光る君へ第19回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

NobunagAのブログ

家庭菜園、ゲーム、アイドルなど趣味の話題や、子育て、介護関係のことをつらつらと書いています。

光る君へ

第19話「放たれた矢」後編



定子との「重い使命」を終えた

一条天皇はあらためて、

ききょうとまひろの前に座った。


「お上、この者は少納言の

友にございます」


「正六位上前式部丞蔵人

藤原為時の娘にございます」


名乗るまひろ。


「女子ながら政に考えが

あるそうにございますよ」


定子の言葉に帝は興味を持った。


「朕の政に申したきことがあれば

申してみよ」


さすがにまひろもこれには

恐縮する。


「私ごときお上のお考えに対し奉り

何の申し上げることがありましょうや」


そんな畏まるまひろに

帝は笑った。


「フフ…ここは表ではない。

思うたままを申してみよ」


公の場ならともかく

こうして定子から

清少納言の友を

紹介されたというだけ。


プライベートな場なのだ。


失礼なことがあれば、

聞かなかったことにして

あげればいいだけである、

とばかりに帝はまひろの

緊張を察して

優しい声をかけてやった。


まひろは遠慮がちに

話し始めた。


「恐れながら私には

夢がございます」


「夢…」


帝は興味深そうに聞く。


「宋の国には科挙という

制度があり、

低い身分の者でも

その試験に受かれば

官職を得ることができ

政に加われると聞きました」


ききょうも隣でまひろの

言葉に聴き入っている。


「全ての人が身分の壁を

越せる機会がある国は

すばらしいと存じます。

我が国もそのような仕組みが

整えばといつも夢みておりました」


定子は帝のほうを見た。


帝は身を乗り出すように


「その方は新楽府を読んだのか?」


とまひろに尋ねる。


「高者、未だ必ずしも賢ならず、

下者、未だ必ずしも愚ならず」


帝はその理想に共鳴したように

笑顔を見せる。


「身分の高い低いでは

賢者か愚者かははかれぬな」


「はい。下々が望みを

高く持って学べば

世の中は活気づき国もまた

活気づきましょう。

高貴な方々も政を

あだおろそかには

なされなくなりましょう」


これではまるで、

今の政がうまくいっていない、

と言われているようなものだ…


帝は苦笑いした。


「言葉が過ぎる」


定子もまひろの大胆すぎる

言い方に驚き注意する。


「はっ。お許しを」


「そなたの夢、覚えておこう」


帝はどこか嬉しそうだ。


「恐れ多いことにございます」


そこへ


「伊周様、隆家様、

お目通りにございます」


と声がかかった。


ききょうとまひろは慌てて下がる。


伊周と隆家が、

帝と定子の前に座った。


「仲良くやっておられるか

拝見しに参りました。

中宮様には皇子をお産み

いただかねばなりませぬゆえ」


どこか嫌みっぽく伊周が言う。


帝は気にせずに


「その方らも参内するように

なったのだな。安堵した」


と声を掛ける。


「ご心配をおかけしたこと

おわび申し上げます」


さすがに伊周と隆家も頭を下げる。


「ところでこの女は

見慣れぬ顔でございますな」


伊周はまひろに気づくと

咎めるように尋ねた。


「私の友にございます」


ききょうがそう伝える。


余計なとばっちりが

まひろに向かぬように


「今、下がるところに

ございました」


と述べた。


「本日は図らずも

帝のおそばに侍することが

かないまして一代の誉れに

ございました」


2人は去っていく。


定子と帝は名残惜しそうに見ていたが

伊周らはやはり気に入らず

隆家が遠慮なく


「あのような者をお近づけに

ならない方がよろしゅうございます」


と意見する。


「面白い女子であった」


帝はまひろを庇ったが


「お上、どうせお召しになるなら

女御になれるくらいの女子に

なさいませ」


妹の定子の前で、

そんな冷たいことを言う伊周。


「そうでなければ中宮様に

皇子をお授けくださいませ」


「伊周はそれしか申さぬのだな」


身分を超えた政治を…と、

せっかく夢のある話をしていたのに

帝はがっかりせざるを得ない。


「もうよい。今日は疲れた。

下がれ」


帝は短く命じた。


「は」


兄らが去ると定子は

帝を見つめるが、

帝はただつまらなそうに

黙り込んだ。



「父上、正月の除目の申文

ですけれど越前守を

お望みになったら

よろしいのではないでしょうか」


突然のまひろの提案に


「は?」


と為時は振り返る。


「越前には宋人が

大勢、来ております。

父上なら宋の国の言葉も

お話しになれますし、

ほかの誰よりお国のために

役に立ちまする」


あまりの大風呂敷に


「途方もないことを申すな」


と、為時は相手にしない。


「大国の国司は五位で

なければならぬ。

私は正六位だ」


「望みは大胆であるほど

お上の目にも留まりましょう」


実際に帝を見てきたまひろは

その聡明さを知っているし、

優しい帝だと理解している。


万が一、帝の目に入れば

登用してもらえるのでは?と

考えるのも無理もない。


が、為時は


「乱心しおったと

思われるだけじゃ」


と呆れた。


「もう10年も父上のお望みは

かなえられておりませぬ。

ここはいっそ、千尋の谷に

飛び込むおつもりで

大胆不敵な望みを

お書きなさいませ。

のるかそるか、

身分の壁を乗り越えるので

ございます」


なぜか自信満々のまひろに

為時はタジタジである。


「恐ろしいことを申すな」


「何かせねば何も変わりません」


「国司を望むならせいぜい

淡路守くらいであろうな。

それでも正六位のわしにとっては

出過ぎた願い。

お前、宮中に参ったら何やら

おかしくなったのう」

 

