光る君へ第25回あらすじ&感想前編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第25話「決意」前編




雪が降っている中を

為時とまひろが民の家を訪れている。


「この村の者は秋は男が山で

雁皮を集め冬は女が紙をすくので

ございます」


大野国勝が


「どうぞ」


と、案内する。


「越前は寒うございますから

キッと目の詰まった艶のある

美しい紙が出来上がるので

ございますよ」


まひろは嬉しそうに見て回る。


「お手に」


国勝が為時に紙を渡した。


立派な出来に為時は頷く。


「これが越前が誇る

紙すきの技か。

大いに励め」


民らは「はい」と返事をした。



出来上がった大量の紙が

館に集められている。


「これがあの紙なのですね。

まことに艶やかな…」


真新しい紙をまひろは

嬉しそうに手に取る。


「一枚頂いてもよろしいかしら」


「ならぬ」


為時が制した。


「一枚くらいよろしいのでは…」


まひろは抗議するが


「これは民人らが納めた

租税であるぞ。

全て都に送るのだ」


「分かりました」


「うむ」


「されど冬のつらい手仕事に

このように重い租税をかけるのか」


為時はそれが心配になる。


「ま…毎年同じ量にございます」


「そうか。もうよい、下がれ」


「はっ」


為時は改めて紙を確認する。


「ん?」


「何か?」


まひろが尋ねた。


「決められた租税よりも

納められた紙が多い…」


「ん?」


「越前では2000張を

納めることになっておるが

ここには2300ある」


まひろは少し考えたが


「父上、これまでの

国守様は決められた租税を

納めたあと、

残った紙を売ってもうけていたのでは

ないですか?」


閃いたとばかりまひろは言う。


「さすがまひろであるな」


「父上もお気づきだったので

ございますね?」


「わしは国守ぞ」


呆れたように返す為時。


「ご無礼いたしました」


「余分な紙は返してやることにする」


為時は無理をしているであろう

民が心配になっている。


「返すくらいでしたら

何枚か私に…」


大好きな紙のことゆえに

まひろは食い下がるのだが


「いやいや、だからそれは

ならぬと言っておるだろう。

その考えは宣孝殿に

吹き込まれたのか?」


と叱られてしまう。


「そのようなことは

ございませぬ」


「うむ…」


まひろは不服そうに

口を尖らせるのだった。



為時は民に紙を返そうとしたが


「紙はお返しいただかなくて

結構でございます」


と拒否されてしまった。


「ここの役人どもの顔色を

うかがっておるのか?」


「手前どもは今のままで

ようございます」


「受け取ったからといって

その方らが嫌がらせなぞを

受けぬように厳しく目を光らせるゆえ

案ずることはない」


為時は民の安全を約束してやる。


「お役人様に頼らねば

出来た紙はさばけず

都に運ぶこととて

かないませぬ。

余分な紙はそのお礼なので

ございます」


民はそれでも多く納めたい、

そうしなければならないと

思い込んでいるのだ…


「私は国守だ。

これ以上余計な搾取はならぬと

私が皆に言い聞かせる」


国守としては立派な態度…


だが、民は膝をついて


「恐れながら4年で

都にお帰りになる国守様には

お分かりにはなりますまい。

どうぞ…そのままにしておいて

くださいませ」


と懇願した。


為時は言葉を失うしかなかった。


これが、現実なのだ。


為時がいる間はそれでよくても

為時がいなくなったときに、

昔に戻るのでは意味がない。



まひろは宣孝の文を読みながら


「都に戻ってこい。

わしの妻になれ」


という言葉を思い出していた。


外に出てみると、

雪が積もっている。


月は雲に隠れて小さくしか

見えない。



道長も都で半分に欠けた

月を眺めていた。



月を見ていたまひろは、

帰ってきた為時に気づく。


「お帰りなさいませ」


為時は肩を落とし返事もない。


「いかがなさいましたの?」


「わしは世の中が見えておらぬ。

宣孝殿は清も濁も併せのむことが

できるゆえ、

太宰府でもうまくやって

おったのであろう」


あの宣孝の性格を思えば

無理やり民を苦しめたりも

しなかったはずだ。


きっと民も自分も潤うよう、

うまくやったいたのだろう。


不器用な為時はただ真っ直ぐ

正しいことだけを提示し、

それは民に跳ね除けられてしまった。


「お前もそんな宣孝殿に

心をとらえられたのか」


極端な為時に


「まだとらえられては

おりませぬ」


とまひろは答えた。


「まめに都から文を

よこしておるようではないか」


「こんなに筆まめな方だとは

知りませんでした」


「そこまでするのは

宣孝殿が本気だという

ことであろう」


為時はまひろを見た。


「都に帰って確かめてみよ。

ただこれだけは心しておけ。

宣孝殿には妻もおるし、

妾も何人もおる。

お前をいつくしむであろうが

ほかの女子もいつくしむであろう。

お前は潔癖ゆえそのことで

傷つかぬよう心構えはしておけよ」


父から見ればやはり、

心配なのだ。


「そのことも都で考えてみます」


「うむ」


為時は頷いた。



琵琶湖を渡り都へと

まひろを乗せた船が進む。


私は誰を思って、

都に帰るのだろう…。


宣孝に会う…?


それもあるが、

都には道長がいる。



その道長とて家庭に戻れば

一人の父だ。


「父上〜!」


幼い妍子が駆けてくる。


「おお…よし」


抱き上げる道長。


「父上、お帰りなさいませ」


長男の田鶴も嬉しそうだ。


「よし、順番だ。

ほい、来い。

よっ、よいしょ!ほい」


道長は田鶴も抱き上げてやる。


「重たいのう」


「せ君は軽いのう」


五男のせ君も抱きつく。


「ほい、来い。軽いのう」


「軽いのう」


田鶴が楽しそうに言う。


「軽いのう。ハハハハハ…」



まひろは久しぶりに、

都の我が家に戻った。


「姫様のお帰りにございます!」


と乙丸が声をかける。


「お帰りなさいませ」


いとが慌てて満面の笑みで

迎えに出た。


「ありがとう」


まひろの思わぬ早い帰りに

惟規が


「父上とけんかでもしたの?」


と聞いてくる。


「勉学は進んでいるかと

父上が心配なさっていたわよ」


まひろは痛いところをついた。


「離れていてもうるさいな」


「殿様はお健やかでございますか?」


いとが尋ねた。


「ええ。もう一人でも大事ないゆえ

都に帰ってよいぞと仰せになるので…」


まひろは奥に隠れるように

立っていた見知らぬ男に気づく。


「誰?」


男は頭を下げて出てきた。


「えっ?」


まひろは惟規を見る。


「いとのいい人」


「はっ!」


まひろは驚きのあまり

口を押さえた。


「帰ってこない方が

よかったかしら」


「そんなことはございません!

