光る君へ第5回あらすじ&感想前編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第5話「告白」前編




永観二(984 )年。


あの五節の舞で、

道兼の姿発見し、

そしてその憎い道兼は

自分が好きな三郎の兄である、

と知ってしまったまひろは

そのまま気を失ってしまった。



倫子らの集まりにも、

寝込んでいるまひろは

欠席している。


「今日はさみしいこと」


「お倒れになったという

まひろ様のお加減が

心配ですけれど

肇子様は五節の舞で

侍従宰相様のお目に留まり

昨夜、早速お通いがあったとか」


と、赤染衛門が

うわさ話をする。


「お顔の四角いあの方…」


茅子が顔の四角い侍従宰相を

思い出した…。


「お顔は存じ上げないけれど

大層な富がおありのようよ」


倫子が言うと茅子は


「どうせなら帝とか

右大臣家の3人のご兄弟とかなら

よかったのにね」


と笑った。


花山天皇は性に奔放だが、

見た目は良い。


「右大臣家の3人のご兄弟は

そんなに見目麗しいの?」


と、倫子は尋ねる。


「はい。皆様、お背が高く

お美しゅうございました」


しをりが


「それよりお倒れになった

まひろさんですけれど

やはり身分の低い方が

五節の舞姫なぞおやりに

なったのが間違いだったのですわ。

ここにおいでになるのだって…」


とまひろの陰口を言い始めると、

倫子が珍しく低い声で


「おやめください」


とはっきりと制した。


「まひろさんを五節の舞姫に

出したのは我が家であり

我が父ですよ」


まったくその通りであり、

まひろは倫子の代役として

左大臣が任命したのだ。


そのまひろに文句をつける、

ということは倫子だけでなく

左大臣、雅信のことを

貶めているのと同じ。


倫子は笑顔になると


「ですからまひろさんが

またお出ましになったら

優しく接してあげてくださいね」


しをりと茅子にそう伝えた。



まひろは眠ったまま起きない。


いとが


「3日前から食事はおろか

水さえも口にされず

起き上がることもできず

どうしたらいいものかと…」


怪しい祈祷師たちを家に

招いている。


「あなた様は姫様のお母上で?」


「いえ…お方様は6年前に

お亡くなりになりました。

こちらどうぞ」



男が祈祷を始めると、

おかしな声をあげながら

女が歩き出す。


そして女は突然たおれた。


「降りました。

そなたは誰じゃ」


「く〜ち〜おしや〜…

子を…娘…母じゃぞ」


「お方様?」


いとが驚く。


「この子らに思いを残しておるのか?」


男が尋ねると


「うう…。」


女は泣き真似をする。


「そうかそうか、

この世に思い残すことがあるゆえ

成仏できないのだな」


「うう…娘〜!」


「娘に思いを残しておるのだな」


「うっ」


女は倒れた。


「母上を浄土に送らねば

いずれ怨霊となって

姫を呪い殺すであろう。

成仏を願い不動明王の

ご真言を唱えつつ、

朝晩水ごりをされよ」


弟の惟規が抗議する。


「死んじゃうよ、冬だよ」


「やらねば怨念が積もり

姫は…死〜ぬ〜!」


「あ〜!」


いとが悲鳴をあげた。


まひろは眠り続けている。



祈祷師たちはお礼をせしめて

帰っていく。


惟規は水などかぶりたくない。


「しっかりしてくれよ、姉上」


いとが水の入った釜を

本当に持ってきた。


「外では凍えてしまいますので

こちらで少しだけ水ごりを

いたしましょう」


いとは祈祷を始めた…


「やめとけよ。

もうやめろって、いと!」


「やめません!」


