光る君へ第20回あらすじ&感想前編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第20話「望みの先に」前編



長徳二(996)年。


隆家の放った矢は、

花山院のすぐ横を通り抜け

柱に突き刺さった。


「院!いかがされました!」


斉信が慌てて駆け寄る。


「矢が…矢が!」


「お気を確かに、院!」


「院…?」


隆家は不思議そうに

彼らを見る。


「院が射られあそばされた。

くせ者を逃がしてはならぬ!」


斉信が命じると

花山院の従者たちが

刀を抜き色めき立つ。


花山院は女通いしていた立場もあり

大事にしたくなかったのか


「や…やめろ!静かにいたせ。

朕は大事ない」


と止めたが皆、

止まりそうもない。


「引け!」


慌てて伊周も踵を返すが


「待て」


という声が夜の路地に響く。


院の従者達と、

伊周、隆家の従者らとが

切り合いを始めた…


「ああ…」


「お体に大事はございますまいか」


「早く行け。

私はここに来ておらぬぞ」


花山院は出家の身になりながら

女通いをしていたことが

露見するのがまずく、

それが気になっている。


そこに斬られた死体が転がる。


「ああ…」


当時、遺体には穢れがある、

とされている。


花山院と斉信は震えた。



伊周と隆家は急いで

馬を飛ばして帰ったが

とくに伊周は

気が気ではない。


母の貴子が


「まだ誰が射たか分かっていないの

でしょう?」


と安心させようとするが…


「院の従者もおりましたゆえ

顔は見られています」


当の隆家はあっさりとそう言う。


「だとしても牛車に当たった

だけならば大したおとがめには

ならないわ」


「行かねばよかった…」


伊周は激しく後悔するが


「今更、言うな」


他人事のように隆家は

気にしていない。


「今度こそ中宮様を頼りましょう」


貴子の言葉に伊周は


「中宮様は頼りになりませぬ!