この人はほかに妻もおりますので

たま〜に、たま〜に、

来るだけにございますから」


「福丸にございます」


男は名乗ると人の良さそうな

笑顔を見せた。


そして、気を使ったのか


「今日はこれにて御免を被ります」


と帰ろうとする。


「あら…」


「別に帰らなくてもいいわ」


と、まひろは止めた。


「あっ、そうですか…」


あっさり福丸は戻る。


「姉上の荷物を運ぶのを

手伝ってやれ」


と惟規が命じる。


「へい!」


お荷物、お荷物…と、

いとと福丸はいきいきと

働いてくれている。


「いとは俺だけがいれば

いいかと思ってたけど

違ったんだな〜これが」


これまで乳母であり、

母代わりでもあったいとの

女性としての姿に、

惟規も感慨深そうに言う。


「今まで生きてきて

驚くこともいろいろあったけど

この驚きは上から3つ目

くらいかしら」


「いともいろいろ耐えてきたんだ。

許してやろうよ」


「許すも何も乙丸だって

女子を連れてきたのよ、

越前から」


惟規が驚いて乙丸を見る。


その乙丸はいつものような

気弱な感じではなく、


「こちらは殿様のお部屋ゆえ

むやみに立ち入ってはならぬぞ」


と堂々と女に説明していた。


その女…きぬは


「はい」


と、ニコニコと乙丸の

指示を聞いている。


「お疲れではありませんか?」


「お前の方こそ」


「私は体が丈夫ですから」


乙丸ときぬはとても

仲良さそうである。


「世話になった人には

幸せになってもらいたい」


まひろが彼らを見つめる。


「まことに帰ってまいったのだな」


聞き覚えのある声がした。


宣孝である。


「今、戻ったとこにございます」


「ご無沙汰しております」


惟規も挨拶するが、

宣孝は


「待ち遠しかったぞ」


とすぐにまひろの元に向かう。


まひろも満面の笑みだ。


何やらいつもとは違う

2人の様子に惟規は戸惑う。


「おお。酒を持ってまいった。

今宵はまひろの帰りを祝って

皆で飲もう!

