3万と言われる。

 

  警察への届け出が必要だろうか。2.004年最高裁判決が医療関連死も死因究明すべき死体であると従来の判断(診断書対象であり検案の対象ではない)を180度転換した。検案の定義で21条は死法になったから、関係ないと主張する人もいるが、厚労省は2019年、検案は外表だけの問題ではなく法医の異状死定義はそのままであると通知した。医療事故死も刑事犯の対象のままである。最高裁のトンデモ判決は法の改正以外に覆せない。今回の事例は21条マターではないので、警察も迷惑と思っているかもしれないが。21条の法改正と医療事故調査制度の本来の方向への成長がなければ、医療事故への警察の介入は警察の思惑次第が続くのである。その前に届けておけということである。

 

 上手く行かなかった医療に対して、真実説明・反省謝罪・再発防止を誓う、納得が得られなければ賠償と言うことになる。此処までが責任を取る行為であり、医療の内の行為であろう。名大の行為はそこまでしなくてもいいのではとも思う。しかし大変な労力を要することであるが、現在の医療事故に対する満点の事後対応を示したものと考える。

 

追記 コロナワクチンでの死亡をめぐり、副作用への対応が標準とは言えないとの事故調査報告書を裁判の証拠として持ち出されたので、それ見たことかと事故調査制度の更なる矮小化を訴える一派がいる。次元の違う話で、医療における過失は事後判断ではなく、その時点での判断であることを争う良い材料となる。このような事例を積み重ねて安全文化が醸成されていくのである。隠していては不信がつのるるばかりである。同じ名大である。