「やめろよ!ちょっと…」


惟規が釜を奪おうとする。


「やめま…」


二人は倒れ込み、

大量の水が惟規に

かかった…


「冷た…」


「若様…若様!」


大騒ぎである。


「もう!」


まひろは飛び起きた。


「死んだように寝るの

やめるから、

ああいう人たち呼ばないで」



まひろの父、為時は

娘に向き合い思いを

伝えていた。


「わしは賭けたのじゃ。

お前が幼い日に見た

咎人の顔を忘れていることに」


咎人、とはっきりと

言葉にしているだけに

為時とてまひろの思いを

否定したいわけではないのだ。


「されどお前は覚えておった。

何もかも分かってしまったゆえ

分かった上で頼みたい。

惟規の行く末のためにも…

道兼様のことは胸にしまって

生きてくれ。

ちやはもきっとそれを

望んでおろう」


「母上が…」


「お前が男であれば

大学で立派な成果を残し

自分の力で地位を得たであろう。

されど惟規はそうはゆかぬ」


昔から父はよく、

まひろが男であったなら…


と、言ってきたのだ。


弟の太郎、惟規は

優しい子だけれど、

学問は苦手…それは

まひろも知っている。


「誰かの引き立てなくば

まっとうな官職を得ることもできぬ」


為時があえて右大臣、

兼家の言いなりになってきたのも

己の出世もあるが、

何より息子、そして娘の

未来のためであるのは

確かなのだ。


それでもまひろの怒りは

どうしても消えない。


「右大臣様におすがりせねば

ならぬゆえ、

母上を殺した咎人のことは許せと」


「お前は賢い。

わしに逆らいつつも

何もかも分かっておるはずじゃ」


「分かりません」


分かりたくない、

というふうにまひろは言った。


頑ななまひろに、

為時も顔を下げた…



道長と共に歩いていた

宗近がうわさ話をする。


「豊明節会の夜、

倒れた舞姫が分かったぞ。

式部丞の蔵人、

藤原為時の娘だそうだ」


広盛が


「縁起のいい日に

倒れた舞姫の話なぞするな」


と答えると宗近は笑う。


道長は、まひろだったのか…と

暗い顔になった。


足を止めた道長に広盛は


「いかがなさいました?」


と声をかけたが、

道長は答えなかった。



母の琵琶を弾きながら

まひろは在りし日の母を

思い出していた。


「父上の官職が決まったら

お祝いに弾きましょう」


道兼…弟は三郎…。


まひろは琵琶を抱きながら

考えこむ。


鳥の声だけがあたりに響いた。




内裏では花山天皇が、


「関白、左大臣、右大臣が

朕の政に異を唱えようと

構うことはない。

どんどんやるのだ。

ためらわず前に進め」


と、やる気を見せていた。


一同は頭を下げたのだが…


藤原実資は釈然としないものを

抱えている。


「帝の行き過ぎをお諌めされよ」


帝の叔父でもある義懐が

顔をしかめる。


「何ですと?」


「夢を語るだけであれば

誰にでもできる。

されど実が伴わねば

世が乱れるは必定。

そのことをお上は全く

分かっておられぬ」


手厳しいがその通りだった。


が、義懐は反論する。


「夢を掲げてこその政だ」


「あれこれ試してしくじれば

朝廷の権威も地に落ちる」


しかし若く帝の乳母子である

惟成は


「私が帝の夢を形にして

差し上げます。

ご安心ください」


とあっさり言った。


実資の語気が荒くなる。


「その安請け合いが

いかんと言っておるのだ!

政は子供のおもちゃではない。

さきの帝の頃にはこのようなことは

なかった。

情けない」


どこまでも遠慮ない実資。


「口を慎まれよ」


「私は間違ったことは

言っておらぬ!

