光る君へ第9回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第9話「遠くの国」後編




兼家の謀略を知った息子たちは

驚いている。


とくに道隆は


「父上の見事さに打ち震えた」


と感動すら覚えていた。


「命を懸けて父上をお支え申そう。

道兼」


道隆は道兼の前に座る。


「お前はなぜ先に知っておったのだ?」


道兼は得意気に答える。


「兄上や道長より

私が役に立つと父上が

お思いになったからですよ」


嫌味にも聴こえるが、

理由はちゃんとある。


「蔵人なのに右大臣の息子

というだけで帝には

遠ざけられていましたが

ある日、これをご覧になった帝が

にわかに私を信用してくださったのです」


道兼は袖をまくると、

痣だらけの腕を見せた。


痛々しいそれを見て道隆が心配する。


「いかがいたした?」


「己で傷つけたんですよ」


道兼は笑顔すら見せる。


「時折、正気を取り戻す父に

殴られたということで」


帝の気を引くために

そこまでするのか…と

道長は黙り込んでいる。



腕だけではなく、

道兼は体の至るところに

痣を作っていた。


「お前も難儀なことだのう。

恐ろしい父親で」


道兼を嫌っていた花山天皇も

あくまで道兼の父である

右大臣兼家が嫌いだった、

というだけだ。


その兼家から道兼が

ひどい暴力を受けているなら

帝にとっては道兼も、

かわいそうに感じるのは

当たり前でもあった。


生来、奔放な性格の帝だが

感受性は豊かな人であった。


道兼は帝の心にうまく

入り込んでいく。


「お上のお悲しみに比べれば

どうということもございません」


「義懐がこのごろ女御でも

ほかの女子でもよいから

子を作れとうるさいのじゃ」


帝はそうこぼす。


あれだけ女好きであったのが、

忯子を失って以来、

すっかりそういう気持ちを

なくしてしまっている。


忯子以外にも后はいたが、

帝にとってはあまりにも

忯子の存在が大きすぎた。


「朕は忯子でなければ嫌なのに…」


道兼はそんな帝に同意してやる。


「なんとむごいことを…

人の心はそのように

都合よく移ろうものでは

ありませんのに」


涙声で語る道兼の肩を

帝はつかんだ。


「お前は分かってくれるのか」


「お上の忯子様への思い、

私には痛いほど分かっております」


こうして道兼はだんだんと

帝のお気に入りになって

いったのである。




「兄上や道長がのんびりと

父上の枕元に座っている時に

私は体を張って父上の命を

果たそうとしていたのです」


嫌な言い方ではあるが、

事実は事実…


道隆も道長も黙るしかなかった。


とくに道長からしてみたら、

父が道兼は使い捨ての道具、

と言っていたことも知っている。


それなのに喜々として

そんなふうに使われている

道兼は哀れかもしれない。



牢に入れられている

直秀ら一行はしばらく

そのまま放置されていた。


「昨日も今日も取り調べが

ないけど不気味だな」


百成がつぶやく。


輔保は


「むち打ち30くらいかな」


と予想する。


磯丸も


「人も殺していないんだし

まあそんなもんだろうよ」


と同意した。


「30回もむち打たれんの…」


百成がぼやくと、

一同は笑う。


久々利が


「出たら六条河原の女に

会いに行かないとな。

急に消えたから

心配してるだろうし」


と牢の外を見る。


「もう男できてたりして」


「それは、あるな」


また皆が笑った。


