光る君へ第16回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第16話「華の影」後編




中関白家の栄華が極まるこのころ、

公卿たちは都をむしばむ疫病の

対策をすべきと道隆に提言した。


しかし、道隆はそれを

無視し続けた。



強風が吹き荒れる中を

安倍晴明が庭へと出てくる。


「須麻流」


「はい」


「門を閉めろ。

今から誰も外に出てはならぬし

入れてもならぬ」


「何事でしょう」


晴明は


「今宵、疫神が通るぞ。

疫病の神、疫神だ。

これから都は大変なことになる」


恐怖している…



都はたちまち道端に

捨てられる死体で

溢れかえった。


一条天皇にもこうした噂は

届いており、

道隆は御前に呼び出される。


「都中で疫病がまん延しておると

いうがまことなのか」


「さような汚らわしきこと

お上がお知りになるまでも

ございませぬ」


「まことなのだな」


「疫病がはやってはおりますが

それは下々の者しかかからぬものゆえ

我々には関わりございませぬ」


冷たく告げる道隆。


「されど病に苦しむ民を

放っておいてよいはずがない」


「放ってはおりませぬ。

比叡山に読経を命じております」


これは何も道隆が、

非現実なのではなく当時は

医療が発展していなかったため

打てる手も限られてはいたのだ。


が…命じるだけで、

貴族側からは何も手を差し伸べない、

というのは帝には納得がいかない。


「唐の貞観政要によれば

煬帝の随が滅びたのは

兵の備えを怠ったからではない。

民をおろそかにし、

徳による政を行わなかったからである、

と書いてある」


帝はしっかりした

理想を抱いていた。


「朕はそのようになりとうはない。

忠臣としてのそなたの働きを

信じておる」


「お任せくださいませ」


と、道隆は頭を下げながらも


「そしてお上はあれこれ

ご案じなさらず

中宮様と仲睦まじく

お過ごしくださり、

一日も早く皇子を

おもうけくださいませ。

それこそが国家安寧の源に

ございます」


そう釘をさした。


帝の顔が曇る…


帝は子供を作ることを

考えていよ、とは…。



疫病の嵐にさらされる

都をよそに、

道隆は息子の伊周を

内大臣にした。


「若輩者ゆえお二人に

お力添えしたいただきたく

お願い申し上げまする」


道兼を前にして

慇懃に挨拶する伊周だが

調子に乗っているのは

明らかだ。


「叔父上とこのように

お話するのは何年ぶりでしょうか」


一時、政務から離れていた

道兼に嫌味っぽく声をかける。


道兼は挑発に乗ることなく


「お前は疫病のことを

どう思っておる?」


と尋ねる。


「それについては

父が策を講じております。

それに貧しい者にうつる病ですゆえ

我々は心配ないかと存じます」


道隆や伊周の本音は、

結局は民のことであるから

いくら死者が出ようが、

あまり関わりはないといった

感覚なのだろう。


「そのような考えで

内大臣が務まるとは思えぬな」


伊周は笑うと逆に


「叔父上は何かよきことを

なさったのでしょうか?」


と問いかける。


「このまま何もなさらないのも

悪くはないと存じますが」



まひろは例のごとく、

さわに手紙を送り続けていた。


乙丸がトボトボ帰ってくる。


「さわさん、今日は受け取ってくれた?」


「それが…」


乙丸は懐から手紙を出す。


「またいけなかったのね」


乙丸が振り返ると、

まひろが文字を教えていた

少女、たねがついてきていた。


「たね!」


「トトとカカが帰ってこないの」


「いつから?」


「昨日、悲田院に行くって…」


「悲田院…」


悲田院とは疫病にかかった者のために

建てられた施設である。


「トトとカカも熱があって

薬草をもらいに」


「行ってみる?」


「うん」


たねは頷くが乙丸が

慌てて止める。


「姫様、悲田院の前には

疫病の者らが列を成していて

いらしては…」


しかしそれでやめるまひろではない。



悲田院には

咳き込む者達が、

倒れ伏している。


まひろも乙丸も鼻と口を

抑えながら中に入っていくが、

一人の少年がまひろの裾をつかんだ。


「お水…」


苦しそうに少年は言う。


「水…水…」


「これを」


乙丸が水を汲んでやる。


「や〜!」


という泣き声が聴こえてきた。


たねが


「トト…カカ…」


抱きついているのは、

すでに冷たくなった

両親の遺体である…


文字の練習を許しては

くれなかった怖い両親でも、

たねにとっては大切な

親なのだ…


「生きている者は手を挙げよ、

死んだ者は運び出す」