誰に聞かれても構わぬ」


「帝に聞かれてもか?」


「構わぬ」


さすが、頭中将である。


実資は一歩も引かない。




その頃、女達はうわさ話に

興じていた。


「弘徽殿の女御様、

どこがお悪いの?」


「帝のご寵愛が過ぎるのよ」


「女冥利に尽きるじゃないの。

めでられ過ぎて倒れるなんて…」


「お気の毒」


「お幸せ」


花山天皇の妻である忯子は、

あまりにも帝に愛されすぎるゆえ

夜も眠れないのか、

倒れてしまう有り様であった…。



斉信は忯子の兄である。


「帝は我らより若い。

志は高くやる気もおわす。

これは思ったより長いご治世に

なるやもしれぬな」


だが公任は


「その割に斉信の位は上がらぬな。

帝は弘徽殿の女御をご寵愛だが

その兄君には興味がないのであろうか」


と、斉信の痛いところを突いた。


行成が慌てて斉信をかばう。


「それはこれからのことで

ございましょう」


「どうかな」


斉信も公任に反撃する。


「公任には悪いが

関白様の世はもう過ぎた。

帝は義懐殿らと新しい政を

なさろうとしておられる。

ぜいたくを禁じ、

銅銭を世に広め、

正しい手続きを経ておらぬ

荘園を没収されようとお考えだ。

どれも我らの親の代には

ありえなかったご沙汰となる」


「ん〜…」


公任は考えこみ、

改めて斉信は話す。


「帝をただの女好きだと

思っていたことを俺は今、

恥じておる」


「されど帝がそばに置かれている

惟成や義懐は成り上がり者だぞ。

俺は彼らには従わぬ」


「義懐殿や惟成はどうでもよい。

我らこそ若き帝と共にあるべき

世の形を語らねばと、

申しておるのだ」


そんな斉信に公任は淡々と返す。


「それには斉信、

もっと高い位を得ねば

帝とも話せぬぞ。

妹御にすがって偉くしてもらわねば。

それに俺たちの世になる、

ということは俺たちが

競い合うということでもある。

なあ道長」


道長は興味なさそうに


「ん?」


と返事をする。


「聞いていなかったのか?」


「聞いてたよ」


「ではどう思うのだ」


「なるようになるだろう」


なんとも気のない返事だ。


「手ぬるいことだな、

相変わらず」


そこが道長の良いところだと

わかってはいるが公任は呆れた。


斉信は苛々して

公任に言う。


「俺たちが競い合うより

先に手を組んだ方がよいと

申しておるのだ。

分からんやつだな」


だが公任はあっさりと


「それを言うなら俺より

官位が上がってから

言ってくれ」


と返した。


2人に挟まれて右往左往する

哀れな行成が


「あ…皆様、そろそろ

弓の稽古の刻限です。

庭に参りましょう」


と遮った。



「いかがされました?」


いつも以上に静かな道長が気になり

行成が尋ねる。


「ん?」


「お悩み事でもおありのような…」


「お悩み事か…」


「女子のことでしたら…

まずは文をお遣わしになるがよいと

思いますが…

何なら代筆いたします」


「要らぬ」


と、道長は即答するのだった。



兼家は道長と食事をしながら

尋ねた。


「道長、何か面白い話はないか?」


「父上がお聞きになって

うれしい話はございません」


「正直だな。

内裏の仕事は騙し合いじゃ。

うそも上手にならねばならぬぞ」


「あ…そういえば先日、

四条宮で公任や斉信らが

帝のご在位は長かろうと

話しておりました」


若者たちが何を考えているか

気になった兼家は


「ほう」


と興味を向ける。


「帝はお若くお志が高く

すばらしいと」


「お前もそう思うのか?」


「分かりませぬ」


あっさり答える道長に


「分からぬことを分からぬと

いうところはお前のよい

ところでもあるが、

何か己の考えはないのか?」


と兼家は聞いた。


「私は帝がどなたであろうと

変わらないと思っております」


「ほう…」


「大事なのは帝をお支えする者が

誰かということではないかと」


何も考えていなさそうな

道長ではあるが、

こういうところで本質を

見分ける目は優れている。


「そのとおりじゃ。

よう分かっているではないか」


と満足げに兼家は笑う。


「我が一族は帝をお支えする者たちの

筆頭に立たねばならぬ。

筆頭に立つためには東宮様に

帝になっていただかねば

ならぬのだ。

わしが生きておればわしが立ち、

わしが死ねば道隆が立つ。

道隆が死ねば道兼かお前か、

道隆の子、小千代が立つ。

その道のためにお前の命もある。

そのことを覚えておけ」


「は…」



長兄の道隆は、

妹でもあり東宮の母でもある

詮子の様子を

伺いに来ていた。


「このまま父上と仲違いを

なさったままでは

東宮様のためにも

よろしくないと存じます」


「そんな説教をしに

兄上はわざわざいらしたの?」


詮子は冷たく返す。


「東宮様が即位なされば

外祖父である父上が

後見となられるのは

誰もが目するところ。

その父上と詮子様のお心が

すれ違っていては

懐仁様にとっても…」


「分かりきったことを

誰に向かって言っているのですか?

兄上は」


「分かっておられるなら

是非、父上と和解を」


だが詮子は即答する。


「嫌です」


道隆は固まった。


「兄上もご承知でしょうけれど

父上は先の帝に毒を盛り

ご体調をあしくして

譲位を迫られました。

私は…

父上の道具として入内したとはいえ

さきの帝は唯一の殿御。

そのいとしき夫に毒を盛った父を

私は生涯許しませぬ」


「お気持ちは分かりますが

全ては詮子様のためにも

東宮様のためにも

いいように進んでおります。

それは父上のお力ゆえに

ございます」


「父上には屈しませぬ。

私には裏の手がありますゆえ」


「裏の手…」


「兄上には申しませぬ。

裏の手ですから」


ニコリとほほ笑む詮子。


道隆は引き下がるしかなかった。



兼家は珍しく関白と、

左大臣と共に酒を飲んでいる。


「内裏ではこのようなことは

申せませぬが

帝の荘園整理令は

我らが3人の富を封ずるために

ございましょう」


関白の頼忠は普段は

声が小さいのに、

一際大きな声で言った。


「わざと狙っておられるのだ!