ハハハハハハハ!」



「関の荒垣や守れども

はれ守れども

出でて我寝ぬや」


宣孝の唄を聴きながら、

いとは福丸と、

乙丸はきぬと楽しそうに

酒を飲んでいる。


宣孝は唄いながら

まひろに流し目を送る。


まひろは微笑む。


「出でて我」


ますますおかしな様子の2人に

惟規は混乱した…。



年が明けて長徳四(998)年。


安倍晴明が祝賀を述べている。


「新しき春を迎え帝の御代は

その栄とどまるところを知らずと

天地の動きにも読み取れまする。

まことめでたき限りにございます」


だが…道長は浮かぬ顔だ。



「下がっておれ」


「はっ」


道長は安倍晴明を伴うと

別室へ向かい他の者を

下がらせた。


「お人払いまでされて

何事でございますか?」


「仰々しく新年をことほいで

おったがまことのようには

思えなかった」


「見抜かれましたか」


「やはりそうか」


「これからしばらくは

凶事が続きましょう」


「凶事とは何だ?」


晴明は答えない。


「地震か、疫病か、火事か、

日食か、嵐か、はたまた大水か」


道長は思いつく限りの

災いを口にする。


「それら全てにございます」


道長はしばし言葉を失った。


「ならばそれらを防ぐための

邪気払いをしてくれ」


晴明は目をそらすと

庭を眺めながら言う。


「災いの根本を取り除かねば

何をやっても無駄にございます」


「根本?」


「帝をいさめ奉り国が傾く

ことを防げるお方は

左大臣様しかおられませぬ」


「私にどうせよと申すのだ」


「よいものをお持ちでは

ございませぬか」


晴明は振り向いて道長を見る。


「お宝をお使いなされませ」


「はっきりと言ってくれねば分からぬ」


「よ〜く…よ〜くお考えなされませ。

お邪魔いたしました」


結局、安倍晴明は

具体的には告げずに帰っていく。



ききょうが側に控える間、

昼間から帝は定子のもとに

入り浸っていた。


「内裏におった頃のように

皆が集まれる華やかな場を作ろう」


「もうかつてのようなことは

望みませぬ。

私と脩子のおそばに

お上がいてくださる。

それだけで十分にございます」


と、定子のほうが現実を

理解している。


が、帝は譲らない。


「朕はそなたを幸せにしたい。

華やいだそなたの顔が見たい。

これからでも遅くはない。

2人で失った時を取り戻そう」


定子は困惑する。


「うれしゅうございます。

されど…」


「伊周も戻ってきたのであろう。

顔が見たい」


その言葉に定子は警戒する。


「兄までがここに出入りすれば

内裏の者らに何を言われるか

分かりませぬ。

ここを追われれば私と脩子は

もう行く所がございませぬ」


伊周が出入りを始めれば

当然、公卿はもちろんのこと

せっかく今回の帝の望みを

叶えてくれた左大臣である

道長のことも刺激することに

なってしまうことを

定子は理解している。


が、帝は定子への愛に

あまりに盲目的だった。


「誰にも何も言わせぬ」


「されど…」


言いかけた定子を帝は

口づけで塞いだ。



「鴨川の堤の修繕について

勅命はまだ下りぬのか!」


珍しく道長は友でもある行成を

厳しい調子で叱責していた。


「帝は急ぐには及ばずと

仰せでございます」


「大水が出てからでは遅いのだ。

すぐ取りかからねば…」


左大臣とはいえ道長だけの

一存では大掛かりな工事は

出来ないのである。


「そのことも申し上げましたが

長雨の季節でもあるまいと

仰せになって…」


「かっ…」


道長は思わず毒づいた…。


「あれほど民のことを

お考えだった帝が…情けない。

一刻も早くお上のお許しを得よ」


「はっ」


行成も固い表情で戻っていく。


と、入れ替わりに


「叔父上、たまには

狩りにでも参りませぬか」


明るい声でやってきたのは

隆家だ。


「そのようないとまはない」