疫病対策には検非違使も

駆り出されている。


彼らは乱暴に死んでいると

思しき者を運び始めた。


たねを掴んで押しのける。


「邪魔だ」


たねを抱きしめたまひろだったが、

その異変に気がついた


「たね…目を開けて!たね!」


「生きている者は任せる」


男たちは告げると

帰っていく。


「たね…

心配ないわ、ここにいるから」


震えるたねを抱きながら

まひろはやさしく声をかけた。



夜になった。


まひろは懸命にたねを

看病している。


「あめ…つち…」


意識朦朧としているたねは

うなされながらも、

声を発した。


まひろはハッとする。


「あめ、つち…。

ほし、そら…」


乙丸がまひろを見る。


「やま、かは、みね…」


「姫様」


言いにくそうに乙丸が止めた。


「もう死んどります」


たねは運び出されていった。


少年が咳き込みだす。


まひろには放っておけなかった。



道長も兄に対策を講じるよう、

頼みに行っている。


が、道隆は


「疫病は自然に収まる。

これまでもそうであった」


と、冷たい。


「されど、この度ばかりはいつもの

疫病とは違う気がします。

貴族の屋敷の者も倒れて

おりますゆえ」


道隆や伊周は貴族は

かからない、と言っていたが

それは思い込みだ。


「もし内裏に入り込めば帝とて…」


道長はそのことも危惧している。


「黙れ!」


道隆は暗く重い声で

道長の進言を阻んだ。


「そのようなことは起きぬ」


「兄上から帝にご奏上いただき

疫病の対策を陣定でお諮りください!」


「そのつもりはない」


道隆はしきりと水を飲む。


「疫病より相次ぐ放火の方が

一大事である。

帝と中宮様を狙ったものであれば

中宮大夫のお前こそ、

どうするつもりだ」


道隆は道長の前に座った。


道長にもそれは有効な対策が

思いつかずにいたことだ。


目を逸らすしかない。


道隆は扇で道長の顎を

あげさせる。


「役目不行き届きであるが

今回は見逃そう。

下がれ」


くっつかんばかりに

顔を近づけると、

道隆は有無を言わさぬ表情で

道長を退けた。



腹立たしげに帰っていく

道長と道兼がすれ違う。


道長のいつもの穏やかならぬ様子に


「どうした。そんな顔をして」


と、道兼は声をかけた。


あれ以来、こうして

少しずつ兄弟らしさを

お互いに取り戻したのだろう。


「関白と話しても無駄なので

自分で悲田院を見てまいろうと

思います」


いつものように兄上、ではなく

関白、と呼ぶくらいだから

道長の怒りも相当なのだろう。


「やめておけ」


道兼は止めた。


「京都の様子なら俺が見てくる」


道長は振り向く。


「え?」


「汚れ仕事は俺の役目だ」


少し微笑むような顔で、

道兼は去っていく。


兄上は変わった…


道隆とは違う、

真っ当な方向へ。


道長は胸をうたれて、

その背中を見た。



道兼は従者だけを連れて、

悲田院を訪れる。


中にはまひろもいるが

気づかない…


だが道兼のもっともな誤算は…


「兄上」


せっかく止めたのに、

道長が追いかけてきていたことだ。


「お前が来ては元も子もないではないか」


道兼は民を救うのはもちろん、

弟が病にならぬように、と


「汚れ仕事」


を引き受けたのに…。


「私は死ぬ気がいたしませぬゆえ」


「相変わらずまぬけな奴だ」


相変わらず噛み合わない

兄弟ではあったが、

心強いことではある。


2人は悲田院の様子を

うかがっていく。



まひろが看病していた少年も

すでに冷たくなってしまった。


と、まひろが咳き込み始める。


「姫様、もう帰りましょう」


乙丸が心配する。


しかし、まひろは諦めず

他の者のところに向かうが

咳がひどくなりつつある。



道兼と道長の姿を見た薬師が


「あんたらも手伝ってくれ」


と助けを求めた。


「薬師は一人か?」


「仲間は次々に倒れている。

手が足りない」


「内裏に申し出るゆえ

少し待て」


道兼は答えた。


「これまで、何度となく

申し出たが何もしてはくれぬ」


薬師の声には諦めが

まじっている。


「なんと…」


道兼が薬師と話す間、

道長はさらに院内を回った。



「姫様、もうおやめに」


咳が続くまひろ…


立ち上がると目眩がし、

よろけて道長にぶつかる。


「すまない」


倒れるまひろを支えた道長は


「まひろ…」


その存在に気づいた。


しかしまひろの意識は

定かではない。


気を失うまひろを

抱きしめる道長は、

その身体が高熱を

発していることに気づいた。


「しっかりいたせ、

まひろ、しっかりいたせ!

