光る君へ第4回あらすじ&感想前編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第4話「五節の舞姫」前編



ついに再会を果たした

まひろと道長。



散楽の一員輔保が、


「またのお越しを〜!

またのお越しを〜!

ありがとうございます」


と客に声をかけ、

直秀が


「6日後だよ、6日後!」


と言っている。


まひろと道長を無視している

直秀にまひろは詰め寄った。


「ちょっと…アキの人!

謝ってよ。

この人はあなたに間違えられて

獄に入れられたのよ」


「べつに俺は悪いことはしてない」


直秀はそう開き直る。


まひろは抗議する。


「でも追われていたでしょう?」


「放免に追われるやつは

皆、悪いやつなのか?」


話にならない。


道長が怒るまひろを止めた。


「もういいよ、すぐ出て

こられたんだし」


ほら見ろ、とばかりに直秀は


「フッ。また見に来いよな」


と言い残すと去っていく。


「あの人はなぜ三郎が

許されたことを知っていたのかしら?

なぜ私に知らせに来たんだろう…」


「え?知らせに来たとは

何のことだ?」


まひろは屋根の上から

直秀が三郎の無事を

教えてくれたことを話す。


「屋根の上?」


「そう、無事だと言った途端、

消えちゃったの。

親切な人かと思っていたけど

三郎に謝りもしないのは

腹が立つ」


道長は淡々と


「すぐ怒るんだな」


とまひろを見る。


「三郎のために怒っているのよ」


まひろは呆れたように言い返すが

道長は気にしていない。


「そのことはもうよいと

言っただろう。

高辻富小路の絵師のところに行って

まひろという女子がここで

代筆をしていないかと聞いたが

言いがかりだと追い出された。

代筆仕事をしているというのは

偽りだったのか?」


父に止められた、

とも言いづらいのかまひろは

頭を下げた。


「ごめんなさい。

また作り話をしてしまったわ。

あそこの代筆仕事は

男の人がやっていたの」


「ふ〜ん…。

よく怒り、よく偽りを言う女子だな」


道長はまひろをまじまじと見る。


「あの日、お前は男の声で笑い

男の声を出していたと言った。

代筆仕事の男はまひろであろう」


どこか抜けているようで、

鋭いのが道長だ。


まひろはバレてる…と目を

そらすと道長は笑った。


「偽りに偽りを重ねておる」


と言いながらも楽しそうだ。


「三郎だって偽りを言ったじゃない」


まひろは道長の隣に座る。


「絵師のところに行く。

何度でも行く。

会えるまで行くって言ったくせに

一度しか行かなかったじゃない」


とまひろはすねた。


「あっ、なぜそれを知っているんだ?」


「えっと…」


答えに詰まるまひろに、

道長はまた笑った。


「俺はまひろのように

むやみには怒らぬ。

慌てずともよい。

それより…いつもと違う

今日の身なりは

もしや帝の落としだねという話は

まことなのか?」


道長はいつもより綺麗な

着物を着ているまひろに尋ねる。


「偽りに決まってるでしょ。

私はいまだ六位で何年も

官職につけない藤原為時の娘」


そうか…と道長は頷いている。


「今日は和歌の会があって

このような格好をしているのだけど

藤原でもず〜っと格下、

だから気にしないで」


道長のことを平民だと

思いこんでいるまひろは、

そう言った。


道長は気まずそうに笑う。


「まひろ、俺のこと

今度会ったとき話すと

約束したの覚えているか?」


「覚えてる」


とまひろは頷く。


道長は改めてまひろに

向き合った。


「答えるよ。

俺は…」


道長が喋りかけたところで


「まひろ!」


と呼ぶ男の声が聞こえた。


親戚の藤原宣孝である。


「随分と大胆なことを

やっておるなあ。

外出は禁じられておると

聞いておったが」


それどころか外で男に

会っていた、などと知れば

また為時が怒るだろう。


「宣孝様」


宣孝は意味ありげに道長を見た。


「お前は誰だ?」


「あ…」


「この人は私が飛ばしてしまった

履物を拾ってくれたので

今お礼を言っていたんです」


「おう、そうか」


宣孝は笑いながら道長を見る。


「世話になったな」


「は…」


と、道長は目をそらした。


「私ももう帰ります」


まひろが言うと宣孝は


「送っていこう」


とさそった。


まひろは追いかけながら

話を逸らすように


「今日ね、散楽というものを

見たんだけど大層面白かったので

また次も見に行こうと思うの。

次の散楽!」


と道長に聴こえるように

わざと叫ぶように言う。


まひろの気持ちがわかっている

宣孝は飄々と


「そんな大きな声を出さんでも

聞こえる」


と言うとまひろを馬に乗せて、

帰っていく。



道長が思案しながら

歩いていると


「もう散楽には来るな」


と、塀の上から直秀が

声をかけてきた。


「先ほどまた来いと言ったのは

お前であろう」


「気が変わった。