私を関白にすることさえ

できなかった!」


と叫ぶ。


隆家は呆れるように見つめた。


貴子は


「あの時は女院様がいらした

からですよ。

帝とて中宮様の身内を

裁いたりはなさるまい。

さあ、安心して今日は休みなさい」


明るく声をかけるしか出来ない。



斉信はこの騒ぎを報告すべく

道長を呼び出した。


「いかがいたした」


一大事が起きているとは

知らない道長はいつもと

変わらぬ様子で斉信に尋ねる。


「先ほど一条第で院が

何者かに射かけられた」


「い…院が射られたのか?」


事の重さに道長も愕然とする。


「そうだ」


「なぜそこに院がおられたのだ」


「院は我が妹、儼子のもとに

お通いだった。

そのお帰りの時に」


「お命は?」


「ご無事だ。おけがもない」


道長は息をつく。


「ただ、院の従者が乱闘で

2人死んだ」


「死人まで出たのか!」


「捕らえた者は二条第の

武者であった。

武者たちを置いて馬で

走り去った者は2人。

一人は伊周、もう一人は

隆家やも」


扇を叩きながら、

少し楽しそうに斉信は

推測する。


「その2人が院のお命を

狙ったのか?」


「だとしたら伊周と隆家は

終わりだな」


道長の甥とはいえ、

彼らは政敵である。


斉信は良かったじゃないか、

と言わんばかりに道長を見た。


「うれしそうに申すな」


「フフフフフフ…」


斉信は笑いを堪えきれない。



昨夜の騒ぎに内裏も

混乱を極めている。


朝早くから実資は

一条天皇に事件を報告していた。


「死人も出ておりますので

まことならば疑わしき者は

ただちに捕縛し、

取り調べるが常道に

ございますが、

何分にも中宮様のお身内ゆえ

帝のご裁可を仰ぎ奉りたく

奏上いたした次第にございます」


「官人の綱紀粛正、

高貴な者の従者たちの

乱暴を禁ずる旨、

厳命したばかりだというのに

こともあろうに院に矢を放ち

死者まで出すとは許し難し」


帝の声は珍しく怒りに

震えていた。


身内の不祥事に

定子はそんな帝を

見守るしかない。


「何故、そのようなことが

起きたのだ?」


「内大臣、藤原伊周殿は

一条第の光子姫のもとに

通っており、

院もその姫に懸想されたと

勘違いされたと思われます」


「勘違いとは?」


「院は光子姫ではなく

儼子姫のもとにお通いでしたので」


傍らで聴いていた、

ききょうも顔を上げた。


「そのようなことで

院のお命を危うくし更に

2人の命が失われたのか」


皆、黙るしかない。


「右大臣、伊周と隆家の

参内まかりならず。

当面、謹慎させよ」


帝はすぐに命を下した。


「はっ」


「これより除目ゆえ

後ほど沙汰する。

検非違使別当は

詳しい調べがつけば

逐一、朕に注進せよ」


「はっ」


帝はその場を後にする。


そして、立ち止まると

定子を振り返り


「中宮は身内の者に一切

会うべからず」


と厳しく告げた。


ききょうは心配そうに

定子を見る。


定子は言葉を発することも

できなかった。



斉信のもとを伊周、隆家、

そして貴子が訪れている。


いくら伊周、隆家の官位が

高かろうともこうなれば、

蔵人頭である斉信に

逆らうことはできない。


「この度の騒動に関わり

畏れ多くも帝を悩ませ奉ったことは

不届きの極み。

よって2人には謹慎を申しつける」


斉信からの厳しい通達に

3人は黙るしかなかった。



内裏では除目が行われていた。


実資が申文を読み上げている。


「心からお願い申し上げます。

茂国、恐れかしこまって

謹んで申し上げます」


「うむ」


帝が認め頷く。


実資はあらたな文を開く。


「正六位上散位藤原朝臣為時、

恐れかしこまり謹んで申し上げます」


道長は横目でちらっと

実資を見ながら聴いている。


「特に天皇のご恩を被って

先例に準じて淡路守に

任じられることを請います」


「うむ」


帝は頷く。


「淡路国守従五位下

藤原朝臣為時」


行成が正式な決定を告げた。



惟規が父の任官を

祝しに帰っている。


「国司にご任官されましたこと

まことにおめでとう存じます」


「おめでとうございます」


まひろも頭を下げた。


為時はまだ驚きが隠せずにいる。


「国司の任期は4年。

無事に勤め上げたいものだ」


「姉上も行くんでしょ」


惟規が楽しそうにまひろに聞く。


まひろが行かぬわけはない。


「もちろんよ。

知らない国を見てみたいもの」


「淡路は下国だけど

魚はおいしいし、

冬は暖かそうだし

俺も行きたいくらいだよ」


「お前は都で式部省試に

受かるのが先だ」


「分かってますよ」


そんなやりとりに

まひろの顔がほころぶ。


為時は立ち上がった。


「10年こらえてこれが

最後と思って申文を出したが

神仏のご加護に相違ない」


そう言いながらも、

為時はまひろを見た。


仏像に手を合わせる為時。


そんな父を見て、

惟規はまひろに微笑んだ。



道長と詮子のもとには

一人の男が礼を述べに

訪れている。


「この源国盛、

この度は大望かない

大国、越前守に任じられる

ことができました。

これもお引き立てのたまもの。

深く御礼申し上げます」


姉に向かって礼を述べる

源国盛なるこの男を、

道長は知らない。


「除目の前にこの人を

入れてね、とお前に言ったら

駄目だと言ったの覚えている?

それで帝にお願いしたの」


ああ…なるほど、と


「さようでございますか」


道長は軽く流した。


「国盛、その方の申文

帝が感心しておられたぞ」


道長は褒めてやったが


「あ…あれは文章博士に

代筆してもらった申文に

ございまして実は私は

漢文が苦手にございます」


「漢文が苦手…」


道長にはそこが引っかかった。


「いや、なんとも面目ないことで…」


「今、越前は交易を望む

宋人が大勢来てやっかいなことに

なっておる。

漢語が得意な者を、

ということで帝はそなたを

選ばれたはずだが」


国盛は困った顔になる。


「そのような不心得では

務まらぬぞ」


道長は呆れた。


「いや〜、まことに困りましたな…

誰かいい通事はいませんかね、

右大臣様、ハハハハハ…」


道長は冷たい顔で見る…


詮子はポカンと見つめるしかない…。



「あんなにうつけと

思わなかったのよ」


そう、詮子は言い訳した。


「あの人の母親は聡明な人

なんだけど」


「あれでは越前守は務まりませんな。

宋人の扱いを間違えれば

国同士のいさかいとなりかねない」


「そうねえ…」


「そうね、…」


「怒ってる?あっ、怒ってる!

許して」


甘えたように言う姉に


「なんとかいたします」


とだけ答えて道長は

去ろうとした。


「ねえ、伊周たちの処分は

まだ決まらないの?」


「除目のあとで処分を決めると

帝は仰せになりましたが

伊周は大した罪にならないと

思います」


「なぜ!?」


抗議の声をあげる詮子。


「帝は中宮様のお身内に

厳しいことはできないかと」


「まあ、情けない!