にべもなく断る道長だが、

隆家は人懐っこく引き下がらない。


「息抜きもなさらねば」


恨みは溜めない、と

自分で言っていたように

道長のことを隆家は、

ずいぶん慕うようになっている。


「そなたは職御曹司には

行かぬのか」


帝が定子を喜ばせるために

伊周や旧知の者たちを

集めたがっていることは

道長の耳にも入っている。


いかにも軽率そうな隆家だから

そちらになびきそうなものだが

意外にも隆家は、

真実をつくようなことを述べた。


「あそこはうつろな場でございます」


帝と定子が昔を懐かしがっている、

それだけの場所でしかないのだ。


「そもそ遊びよりも

私は政がしたいのでございます」


道長は驚いて隆家を見た。


「出雲は遠くて知らない者ばかり。

どうなることかと思いましたが

出雲守より土地の者たちと

深いつきあいができました。

こう見えて人心掌握に

たけておるようで」


自画自賛してしまうところは

まさに隆家らしいところだ。


「己を買いかぶり過ぎではないか?」


と、道長は呆れるも


「買いかぶりかどうか

お試しくださいませ。

必ず叔父上のお役に立ちまする」


これだけ真っ直ぐに

進言してくれる者も珍しい。


「気持ちは分かった。

今日は下がれ」


「はっ、また参ります」


隆家だけでもこちらに

本気でついてくれるなら

多少マシとは言えるが、

山積する問題に道長は

ため息をついた。



行成は政務を省みない

帝へ注進してもらおうと

その母である詮子のもとを

訪ねていたが…


詮子はあれ以来、

やはり体調が戻らずに

伏せっていた。


ただならぬ様子に


「お具合が悪いとお聞きして

おりましたがまさかここまで…」


道長にとっても、

抱える問題のひとつには

この姉の状態の重さもあるのだろう。


倫子が


「今、女院様から帝に

鴨川のことを進言されるのは

難しいかと…」


気の毒そうに告げた。



仕方なく行成は夜になると

職御曹司に籠もっている

帝を直接訪ねた。


ききょうが


「帝はお休みでございます」


と答えたが行成も

いつまでも引き下がるわけには

いかない。


「左大臣様から一刻の

猶予もないと仰せつかっております。

何とぞ帝にお目通り願いたく…」


行成は必死に頭を下げた。


すると帝がやってきたが

その声は明らかに怒気を

はらんでいる。


「この時分まで朕を追いかけ回す

ようなことをして

無礼であるぞ!」


「失礼つかまつりました」


結局、話すら聞いてもらえず

行成は帰るしかなかった…。



道長は固い表情でその

報告を聞く。


「引き続き帝にはお願い

申し上げます」


「うむ」


あからさまに怒りもしないが、

道長も不機嫌そうな様子だ。


行成は辛そうに戻っていった。



太宰府から戻った伊周は

帝から職御曹司の出入りを

許された。


伊周はききょうの書いた

枕草子を読んでいる。


「フッ…。

少納言が書いたつれづれ話は

実に趣深く機知に富んでいて面白い」


伊周に褒められききょうは

頭を下げた。


「まことにこれに

命をつないでもらったような

ものだわ」


定子はききょうを見て微笑む。


「恐れ多いことにございます」


「そうだ。これを書き写して

宮中に広めるのは

いかがであろう」


突然の伊周の提案に


「そんな…。

それは中宮様のためだけに

書いたものにございますれば」


と戸惑いを見せるききょう。


「これが評判になれば

ここに面白い女房がいると

皆も興味を持とう。

皆が集まればこの場も華やぐ。

さすれば中宮様の隆盛を

取り戻すことができる」


伊周はあくまでこれを

勢力の復興に使おうというのだ。


「早速、書写の手配をいたそう。

少納言、お前は次を書け」



実資は日記を書いていたが、

苛々を募らせていた。


「帝もはなはだ軽率である。

中宮は恥を知らぬのか!