まひろ!」



道長は乙丸や百舌彦と共に

為時の屋敷へとまひろを

連れ帰る。


「あ…姫様!」


いとが心配そうに叫んだ。


「藤原道長である。

乙丸!」


「こちらでございます」


乙丸がまひろの部屋へと

道長を案内していく。


いとは


「藤原ミチナガ…誰?」


見知らぬ男の来訪に驚いた。


「はっ、殿様!」



道長はまひろを寝かせてやる。


「まひろ!」


心配そうに為時もやってきた。


「疫病かもしれません」


「ああ…!」


いとが悲鳴をあげた。


「私が看病いたしますので

あなた方はこの部屋に

入らないでください」


「あ…されど大納言様に…」


「私のことはよい!」


道長は叫ぶように言った。


為時は頭を下げる。



「姫様のご回復を殿様、

お祈りいたしましょう。

殿様、姫様と大納言様は

どういうあれなんでしょうか」


いとは素朴な疑問を口にする。


為時ももう、なんとなく

気づいたのだろう。


だからまひろは婿取りを

あれだけ拒んでいたのだ…


「こうやって、抱いてみえたんですよ、

こうやって」


いとは詮索するが、

為時は黙った。



夜になる。


まひろは荒い息をついている。


「久しいのう」


道長は汗を拭いてやった。


「なぜあそこにいた。

生まれてきた意味は

見つかったのか?」


答えないまひろに、

道長は声をかける。


「逝くな、戻ってこい!」



夜が明ける…


まひろの熱は少し下がり、

道長は手を握る。


が、その手を離して

ため息をついた。


「失礼いたします」


為時がやってきた。


「一晩中ご看病くださって

ありがとうございました。

娘も喜んでおることで

ございましょう。

されど、大納言様には

朝廷での重いお役目が

おありになりますでしょう。

この先は娘は我が家でみますので

どうぞお帰りくださいませ」


「分かりました」


道長はその手に触れようとしたが、


大事にいたせ。


と心の中で声をかけて去った。



朝早く帰る道長。


「おかえりなさいませ」


「うん」


倫子は見つめる。


「ゆうべは高松殿でございましたか」


赤染衛門が倫子に話しかける。


「ご無礼いたしました」


「殿様、ゆうべは高松殿では

ないと思うの」


「は?」


「殿のお心には

私ではない、

明子様でもない

もう一人の誰かかいるわ」


倫子は睨むように見ていたが

笑いながら去っていった。


いつもとは違う倫子の様子に

衛門も驚く…



まひろ、まひろ…


そう呼ばれた気がして、

まひろは目を開けた。


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このとき都で流行った疫病は

天然痘だった、とされている。


が、ドラマの描写では

発疹が見られなかったので

詳しくはわからない。


麻疹の可能性もあるのだが

これも途中から発疹が

出てくると思うし、

まひろが一日かそこらで

感染していることを思うと

潜伏期間があまりないように

見える。


一応、記録上は天然痘であったと

いうことが残されている。


そこはドラマなので

この病気が具体的に何、

ということよりも都が

疫病に襲われた、

というほうが重要ではあろう。


安倍晴明は疫神、

と言っていたが映画の

陰陽師ならこれを

撃退するところだが

現実にはそうではない。


門を閉じて外に出るな、

つまりはソーシャルディスタンス!


意外とこの安倍晴明のほうが

理にかなってはいるw



「汚れ仕事は俺の役目だ」


と、悲田院の様子を見に行く

道兼はかっこよかった。


念の為、補足をすると

この時代にはワクチンもなければ

抗生物質もないので、

疫病の治療は難しいわけで

道隆が


「読経を命じた」


というのもべつにそこまで

悪いわけでない。


薬師はいたとしても、

形ばかりだったろうし

薬草の類でも対症療法だけは

出来たとは思うが、

逆にいえば医療面で

出来ることはそれしかない。


とはいえ、

道兼や道長にしても、

なにも道隆にこの疫病を治せ、

と望んでいるわけじゃない。


悲田院の者が何に困っているのか、

それをちゃんと聞いてやることで

具体的に支援することを

彼らは考えたのだ、ということ。


ドラマでは道兼と道長が

活躍したものの、

我らが実資殿も日記の中に

たびたび悲田院に物資を

届けたことを書いている。


一部の心ある貴族には

そういう者もいたということだ。



この時代の感染症は

治療方法がないから

感染したらアウト!


まひろが感染しても助かるのは

主人公補正でおかしい、

という意地悪な反省会民がいたが

それはまったく違うだろう。


当時の記録というのはちゃんと

残っているのでそれを調べればわかる。


確かに致死率は高いのだが、

100%ではない。


3〜5割である。


もちろんそれもかなり

絶望的な数字であるが

だからこそ道長は

必死に看病をした。


助かったか助からないかは

運でしかないのだが、


「生まれてきた意味は

見つかったのか」


と、問いかける道長にとっては

まひろはただの異性ではなく


「友」


でもあるのだろう。


素敵な場面になっていたと思う。



べつに(少なくともこの行為は)

道長に後ろめたいことなどは

なかったわけなんだが、

倫子さまに勘づかれたことだけが

無念である…あまりにも。


無念だ…w