お前はそれでよいと思うの?」


優しい道長は、

帝と同じ思いである。


「ただただ厳しく罰すれば

よいとは思いませぬ」


「え?」


「お情けをもって

事に当たられる帝こそ

私は尊いと感じます」


「分からないわ。

だって伊周や中宮は

お前の敵でしょう」


「敵であろうとも…です。

失礼いたします」


詮子は一人、考えこんだ…



酔いつぶれた為時が

寝てしまっている。


宣孝は


「ホッとしたのであろうな」


と着物をかけてやった。


「お前が父上に優しくなって

よかった」


かつて、母が道兼に殺されたとき

まひろは何も出来ない父を恨み、

距離を置いたものだ。


「学問一筋のいちずな男だ。

官職を取り上げた兼家様のことも

恨まず淡々と生きてきた。

淡路国が肌に合うとよいがな」


「父は立派な人ですから

きっと立派に務めましょう」


まひろは宣孝に酒をつぐ。


「フフ…真面目なだけでもないぞ」


宣孝は笑った。


「え?」


「遠い昔、大学に通っておった頃

為時殿はひとつきほど

行方知れずになった。

大騒ぎとなったが、

行く先はようとして

知れなかった」


「一体、どこに」


「ある日、ボロボロになって

戻ってまいった。

本人いわく宋の国に行こうと

船に潜り込んだが、

船頭に身ぐるみ剥がされ

海に捨てられたのだそうだ」


「えっ!」


「運よく別の船が拾ってくれて

戻ってきたのだと」


「そのような話、

初めて聞きました」


「人には意外な面が

あるものだ。

そういう型破りなところは

お前が引き継いでおるではないか」


「型破り…」


「船に乗って宋にでも

渡りそうな危うさがある」


当然、とばかりにまひろは言う。


「宋の国には行ってみとう

ございます」


「…であろう?