非難すべし。

非難すべし、非難すべし…

非難すべし」


あまりに繰り返すせいか、

宋から貰い受けていた

オウムが


「スベシ」


と真似をした。



街が雷雨に襲われている。


道長はたまらず庭を眺める。


「鴨川の堤が大きく崩れまして

ございます!」


恒方が道長がもっとも

恐れていたことを報告に来た。



晴明の予言どおり

次々と禍が都を襲い始めた。



道綱がいつものように

菓子を食べている中、

公卿たちは話し合いをしている。


平惟仲が


「中宮様が職御曹司に

入られてから悪いことばかりです」


と不安を口にした。


公季は我慢できぬ、

とばかりに


「左大臣が帝にきちんと

意見を申されぬゆえ

帝はやりたい放題なされておる」


道長への不満も溜まっていた。


「右大臣様」


「ん?」


右大臣の顕光が顔を向ける。


「右大臣様からきちんと

申し上げてください」


惟仲が


「左大臣様の兄上が

おられますことお忘れなく」


と、道綱のことを気にする。


「私、お邪魔かな」


道綱はのんびりと尋ねた。


「ん〜。

分かった。わしに任せよ」


顕光は受け負った。


「きつく言ってやろう、左大臣に」



「もう一度普請を乞う旨の

文を作れ」


「はっ」


道長は険しい顔で政務に

あたっている。


「右大臣様がお見えにございます」


顕光が


「左大臣殿!」


と呼びかける。


「はっ」


勇んで来たはずが、

道長を見ると顕光は

急に勢いを失う。


「今日はよい日でございますな」


激しい雨音が響いている。


「雨ですが」


「あれ?いつから…」


「朝からです。

鴨川が再び水かさを

増すとやっかいです」


「全く全くやっかいなこと

ばかりで左大臣殿も

ご苦労なことですな」


「あっ、何か御用で

ございますか?」 


「ん?ああ…いや、

お忙しかろうと思って

励ましに参っただけで」


「は?」


「邪魔をいたした」


顕光は逃げるように去った。


道長は空を睨む。


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民のために〜、

と言いつつ目の前の紙に

目が眩んでしまうまひろ…


これは文章ヲタだけに

致し方ないところか…。


さらにはそれを咎める

為時のほうが正しいような

気はするのであるが、

民にしてみたら


「余分に受け取ってほしい」


のだというから、

これが政治の難しいところ

なのだろう。


為時は為政者とは、

善良な政治とは、

ということを学問として

しっかり学んでいる。


だからこそ自分が

目を光らせておくから

その間は大丈夫なのだ、と

民をいたわっている。


ところが、である…


為時の任期は4年。


その間は良い。


が、次に来る国守が

為時のような人だとは

限らないのだ。


それどころか宣孝なども

太宰府でずいぶん儲けた、と

話していたように

べつに国守が無理に民を

苦しめるような搾取はせずとも

国守が懐をあたためることが

できるように、

民のほうが忖度することが

もはや当たり前になって

いたのだろう。


考えてみれば源光雅とて、

為時に金を渡そうとしたのは

べつにそれで何かおかしな

便宜を図れなどと求めたのでなく

それが慣例だったから、に

過ぎなかったはずだ。


為時から


「わしを愚弄しているのか」


と怒られたとき光雅は

困惑していた。


普段ならば国守も役人も、

そして民ですらも

そうすることによって

利益を享受していたのだ。


為時は理想は分かっていても、

現実が見えていなかった…


こればかりは前回まひろが

私には何も見えてなかった、

と感じたのとも似ている。


2人ともに学あるけれど

世の中の難しさを

完全に理解しているわけでは

ないのだ。


とはいえ為時は間違っていたか?