黒太が歌い出す。


「梅の香ぞ」


皆も続く。


「酒の香ぞ

そそげず そそげず 闇の盃

いんじゃん!」


直秀も楽しげに歌った。



道長の同僚、広盛が


「道長殿が捕らえた盗賊、

流罪と決まったらしいですぞ」


と教えてくれた。


「なぜ広盛殿が知っておるのだ?」


「私の弟は検非違使庁に

つてがございまして」


「そうであったか。

いつ出立するかは

聞いておらぬか?」


「明日の卯の刻だったと思います」


「卯の刻…」


卯の刻といえば今で言う

早朝5時から7時あたり。


ずいぶん早い。


宗近が


「7人も流罪にするのは

手がかかりますな。

検非違使庁も何を考えているのか。

盗人ならせいぜいむち打ち

くらいでしょう、常ならば」


と疑問を口にする。


道長はまひろに流罪ではないか?と

説明したものだが、

普通はむち打ち程度なのか…と

改めて知った。



「卯の刻、直秀が獄を出て

都を追われる。

別れを告げるなら共に参ろう」


すっかり仲良くなった

百舌彦と乙丸。


百舌彦は道長の真似をしながら

なぜか乙丸に迫った。




道長はまひろを連れ、

朝早くから


「流罪の者を見送りに…」


と検非違使のもとを訪ねた。


「それならもう出ましたぞ」


「え?

卯の刻に獄を出ると聞いたが」


「もう出ました」


「どこに向かったのだ?」


嫌な予感がした道長は尋ねるが

男は答えない。


道長は声を荒げて詰め寄った。


「どこに向かった!」


「とと…鳥辺野…」


さすがに藤原家の息子に

詰め寄られては無視はできない。


「鳥辺野?

鳥辺野とはしかばねの

捨場ではないか」


道長はまひろを馬の背に乗せて

鳥辺野へと駆けていった…



森の中を不気味なカラスの

鳴き声が支配している。


二人は不吉なものを

感じざるを得ない。




直秀らは放免らに連れられ

森の中を歩く。


途中で先頭の男が立ち止まる。


「どうした?」


放免の男は直秀を見て

にやりと笑う。


その男はかつて町人に

乱暴していたところを、

直秀が石をぶつけた相手だ。


思えばあれをきっかけに

道長やまひろとの縁が

生まれたものだが…


今はその男が直秀に

残酷な運命をもたらそうと

していた…



道長は馬を降りると

まひろの手を引き森の奥へ

向かっていく。


カラスたちが何かを啄み、

道長らに気づくと

一斉に逃げていった。


そこにあったのは無数の遺体。


もちろん…知った者達だ…


皆、手をきつく縛られ

おそらく抵抗することすら

出来なかったのだろう。



「手荒なことはしないでくれ」


そう言って自分は

袖の下を渡したはずだ。


なぜだ?


そんな金を渡した自分の

態度が反感を買ったのか?


それとも、

わざわざ金など渡したから

藤原家の面子をつぶした

こいつらを厳しく罰せよ、

というふうに受け取られたのか?


道長にはわからない。


わかることは…ただ、

自分が行った行動の結果、

直秀らは死んだ、

ということだけだ。


「愚かな…」


道長はふらふらと歩き、

手前のうつぶせの遺体を

仰向けにしてやる。


この時代…死の穢れを

人々は恐れた。


遺体に触れるなど

タブーであったが道長には

そんなことはどうでもよかった。


仰向けになった遺体は、

直秀だった。


大切な、友達。


固く強く握りしめていた

直秀の手を道長は

開いてやった。


中からはバラバラと、

土がこぼれ落ちていく。


土を握りしめながら、

必死に痛みに耐えたのだろうか?