いや、危ない、危ない」


2人はわらった。



「越前守はどなたになったので

ございますか?」


「源国盛殿だったと思うが

まだ若く心もとない」


「身分が低くて望むべくも

ありませんが、

もし父が越前守であったなら

宋の言葉も解しますし

お役に立つはずですのに…」


「そうだな…

帝が為時殿の学識の高さを

ご存じであればよかったのだが…」


「次の除目のために

父のことをなんとか

お伝え申し上げたいものです」


宣孝はそんなまひろを見た。



帰り際


「まだ機会はあるやもしれぬ」


と、伸孝はぼそりと言った。


「除目のあとに任地が変更されることも

たまにはある」



伸孝の言を受けて、

まひろは筆を取っていた。



行成が道長のもとに

たくさんの文を持ってきた。


「申文にございます」


「多いな…」


あまりの量につい道長は

そうこぼしてしまう。


「お許しいただければ私が読んで

重要なものだけお伝えいたしますが」


「いや、いい」


苦手なことから逃げてはならぬ、

とばかりに道長は意気込んだ。


そんな道長にほほえみながら


「ご無礼つかまつりました」


と頭を下げる。


「うん」


道長は文を開くと、


「う〜ん…」


と苦しそうに読み始めた…。



すでに夕刻となっているが、

まだ道長は文を読み進めていた。


「うん。

はあ…」


疲れたように次の文を開く。


「ん?」


「苦学の寒夜、紅涙、袖を霑し

除目の春朝、蒼天、眼に存り」


見事な漢詩だが…


書いたのは「為時」…。



急いで帰宅した道長は

文箱の中から、

かつてまひろにもらった

漢詩が書かれた文を取り出し

為時の文と照らし合わせる。


この字の書き方は…まひろ。


まひろが為時に成り代わり、

これを書いてよこしたのだ、

道長は気付いた。



そんな道長の様子を

伺いつつ


「殿」


と倫子は声をかけた。


さすがにまひろからの文は

気まずく道長は慌てて

文をしまいこみ


「何だ」


と返事をした。


「女院様が昼ごろから

気分が悪いと仰せになって

ふせっておられます」


「なんと…」


道長は文をしまうと、

急いで姉のもとに向かった。



詮子は静かに寝ていた。


「いかがされました?」


「道長には伝えるな、と

言うたではないか」


「お許しくださいませ。

女院様が心配で、つい…」


「もう、ようなった」


詮子は身を起こす。


「つまらぬのう…」


詮子はそうため息をつく。


「やっと我が世の春が来たと思うたら

体が利かぬ」


「何を弱気な。

姉上はまだまだお若く

お美しくあられます」


「心配かけてすまなんだ。

倫子はよくできた妻だが

いささか口が軽いのう」


心配してもらって

嬉しくないわけはないが

すぐに道長を呼んできた倫子に

詮子は毒づく。


「申し訳もございませぬ」


「お許しくださいませ」


倫子は頭を下げながら

詮子の表情を伺っていた。



道長は為時からの文…


正確にはまひろの文を

帝に直接、届けてやっていた。


「学問に励んだ寒い夜は

血の涙が袖を濡らした。

除目の翌朝、無念さに

天を仰ぐ私の眼には

ただ蒼い空が映っているだけ」


帝は例の漢詩を読む。


学のある帝はすぐに気づいた。


「蒼天は天子を指す

言葉でもある」


除目の内容に不満がある、

それも失礼な文なのだが

要は帝は自分のことを

わかってくれていない、

という嘆きの内容だ。


「朕のことか」


やや、苛立たしげに

帝は尋ねた。


しかし、不思議なのは…


道長がこうした内容のものを

確認したうえでわざわざ

帝に読ませたことである。


「右大臣、なぜこれを」


「恐れながら為時は

漢籍にも詳しく宋の言葉を

解するようです。

正直、源国盛に越前を

任せるのはいささか心もとなく…」


道長は帝の様子を

御簾の向こうから伺う。


行成もそっと帝のほうを見た。


判断するのは、帝だ。



夕方になり陽が落ちようとする中、

あらためて内裏からの使いが

為時のもとを訪ねてきた。


「いまだこの身が信じられませぬが

越前守を謹んでお受けつかまつり

一心に務めに励む所存にございます」


さらなる出世である。


断るべくもない。


為時は感謝を述べた。



朝廷の使いは帰っていく。


「おめでとうございます。

惟規にも使いを出します」


しかしさすがに為時にも

いくらなんでも、

このまでの突然の出世は

神仏の加護、などでは

片付けられぬ人為的な

ものがあることはわかる。


「まひろ、そこに座れ」


「何でございましょう」


「淡路守でももったいない

お沙汰であったのに

何もしないうちになぜか

突然、越前守に国替えされた。

これはどういうことじゃ」


「博学である父上のことが

帝のお耳に入ったのだと

思います」


だからこそ、おかしいのだ。


「誰が帝に伝えてくださったのだ」


まひろは答えにつまる。


為時はもう確信していた。


自分をここまで引き立てて、

帝の目に留まるように

してくれた人物…


「右大臣、道長様であろう。

従五位下の叙爵も

淡路守の任官も、

越前守への国替えも

全て道長様のお計らいだ」


しかし…その道長は

これまで為時とは

親しい間柄ではなかった。


道長は公正な人柄であり

よほどでなければ、

さして面識もない自分を

ここまで高い地位へと

推挙するだろうか?


だからこそ


「そしてそれは道長様の

お前への思いとしか

考えられぬ」


まひろは…否定できなかった。


「父はもうお前の生き方を

とやかくは申さぬ。

道長様とお前のことは

わしのような堅物には

計り知れぬことなのであろう。

そこに踏み込むこともせぬ。

ただ…何も知らずに越前に

赴くことはできぬ」


真面目な為時だからこそ、

悩んでいるのだ。


ここまでの好意を受けていいのか?