これまで出仕しろとも、

出世しろとも、言わなかった

まひろの変化に為時も戸惑う。



一条殿。


その夜、伊周は斉信の妹

光子のもとへ忍んでいた。


「中宮様の気持ちが分からぬ。

そなたはどう思う?」


伊周は光子に尋ねた。


「入内したことのない者に

中宮様のお気持ちは分かりません」


姉の忯子はあの花山天皇に

可愛がられていたものだが、

早くに世を去ってしまってもいる。


伊周は笑いながら


「あ〜あ…そなたとおる時以外は

つまらぬことばかりだ」


嘆息する。


「光子」


「ああ…」


2人は抱き合った。



帝は道長を呼び出すと

先日の面白い出会いを

教えてやっていた。


「世の中には政のことを

考える女子がおるのだな」


「中宮様も女御様も

さようにございますが」


道長は帝の周りにいる

学識のある女子たちのことを

口にする。


「さような高貴な者ではない。

前式部丞蔵人の娘、といって

おったかな…

名はちひろ…まひろと申しておった。」


道長は驚く。


「朕に向かって下々の中にいる

優秀な者を登用すべきと申した」


ああ…言いそうだ…、

そんな顔で道長は聞いている。


「いかがいたした?」


「お上に対し奉り…

恐れ多いことを申す者だと

思いまして」


帝は笑う。


「あの者が男であったら

登用してみたいと思った」



その言葉をまひろが聞けば

喜ぶだろう…


そして、同時に道長は

そんなまひろに何をして

やれるかを考えていた。


「違う…。

違う。

違う」


道長は除目の申文を

手にとっては何かを探す。


そして


「藤原朝臣為時」


の名をみつけた。


「淡路か…」



乙丸といとが為時のもとへきた

朝廷の使いを前に、

様子を伺っている。


「正六位上藤原朝臣為時を

従五位下に叙す」


為時もまひろも、

いとも乙丸も驚く。


とくに何もしては

いなかったのに…


当の為時こそが一番

混乱している。


「鴻恩をかたじけのう

いたしたるこの身、

えい慮を承り謹んで

お受けつかまつります」


「右大臣様からのご推挙で

ございます」


使いはそう付け加えた。


為時もまひろも、

さらに目を丸くした。



「これは国司にしてくださると

いうことでしょうか」


「10年もの間、放っておかれたのに

突然、どうしたことであろうか…分からぬ」


「もし…国司なら父上は誰より

越前だとお役に立てるのに」


まひろは口惜しそうだ。


「もうその話はもうよせ。

国司と決まったわけでもない。

ありがたく従五位下をお請けする

だけだ」


「あの…お話中でございますが、

明日、内裏にお上がりになる時は

赤い束帯でございますね」


いとが尋ねる。


「そうだ」


「殿様、うちに赤い束帯は

ございません」


「へ?」


皆が、沈黙した。


「位が上がるなどということを

長い間、考えてもおらなんだからな…」


「宣孝様にお借りいたしましょう。

これからお屋敷に拝借に

行ってまいります。

支度に行ってまいります」


まひろは慌てて部屋を出た。


いとがさらなる疑問を口にする。


「やはり、右大臣様と姫様は

何かありますね」


「こたびのことはそうとしか

思えぬな…」


為時も否定できなかった。



「こたびはありがたくも

従五位下叙爵へのご推挙を賜り

この為時、御礼の言葉も

ございませぬ」


為時は道長の前で挨拶している。


道長が聞きたいであろう、

まひろのことも為時は口にした。


「悲田院でお助けいただいた娘も

おかげさまで息災にしております。

何もかも右大臣様のおかげに

ございます。

これより身命を賭して

お仕え申し上げ奉ります」


「お上の御ために尽力されよ。

ご苦労であった」


短いが優しく声をかけ、

道長は去った。



まひろは軽やかに

琵琶を弾く…


が、弦が切れてしまった。


ふと、嫌な予感がした。



「光子」


斉信が妹を呼ぶ。


「帝よりの賜りものじゃ。

妹と分けよ」


「ありがとうございます、兄上。

儼子はただいまお忍びがあって…」


「そうか…」



その頃、光子のもとを

伊周が訪ねたのだが…


伊周は知らない男が

来訪していると思い、

肩を落としていた。



「ああ…」


隆家は一人で酒を飲んでいる。


「あれ?

女のとこに行ったんじゃないのか?」


トボトボと歩いてくる

兄の姿を見て隆家は尋ねた。


「くれ」


「おお…」


伊周は酒をあおった。


「振られたの?

男が来ていたとか、アハハ…」


隆家はからかうが、

伊周は涙すら浮かべている。


「まさかあいつに

裏切られるとは思わなかった」


「ああ…男が押しかけてきたの

やもしれんぞ」


「見事なしつらえの牛車であった」


それを認めるように伊周は言うが…


「泣いたったしょうがないだろ」


あまりに気落ちしている

伊周を励ます隆家。


「よし、懲らしめてやろう」


伊周は頭を振る。


「関白になれなかったゆえ

女まで俺を軽んじるのだ…」


「カ〜ッ…情けないなあ。

行こう。

誰だか確かめるだけでもいい」


気乗りせず首を振る兄を

励ますように


「ほら、兄上!」


と、隆家は伊周を連れ出した。



一条殿の前に、

牛車が止まっている。


何を思ったか隆家は

いきなり弓を取り出すと

矢をつがえようとする。


やがて屋敷の戸が開くと

隆家はギリギリと、

弓を引いた。


さすがに伊周は


「よせ」


と、止めた。


中から僧形の美しい男が

出てくると…


隆家は矢を放った。


矢は男のすぐそばを通り抜ける。


「わっ!」


男は驚いて倒れた。


「脅しただけだ。

当ててはおらぬ」


伊周にそう声をかける隆家。


「誰だ?」


夜でよく見えず伊周は

目を細めて相手を見定めた。


「院!」


という声が聞こえる。


「いかがされました、院!