それともなんとか

逃げようと地面を這ってでも

最後まで生きようと

懸命にもがいたのだろうか。


彼の生き様そのものが

そうであったように、

たとえ高い身分でなくとも

こうして土や泥にまみれても

一生懸命に生きる…


まるでそれを体現している、

そんな友の姿がそこにあった。


だがこのまま野ざらしで

土を握ったままでは、

なんともつらすぎる。


道長はその手の土をはらい、

綺麗にしてやると、

懐から扇子を取り出して

握らせてやった。


友の証だ。


貴族嫌いな直秀に

怒られてしまうかもしれないが、

打毬をしていたときの直秀は

誰もが疑わぬほど、

道長の「弟」らしい

堂々とした男ぶりだった。


貴族でなくていい、

せめて最後は人間らしく

見送ってやりたい、

それが道長の願いで

あったろう。


道長は手を合わせると、

おもむろに地面を

掘り始めた。


まひろも黙って一緒に

土を掘り返す。


二人は無言で…


必死に素手で地面を

掘り返す…


空が明るくなり

太陽が射してきたが、

二人はただ無言で

穴を掘っていった。


遺体にカラスが群がると、

道長は怒りをぶつけるように

カラスどもを追い返す。


直秀の冷たくなった顔に

土をかける二人…


全員を埋葬する頃には

日が暮れかけていた。


二人は並んで手を合わせる。


優しい道長はまひろの

美しい着物が土で汚れて

しまったことに気づいた。


「すまない」


着物の袖や裾を払ってやるが

綺麗になるわけではない。


それは亡くなった人たちにも

同じことだ。


道長は遺体の埋まった地面を

見回して


「すまない」


と謝った。


「皆を殺したのは…」


絞り出すように言った。


「俺なんだ」


道長は己の足を叩きながら


「余計なことをした!」


と叫ぶ。


涙がとめどなく溢れてくる。


「すまない…」


輔保が懇願したように、

最初に捕まえたときに

逃がしてやればよかった。


武者たちからは

舐められるかもしれない、

父や兄には怒られるかもしれない。


でも、彼らはまだ何も

盗んでもおらず、

誰も傷つけたりもしていなかった。


あるいは検非違使に

引き渡したときに、

なぜもっとはっきりと

必ず命を助けろ、

逃がしてやれと命じなかったか…


結局は、道長自身の立ち回りが

結果としては彼らのこんな

残酷な結末を招いた。


道長はそう自分を

責めずにはいられない。


「すまない…すまない。

すまなかった。

すまなかった!」


返ってくる声のない地面に、

道長は何度も呼びかけた…


まひろはただ後ろから

道長を抱きしめてやった。


道長が彼らを殺したくて

こんなことをしたわけではないのだ。


道長はそんな人ではないのだ。


まひろは知っているし、

直秀だってわかってくれるはず。


でも、道長は自分が許せない。


まひろが母の死のきっかけと

なってしまった自分自身を

ずっと憎んできたように、

きっと道長も…。


道長は声をあげて

泣き続けた。


まひろはただ道長を

優しく抱きとめ、

まひろも泣き続けた。


そんな二人を見ていた

カラスが飛び去っていく。


日が暮れかけて夕陽に

照らされる中を、

二人はただ無言で帰っていった…。




明くる日の内裏。


犬の死体が庭にあるのを

発見した男が悲鳴をあげ

腰を抜かした。


神聖なる場所に動物の死体が

置かれていること自体が

この時代は許されぬことなのだ。



さらには廊下を歩いていた

女たちがなぜか床が

濡れているのを見て驚く。



「忯子様の涙だわ」


「昨夜も弘徽殿で白い影を

見たという者が…」


「怨霊よ、忯子様の」


女たちがそんな噂を始めている。



「右大臣は死ななかったのか。

さてもしぶといやつ、

虫ずが走る」


帝は安倍晴明に愚痴をこぼしている。


「ことはそのようなのどかな話では

ございませぬ」


「はん?」


「右大臣様がお目覚めになったと

いうことは成仏できない

忯子様のみ霊が右大臣様を離れ

内裏に飛んできたということに

ございます」


「忯子よ…成仏できぬのか。

かわいそうにな…」


晴明は畳み掛けた。


「忯子様は苦しんでおられます。

成仏しようともがいておられます」


帝はあまりのことに、

御簾から出てきた。


「成仏させてやりたいな」


「そのようなことが

おできになるのは

お上しかおられません」


「何でもしてやろうぞ。

どうすればよいのじゃ」


「ん〜…何でもと仰せられても…」


あえて晴明はもったいぶった。


「はっきり申せ」


「ん〜…」


「もったいぶるな!」


帝が詰め寄る。


「ん〜…」


「晴明」


「ならば…。

お上が出家あそばされるしか

ございません」


さすがにそれは帝にとっても

即答しかねる内容であった。


出家をする、ということは

俗世から離れる…

当然、天皇の座から降りる

ことになるからだ。


その結果、得をするのは