わしらの力をそぐために!

帝はわしなぞいなくてよいと

何かにつけてぞんざいに扱われる。

義懐ごときの前で」


「それこそが義懐めの策略。

負けてはなりませぬ」


兼家は頼忠を励ました。


「そうであるな!そうである!」


いつもより大声の頼忠に


「関白様、今日はお声が違いますな、

いつもと」


と驚く。


「兼家殿は東宮様の外戚の祖父。

まだまだ先は長いが、

わしなぞはもう…

嫡男の公任のことさえなければ

いつ死んでもよい気分じゃ」


「そのようにお気の弱いことで

どうされます。

我らの荘園は我らの手で

守らねばなりませぬ。

未熟な帝と成り上がりの

義懐ごときはねじ伏せれば

よろしいのです」


と、あくまで兼家は強気だ。


雅信も、続く。


「我々、源は権力には

固執いたしませぬが

帝のこの政策は見過ごせませぬな」


「全くだ!」


「我らの意見が合うのは

何十年ぶりでありましょう」


雅信は懐かしそうに言った。


「初めてやもしれぬな」


と、頼忠はわらう。


猫の鳴き声がした。


「小麻呂!小麻呂!」


と、倫子が猫を追いかけている。


倫子は父らに気づくと戻り


「失礼いたしました」


と頭を下げていった。


「ご無礼いたしました。

今のは我が娘、倫子にございます」


雅信が紹介した。


兼家は倫子の美しさに

目を留めている。


「おお…」


「ご挨拶もなくお許しください」


「麗しき姫君、

入内されるのかと思って

おりました」


そのことで兼家はずいぶん

気を揉んだのだ。


そもそも為時の娘、

まひろを倫子に近づけたのも

それを探りたかったからである。


「いやいやいや…

あのような礼儀知らずの娘、

入内なぞとても、とても…」


雅信は謙遜するのだった。


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序盤から倫子さまが

かっこよかった!