あの疫病のときに感じたように

娘と道長と恋仲であるとしても、

とはいえ普段から会っているような

様子もほとんどない。


それに道長ほどの立場である。


そこまで娘のことを

特別に見てくれているなら

妾にしたい、と申し出てくれても

おかしなことではないし

それを拒む親もいないだろう。


だが、そんな恋人同士のようにも

為時には感じられないのだ。


困惑するのは当然である。


「まことのことを聞かせてくれぬか」


まひろは重い口を開いた。


「道長様は…私がかつて

恋い焦がれた殿御にございました」


為時は驚きつつも

黙って娘の話に耳を傾ける。


「都にいては身分を超えられない。

2人で遠くの国に逃げていこうと

語り合ったこともございました。

されど、全て遠い昔に終わったことに

ございます。

越前は父上のお力を生かす

最高の国。

胸を張って赴かれませ。

私もお供いたします」


為時は強く頷くのだった。


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為時の出世には、

まひろの尽力と道長からの

特別扱いがあった…


としたのは、

ドラマの道長の清廉潔白な

イメージからはちょっと

ズレてしまうにせよ…


幸いなのはその為時には

ちゃんと学識もあり、

おまけに本来、

越前に行く予定だった

源国盛さんがちょっと、

いや、だいぶアレな方で

あったので。


とはいえこのあたりは

ドラマなりのアレンジなので

通説として伝わっているのは

為時が不遇を嘆く漢詩を送ったところ

それを読んだ帝が感動して、

国替えを命じた…


ただし、そのショックで

国盛は病気になってしまい

程なくして没した、

とされているので…


そこを重々しく描くと、

まひろや為時のほうが

悪人のように見えてしまう。


こうしてまひろなりに

父を思って行動をした、

国盛自身があまり能力がなく

道長から見た時に

頼りない人であった、

と描いたのはドラマなので

それでいいと思う。


それにしても…


為時はいきなり正六位から

従五位に任官されたわけだが…


これ、実はものすごい出世らしい。


最近、フォローしてくれた方が

詳しくこちらで述べているのだが



これまでの為時の給料は

年収90万(マジかw)…


ところがこれが一気に

500万クラスに跳ね上がる。


まぁ、500万もさほど

高いわけではないにせよ

これまでバイトみたいな

お金しかなかったのが、

人並みの暮らしができる

立場になった、ということ。


もっとも当時は給金ではなく

現物支給だったようだが、

少なくとも自給自足のようなことは

しなくてもなんとか

やっていけるようになった、

ということになる。


おまけに上国の国司は

40万入るのでこれまでの

暮らしとはいきなり

違う立場になったわけで。


ドラマの中でも


何があった!?


道長様とお前はどんな

関係なんだ?


と為時も混乱していたが

そりゃそうだろう。


為時は初めてまひろと

道長の関係性を知ったわけだが

表情の演技がすごく素敵だった。


なぜなら父として、

娘が心配なのは当然として

男としても道長が、

まひろを気にかけてくれる

優しい人だとはあの

疫病のときの様子からも

わかっている。


そのうえで2人が

身分の壁に苦しんだで

あろうことも理解したろうし

そういう関係性の中で、

その道長の兄である

道兼が母の仇であることに

まひろがどれほど辛かったか。


為時はこの瞬間に

全てを理解したのだ。


だからこそこうした

娘や道長の好意を

無にしてはならない。


プライドの高い父親なら

こんなことで娘や、

その愛する男のちからを

借りるなんて!と

怒るかもしれないが、

そんな無粋なことは

為時はしなかった。


立派、の一言である。



さて、花山院だが…


せっかくの再登場なのに

一部で


「笑いを取った」


とされていたが、

いやいや、ロバート秋山的な

枠じゃないし、とw


これ、花山院が愛したのは

あの忯子様の妹の、

儼子様なんだよね…


つまり花山院はずっと

忯子様の面影を追い求めていた、

ということでもあるし、

儼子様は儼子様で、

いくら前の帝でも

出家している人はいやよ、

とつれない態度だった、と

いう話もある。


花山院は健気にも

口説き落とそうと、

通っていた最中の出来事…


(なお、この儼子様は後に

道長の妾となった、という話も)


ちなみにドラマでは、

完全に伊周と隆家の勘違い、

少なくとも院とは知らなかった

と描かれているけれど

「栄花物語」だと


「花山院が儼子に歌や文を

送っていることは知っていたが

伊周は言い寄られているのが

美人で評判の光子だと思い込んだ、

そして隆家に相談した」


ということらしい。


それはそれで確信犯すぎて

どうしようもないのだが…


隆家は実は数年前にも

花山院の邸宅前を

牛車で通り抜けられるか?

というバカバカしい勝負を

挑んでいたという話もあり、

院のことをあまり良く思って

いなかった可能性もある。


とはいえ隆家は、

長徳の変の頃も17〜18歳。


血気盛んではありながらも

今なら少年ともいえる年齢で

怖いものなしの、

ヤンキーみたいなもんであり…


ここは年上の伊周のほうが

迂闊な行動を諌めるべきなのに

それが出来なかったのだから

責められるのはやむを得ないことだ…


さらにいうなら、

とんでもないことになったと

後悔している伊周に比べ、

顔も見られてるから

どうしようもないよ!と

開き直ってる隆家のほうが

男としては度胸があるようには

思える。


この隆家、後に本当に

武力を活かして活躍するので

日本には必要な人材となるが

この時点ではまだまだ少年…


幼い頃から道隆の子供として

周囲からも持ち上げられ、

なまじ武芸も得意では

あったのだろうから

調子に乗ってしまって

いたのだろう。


つくづく…兄である伊周が

もう少ししっかりと手綱を

握ってやっていれば…と、

思わないでもない。


伊周は伊周で、

大変な立場だったのだろうとは

思うわけだが。


この事件は彼らが思うより

大きいものになってしまうのだった。