べつにそんなことはないだろう。


以前にも内裏には、

不当に搾取する国守を

交代してくれという

民からの陳情は上がっていた。


明らかに過剰な搾取をする

ひどい国守というのは

たくさんいたのだろうし、

そういう間違った政治が

行われている国において、

為時のように理想を

志す者がいることは、

決して間違ってはいない。


間違ってはいないけれど、

それだけでは世は動かない、

これが難しさだ。



それに関しては道長も

同じような状況を抱えている。


帝のしていることは

間違っている、

といくら道長が思ったところで

では帝をずっと定子と

引き離しておくことが、

本当に正しいのかは

難しいところだろう。


だからこそ詮子ですら

定子と再び結ばれることを

許してやっていた。


が、帝の定子への愛は

あまりに深すぎるあまりに

盲目的になりすぎている。


伊周の追放などは、

そこまで乗り気ではなかった

道長よりも帝のほうが

怒りに任せて行っていたのだが…


そんな後ろめたさもあるせいか

ますます定子や伊周に対して

帝は甘くなってしまう。



面白かったのはあの隆家が、

そうした職御曹司の状況を


「うつろな場」


と表現したことだ。


うつろ、とは中身は空っぽ、

ということである。


定子が以前のように美しく着飾り、

伊周がかつてのように

雅に振る舞ったところで

しょせん、あそこは内裏ではない。


政治は職御曹司では行われない。


自分は政治がしたいのだ、と。


隆家なりの道長への

追従の気持ちもあるのだろうが

裏表があまりない人物なだけに

帝や伊周が夢見ているのは

あくまでかつての華やかな時代、

うつろな世界なのだ、と

はっきりと述べている。


隆家はこの先、

道長にとって大きな力に

なっていってくれるのだが、

院に矢を射る度胸だけでなく

こうした物事の本質を見抜く力を

持ち合わせた人物、

というのは心強いだろう。



それにしても、

道長は珍しくかなり

イライラしていて、

あの友であった行成ですらも

道長を恐れている様子だし、

右大臣の顕光などは、

道長を前にすると

意見など出来なくなって

しまっている。


かと言って道長は

独裁をしているわけではなく

あくまで帝の勅命がなければ

動けない…ということを尊重し

筋道を通したがって

いるだけなのだが。



ただし、これは為時と同じで

その理想を追いかけるがゆえに

道長が手をこまねいてしまったことが

民に犠牲を生む結果へと

つながってしまう。


正直、道長も行成もなんとか

努力はしていたと思うし

定子のもとに入り浸って

政務を省みない帝にこそ

問題があるのだが。



もちろん、

こうした一条天皇の描かれ方が、

そのまま事実、史実、

というわけでもないだろう。


一部に


「道長を善人にするために

周りの人を悪く描きすぎ」


という批判があることもわかる。



とはいえ、このときの帝は

17歳とか18歳あたりなのだ。


あくまでドラマの話ならば

帝が定子に傾倒するのは、

そもそも母親である

詮子から厳しく躾けられ

すぎてしまった影響もある。


定子は年上の妻であり、

幼い頃は姉のように支えて

くれていた女性なのだ。


帝がそこに母性のようなものを

求めてしまうことは、

仕方ないような気もする。


母から与えてもらえなかったものを、

母になってより母性を増した

定子にこそ求めてしまう…


そう考えれば帝の変化も

理解できる面はある。


だからこそ職御曹司に入り浸り、

定子に依存していってしまい、

定子に喜んでほしいからと

伊周まで呼び戻して、

かつての華やかな中関白家が

仕切っていた内裏を、

再現しようとする。


とはいえ隆家が述べたように、

それはあくまでも

現実を直視できていない

うつろな、空っぽの空間の

ようなものであり、

それは内裏の代わりには

なり得ないのだ。



道長とてそのことは

よく分かっているのだろうが

かねてから帝の気持ち、

そのものには理解も示しては

いるのだから、

積極的に諌めづらい、

という立場なのだろう。


それゆえに行成に対しても

きつく当たってしまっている。


道長も人間なので、

優しいばかりではいられない。


安倍晴明が言っていたように、

道長とて何かを差し出す時がくる、

ずっと綺麗ではいられない、

ということだ…。