お気を確かに、院!」


「院…?」


隆家はその言葉に

戸惑いの表情を浮かべた。



矢を射かけられたのは花山院。


長徳の変の始まりである。


_____________________________________________


新楽府を読んだことで

一層、この国のあり方を

意識し始めたまひろは、

一条天皇にその理想を

話す機会を得た。


帝もその話に楽しそうに

耳を傾けながら、

同時に定子や清少納言の他にも

聡明な女性が世にいることに驚く。


今、関白はいないが

内覧として仕えてくれている

道長は志も高く、

こうした話を聞けば

興味を持ってくれるだろう。


多少、まひろの言い方に

不敬な表現はあったにせよ

帝は楽しいひとときを

過ごすことができた。


最悪のタイミングだったのは、

このあと伊周がきて


「あのような女を近づけるなら、

女御になれるような者にしろ、

早く中宮に皇子を授けてくれ」


などと、それこそ

無粋で失礼な要求を

突きつけてきたことだろう。


これは帝にとって最悪、

ということではなく

このあとの伊周の命運を

左右するうえでは、

伊周にとってこそ

最悪な発言だった。


道長はそのまひろの話を聞いて

帝に対して失礼なことを

言う女子もいるものです…と

半ば驚きつつも、

そのことを道長に話す帝は

明らかに伊周よりも、

もう道長に心を開いている。


二人共、幼い頃から見てきたが

共に歩める相手なのだ、と

帝を諭した詮子の話というのは

何も身びいきでもなんでもなく、

伊周よりも道長のほうが

帝の力になってくれる人だ、

という事実であったことを

証明してもいた。



とはいえ、道長も

母の推挙した者を拒否しつつ

まひろの父の名前を探して

登用してやる…


などは多少の公私混同あるが、

ただ、幸いにも為時という人は

真面目で温厚で博識な人だ。


どこまで能力があるかを

道長が把握していたかは

定かではないにせよ、

あのまひろの父でもあるし

まひろが病に倒れたときには

その為時には会ってもいる。


「娘のことよりも

道長様は他の民のために

出来ることをしてくだされ」


と言ったあの男ならば

登用すべきだろう、と

判断してもそんなに

無理な人事ではない。


もちろんまひろからの

アピールがなかったら

道長は為時のことは

目に入らなかったとは

思うけれども。


こうしてようやく為時にも

10年ぶりにチャンスがきた。



隆家は…なんというか、

バカではあるのだが

気持ちの良いバカなので…


あくまで兄貴のために、

兄貴の女に手を出した奴を

ちょーっと脅かしてやろう、

くらいのノリなんだが…


そもそもこれは

伊周の勘違いであって…


伊周が好きだったのは

斉信の妹、光子。


花山院が通っていたのは

その下の妹、儼子…


もともと、花山天皇の時代

彼が愛していたのがその姉、

忯子であり…


花山院からしてみたら、

きっと


「よし子の面影を

感じさせてくれるタケちゃん」


