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  老年病学  腹臥位療法のすすめ

 最近親しき友人の息子さんが地方大学の老年科教授になったとの報に接した。生まれた時から知っている人物の情報に接して非常にうれしく思った。同時に老年科というのは急性期疾患の「救命・完治」を目標とすることから始まり、やがては「自立したADLへの修復」を目指し、挙句の果ては「死への経過の充実を図る」診療科である。

超細分化された臓器別診療科の昨今であるが 多疾患・多病態の高齢者への医療は医療のみにとどまらず介護、福祉、制度等の総合的な働きが必要である。細分化された臨床科の中で特異な臨床講座と言える。

外科医として一線を退いた今、かつての患者さん、同級生、知人、いわゆる高齢者からの相談事が多くなった。初発がんの対応、第2癌。第3癌の処置、神経難病の対処、終の棲家の紹介、老々介護の対策。すべての人にすべての物語がある。話を聞くだけのこともあるが、多くは専門家のご意見を伺って伝え、或いは紹介している。なかなか、意が伝わらないことも多いが、老年科の最終段階の一翼を担っているようなところがある。

老年科を語る時には、同級生の並河正晃君を思い出す。1972年アメリカ留学、当時始まった臨床老年科をNY マウントサイナイ医科大学で学んだ人物で、我が国老年医学の泰斗ともいえる人物である。第1線病院の臨床医として勤めながら、老年科医としての意見を発信してきた。丁度卒後30年(H10年)同窓会の時に、うつぶせ寝がいかに大切で、理に適っているかを懇々と教えてくれた。平成14年4月に医学書院から「老年者ケアを科学する・・いま。なぜ腹臥位療法なのか」を出稿したと、送ってくれた。成程,成程と感心して読んだ。当時第1線の外科医であったわが身の実感としてピンとは来ていなかった。しかし、洋式生活と和式生活による高齢者の在りよう等の考察と今後の対策が我が国にこそありという意見は納得のいくものであった。その彼は平成14年7月17日 3年の胃がん闘病の末に亡くなった。

2年後に朝日新聞のコラムに日野原重明先生92歳が「うつぶせ寝をするわけは」と書かれているのを見て我が意を得たと思った。しかし、彼の主張は今、現場で生かされているのだろうか。人生の最終段階における医療・介護の相談を受け始めて、其れに至る前の自立したADLの修復という いわゆる健康寿命の延長に関する彼の大きな示唆に気付く。20年以上前の著作であるがアマゾンではなお売られている様である。決して古くはなっていないと思う、若き老年病学教授に一読して欲しいものだ。