身分の差もあるがゆえに

どうしても女性たちの集まりでは

とくに普段から頭がよく、

そして少し皆とズレている

まひろは孤立しやすい。


茅子、しをりがまひろの

悪口を言いそうになると

倫子さまはしっかりと

それを制した。


これができるかどうかは、

とても大切なところで

ともすれば倫子さまは

まひろを男たちに

狙われかねない危険な場に

身代わりのように出させた

わけだ。


そのことに関して、

倫子さまはまひろに

とても感謝していたし、

あのときお互いの仲は

これまでより深まったはず。


可愛い後輩であり、

妹のようでもあり、

友人でもある。


そして姫達のリーダーたる

倫子さまがこうして、

まひろのことをいじめぬよう

皆に釘を刺すことによって

他の姫達も


「倫子様が認めてるなら…」


と引き下がることができる。


自分の父が左大臣であることを、

良いことに使っているのもわかる。



一方で倒れたまひろのところには

インチキ祈祷師がやってきて

コントのようなことを

繰り広げていたわけだが…


ただし、まひろのことを

いとは本気で心配しているし

この時代は呪詛や呪いが

信じられていたので、

こうした祈祷師も

重宝されていたはずだ。


だが、ドライな惟規や

当のまひろはバカバカしい、

と思っており惟規は

水など被りたくないし

まひろはふて寝してただけ。



為時がちゃんと向き合って

まひろに自分の思いを

話したのも印象的だが


「まひろは賢いから

わしに逆らいつつも

本当は分かっているはず」


という言葉からも、

彼女のことを評価しているし

信頼していることは

伝わってくる。


為時は頭の良いまひろよりも、

学問が苦手な惟規の将来のほうが

心配だったのだ。


道兼のことを告発などすれば、

兼家との関係はこじれる。


為時は兼家の引き立てが

あったとはいえ、

自身は学問に詳しく

実力はあった。


が、逆に言うなら実力が

あったとしたって、

引き立てがなければ

出世できなかったのだ。


それをまひろが男だったら

自分の力で上に行けるかも

しれない、と言っているのだから

まひろは為時よりもさらに

頭が良いのだと認めてすらいる。


実際のところ、

まひろも頭では理解は

出来ているはずだが…


心がそれを拒んでしまう。 


そしてその感情というのは、

実は為時にも考えが及ばないような

まひろの中に隠された


「許せないものの正体」


から来ているところが、

残酷であることが後半に

判明する。



藤原ロバート実資は、

花山天皇に表面上は

従っていても、

その傀儡となっている

2人には堂々と意見している。


花山天皇はおそらく、

頭は良いのだろうが

理想だけでは物事が

進まないことを、

実資は理解している。


若者が理想に走るのは

間違ってはいないが、

時には諌めるのが

周りの者の仕事なのに

ただ、持ち上げ称えるだけでは

良い帝にはなれない。


帝に言いつける、と

言われても全くひかない

ところは実資の強さと

矜持を感じられて、

ロバート秋山が…

カッコいい!!という

良いシーンだった。


しかし、こんなに強い

実資を呪いのジト目と

心の声で追い返した

宮中の女達っていったいw



花山天皇は相変わらず

女癖は治らないので

とくに妻への溺愛ぶりが

凄まじく…


愛されるのは幸せ、

ではあるだろうけども

ぶっ倒れるほどそんな

毎晩やられてたら

たまらんだろう…w



帝の義兄という立場になった

斉信の官位が上がらないことを

公任はからかっていた。


これは単に悪趣味なからかい、

というわけでもなくて…


要するに帝はそこから

人脈を広げる、

新しい世代を登用していく、

というところにまで

考えが及んでいないのだ、

ということ。


斉信は楽観的に今度の帝は

志も高くて良いじゃないか、

と語っているけれど

これはまさに実資が言ったように

そういう理想だけでは、

政治は成功しない、

ということだ。


周りに根回しをしたり、

味方を増やすことによって

自分の思いを遂げ、

民を救う。


それが大切なのだが、

花山天皇は理想ばかりを

追いかけてしまっている、

ということだろう。


ただ、斉信のほうも

公任の父、関白頼忠の

時代も終わりだ、

と手厳しく返している。


そして道長はというと、

あたふたしている

行成とは違い、

ぼんやりそれを聞いてるだけ。


そんな道長のことは

以前から公任も斉信も

嫌ってはいないのだが、

道長が怖いな、と思うのは…


「物事のあらましが

見えている」


ということに尽きる。


ある意味、いつも達観していて

だからこそ後に父の兼家に


「誰が帝でも同じ、

支える人が誰かが大事」


とあっさり答えているのだ。


だが、友人たちの前で

こんなことは言わない、

皆の意見を優先している、

それが道長である。 



しかしこの若者たちが

ときにはこうして

文句を言い合いながらも

斉信が最後に言ったように


「俺たちが争うよりも

手を組んでいたほうがいいんだ」


というのも本音なのだろう。



実際、帝と取り巻きの

横暴がひどくなってくると

あんなに権力争いをしていた

関白、左大臣、右大臣…


頼忠、雅信、兼家は

酒を酌み交わして

自分たちの荘園を守らねば

ならない、と結束している。


雅信はさほど権力そのものに

興味はないというか、

ないわけではないが

入内の件も倫子が嫌がれば

やめておく、

程度の野心しかないが…


それでも自分の荘園まで

帝に没収されてはたまらない。


年をとってもイケイケな

兼家のことは実は雅信も、

頼忠も認めていて、

どこかで頼りにしている。


この微妙な関係性こそが、

彼らを切磋琢磨させて

きたのだと思う。


この老獪な政治家たちも、

公任、斉信、道長らが

そうであるように、

青春時代にはきっと

彼らのように共に競い、

そして笑い合った時代が

あったのかもしれない。


どこかで誰かを蹴落とし、

誰かが上に立つ。


それでも相手は生かさず殺さず、

いざとなればお互いが

協力できるような関係性は

維持しておく…


政治家に大切なのは


「力」


なのであって、

それは時には「他者の力」も

使えねばならないわけだ。



光る君への視聴率が

ふるわないことに関して


「戦闘シーンを入れろ」


という馬鹿な意見があるが

的外れすぎる。


去年は去年で


「このドラマは戦闘シーンで

ごまかしていて、

政治が描けていない!」


とか批判されてたのに。



戦国時代というのはそれこそ、

幼い頃、仲がよかった

氏真と家康がいくさになってしまう、

そのわかりやすい決裂に

ドラマがある。


平安時代はそう簡単に、

武力という手段は取らないで

男同士のいくさを制していく

面白さがある。



公任、斉信、道長らが

この父親たちのように

老獪になっていくのか、

道長は独自の道を歩み

皆の頂点にたてるのか。


この権力争いが見どころなので

戦闘シーンを入れるなどという

むやみなテコ入れはいらない。


刀伊の入寇あたりで、

戦闘シーンは入るだろうし

よく伝わる平安時代の

鬼退治の話なども

このドラマなりの解釈で

入れてくるかもしれないから

それ以上増やす必要はないだろう。