のことが気に入って、

通っていたのだろう。


僧になっても女好きなのは

このお方らしいけれど、

結局、よしこー!の時代から

忯子大好き!なままで

来てしまってるんだろう。


一方の伊周だが、

光子と他の男がデキたと

思い込んで泣いているのを

見てもわかるように、

意外とそこは繊細であり…


この時代、妻を何人か持つのは

当たり前ではあったし

伊周には妻子はいるけれども

光子さんへの愛そのものは

本気だったんだろう。


それはもう、

道長にも明子や、

妻や恋人ではないがまひろと

いう恋の相手がいるように

おかしなことでも、

いやらしいことでもなかった。


光子の心が自分が

関白になれなかったせいで

離れてしまった、と

惨めな思いになる伊周は

ある意味では純粋であり…


そんな兄貴を落ち込ませた、

光子の浮気相手(と思い込んでる)の

男をちょっと脅かしてやろう、

そうすれば兄貴も元気が出るし

自分の家もナメられないだろう、

そんな程度の考えである。


べつに相手がその辺の男なら

ごめん、勘違いだったわ!

で済んだのに…


矢を射たらその相手がなぜか

前の天皇…


おまけに自分たちがやったのは

花山院は別の女のところに

来ていただけなのにそれを

勝手に恋仇と勘違いして

矢を放ってるんだから

ちょっと話にならないw


伊周はフラれて泣いたり、

矢を撃とうとする隆家に

よせ、と言うくらいの

良識はあった。


と、いうよりも

本当は気が小さいのだろう。


ところがもはやメンタルが武士に

なっている隆家はノリノリだ…


隆家はあくまでも

兄貴のためにやってるんだから

伊周にとっては、

より頭が痛いだろう…



実際のところは、

こうした勘違い事件もあったが

伊周や隆家と、道長との関係は

ドラマ以上に険悪ではあり…


隆家の従者と道長の従者が

乱闘になって道長側に

死人が出ていた、と

されている。


そのために道長の従者、

百舌彦に危機が迫っていたのだが

ドラマではその事件は

端折ってくれたようなので

とりあえず安泰か?


(あとでぶっこむ可能性は

残されているけれど)


ま、こう見ると伊周より

隆家のほうが始末におえない、

と感じる人がほとんどだと

思うのだが…


この隆家という人は、

後に刀伊の入寇で

日本が脅威にさらされたとき

大活躍して、それを撃退する

スーパースターとなる。


鎌倉時代で言うなら

義経のような…


ちょっと常人とは違うけど、

いくさにはめっぽう強い、

みたいな人だったんだろう。


隆家役は当初、

別の俳優だったのが

竜星涼さんに変更に

なったのだが、

すでに人気キャラと

なっている。


道隆や伊周同様、

イケメンではあるが

やることがめちゃくちゃで

荒っぽくてどうしようもない、

そんな貴族らしくないキャラだが

だからこそ隆家の力が

必要になるときがくる。


終盤まで出番があるし

楽しみな存在になった。


竜星涼さんにとっても

これが代表作のひとつに

なっていくといい。