東宮を抱え込んでいる

右大臣であることは

帝にもわかっている。




惟規の旅立ちの日がきた。


「父上、これまでお育てくださり

学問をご教授くださり

ありがとうございました。

これより大学にまいります」


いとがたまらず泣き出す。


「父上のお顔を潰さないよう

努めてまいります」


「いと、これは泣くことではない」


「いと、今生の別れではないのよ。

休みの日には帰ってこられるんだから」


と為時とまひろが声をかける。


「赤子の時からお育て申し

片ときも離れたことのない

若様ですので…」


「一念通天、率先垂範、

温故知新、独学孤陋、

肝に銘じよ」


為時が餞別の言葉を送る。


「今のわかった?」


まひろが聞く。


「1つ分かった」


「情けないのう」


為時が肩を落とす…


「今日から本気出しますので。

ねっ」


とまひろが励ました。


「ん」


「しっかり学んで見違えるように

成長せよ」


「はい!行ってまいります!」


返事だけは威勢がよい。



見送りながら為時はぼやく。


「心配じゃのう…」


「なんとかなりましょう」


幼い頃からよく口にしていたことを

為時は改めてまたまひろに言った。


「お前が男であったらと

今も思うた」


「私もこのごろそう思います。

男であったなら勉学にすこぶる

励んで内裏に上がり、

世を正します」


直秀のような者を生まない、

生み出させたくない。


そんな密かな決意が

まひろの中にも生まれている。


そのようなことは知らない為時は

ずいぶん成長した娘に


「ほう〜…」


と感心する。


「言い過ぎました」


まひろは笑ってごまかした。


為時も共に笑った。


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なぜ、直秀らは殺されてしまったのか。


やはり3回ほど観ても、

正確な答えというのは

わからなかった。


そもそも盗みに入ろうとは

したもののまだ何も

盗んではいなかった。


過去には左大臣家からも

盗んではいたものの、

この時代の捜査である以上

それら全てを証明はできない。


だから盗みに入って

捕まったものの、

何も盗んではいない、

という程度ならば

流罪どころかむち打ちで

終わりで良かったようだ。


これは盗賊である彼ら自身も、

そして道長の同僚である

宗近もそう見ていた。


だからこそ宗近は


「むち打ちでいいのに、

なんで7人も流罪にする?」


と疑問にすら感じていた。


そうなってくると、

ほっとけばむち打ちで

終わっていたものを

道長が金を渡して

やはり何か検非違使に

余計な火をつけてしまった、

ということにはなる。


もっとも、検非違使自身も

むち打ちどころか


「腕の一本二本へし折って」


と言っていたことから、

内裏勤めの宗近らとは

認識の違いもあるのだろうけれど。



もっとも前半のほうにも

書いたのだが、

検非違使がいけないというか

その手先となっている、

放免たちが残酷なので…


彼らが直秀にからかわれたことを

根に持っており、

その報復をした、というのが

直秀役の毎熊さんも

語っておられるため

厳密には道長のせいでは

ないような気もするのだが。


もっともあのとき放免らは

直秀と間違えて道長を

捕まえてしまい、

その道長は余裕綽々で

解放されていったから

その道長のことも気にいらない、

というのはあったとは思う。



この問題に関して、

実はもっとも大きなことは


「本当に道長のせいかどうか」


ではないのだろう。


これはまひろがそうであったように、

正確にはまひろのせいではなく

ちやはを殺した道兼がいけないのに、

まひろは本当は自分のせいだ、

と思って生きてきたということ。


道長はそれと同じで

直秀を殺したのは放免だから

そこまで自分を責めなくていいのに、

自分を責めてしまう。



二人の共同作業が、

一日中、日が暮れるまで

無言で遺体のための

穴を掘り続ける…


というのはあまりに

苦しすぎる映像だった。



まひろに抱きついて泣く道長も、

もはやあれは甘い抱擁でも

なんでもなく…


ただ、2人に共通しているのは


「自分のせいで大切な人が

死んでしまった」


という、自責の念…


なんという辛いストーリー。



でも、後年、最高権力者となる

藤原道長…


このドラマのあの、

ぼやっとした性格からどうやって

上に昇りたいという思いに

目覚めるのか注目していたが、

まひろがそう感じたように


「勉学に励み世を正したい」


となっていくために、

直秀が必要なキャラだったのだろう。



「この世をば我が世とぞ思う

望月の欠けたることも

なしと思えば」


道長が権力に酔って

調子に乗った歌と言われているが

本作は違う解釈にする、と

大石静さんは述べていた。


望月が欠けない。


大切なものを奪われない。


そういう意味になるのかもしれない。