娘の心を弄ぶのはよせ」


「娘とは誰だ?」


「とぼけるな、藤原為時の息子だ」


「ああ」


道長の正体を知っている直秀は

はっきりと伝える。


「手を引け。

右大臣家の横暴は

内裏の中だけにしろ」


怒らない道長でも、

ムッとした様子で

すぐに切り返した。


「そういうことは

散楽の中だけで言え」


散楽の暴言も笑って

許しているのは、

それが民の楽しみだと

道長が理解しているからだ。


直秀は一本取られた、

といった感じで笑い、

塀から下りて消えた。


「そういうことは

散楽の中だけで言え」


百舌彦が道長の真似をして

かっこつけて言う。


べつに本気で怒ったわけじゃない

とばかりに道長は持ち前の

観察力で気の抜けた声を出す。


「あんなとこに座っておったら

尻が痛かろうに」



宣孝に連れられてまひろは

帰宅する。


太郎の乳母をしていた

いとが出迎える。


「宣孝様、おいでなさいませ。

姫様もご一緒で」


「ああ、そこで出会うたので

少し話をしておった」


「お姫様のお帰りが遅いので

殿が先にお戻りになられたらと

案じておりました」


まためんどうな小言を…


といった感じでまひろが睨むと

宣孝はさりげなく庇ってやった。


「ああ引き止めたのはわしじゃ。

すまぬ、すまぬ」


しかしまひろとふたりきりになると、

珍しく宣孝は真剣な顔で言った。


「今日のことは父上には

言わぬゆえ、あの男には近づくな」


宣孝は平民の三郎と、

まひろは釣り合わない、と

言っているのだと思い


「身分とはとかく難しいもので

ございますね」


とまひろは声を落とした。


「貴族と民という身分があり

貴族の中にも格の差がある」


「しかしその身分があるから

いさかいも争いも起こらずに

済むのだ」


少なくとも当時の人々は

そうであった。


あの散楽などもあくまで

民の戯れであるからこそ

許されているのだろう。


「もしもそれがなくなれば

万民は競い合い、

世は乱れるばかりとなる。

帝が退位され東宮様が

即位されれば

為時殿にもいよいよ

日がさしてこよう。

大事な時だ。

父上に迷惑がかからぬように

せねばな」


まるで父のように言う宣孝に

まひろは問いかけた。


「私は迷惑な娘でしょうか」


「そのように聞かれると、困るな」


さすがに宣孝も苦い顔になる。


「母上を殺した咎人を

突き止めることなく

私に間者になれという

父上のほうがおかしいと思います」


さすがに宣孝も為時が

そこまでしたたかに

動いているとは知らなかったのか


「間者になれと…どういうことじゃ?」


と尋ねた。


まひろはここぞとばかりに


「左大臣家の姫たちの集いに行き

一の姫の倫子様が東宮様に

入内されるお気持ちがあるのかどうか

探ってこいと言われました」


と訴えかけた。


宣孝は飄々としているが

優しい人である。


「なんと…」


「学問とは何のためにあるのでしょう。

論語も荀子も墨子も人の道を

解いておりますのに、

父上はその逆ばかりなさっています。

誰よりも博学な父上なのに…」


そのまひろの言葉には、

いまだに父のことを

敬愛するがゆえの嘆きが

こめられていた。


だが、宣孝は人の世は

そうした理想のようには

いかないことも知っている。


「それは父上も人だからじゃ」


まひろを座らせると、


「それでそなたは間者になることを

断ったのじゃな」


と確認した。


ところがまひろの答えは

反対である。


「いいえ」


「え?」


さすがにまひろも、

情けなさそうに声をあげる。


「自分でもよく分かりません

父上には震えるほど

腹は立つのに

倫子様という左大臣家の

お姫様には興味があって…」


しかしその矛盾した気持ちこそ、

為時とて同じはずなのだ。


「なるほど。

それもまひろが人だからじゃな」


「私はどうしたらよいのでしょう…

父上と私がこれからどうなるのかと思うと

時折、胸が苦しくなります」


まひろの目には涙が浮かんでいた。


「でも分かることも

許すこともできません」


その強さこそが、

まひろでもある。


「何にせよ思いが屈したら

わしに吐き出してみるがよい。

よい策が見つからずとも

心の荷を軽くするぐらいは

できよう」


さすがに宣孝は大人だ。


そう言ってまひろの肩を叩き、

帰っていった。



「弄ぶ…」


そのようなつもりはなかったのに、

と道長は苦しそうに、

額に手を当てていた。


「どうしたの?浮かない顔ね」


と、詮子が声をかけた。


「ああ…さようなことは

ございませぬ。

少し考え事をしておりました」


「あっ、分かった。

下々の女子と縁を切ったのね」


「そういう者はおりませぬ」


詮子は周りの耳を気にして、

道長に近づくとこっそり聞いた。


「ねえ、帝のご譲位の日取りは

いつ決まるの?

決まったら内裏にご挨拶に行こうと思うの。

どう思う」


「どう思うとは…」


めんどくさそうに

道長は聞いた。


「何よ、その切り返し」


「姉上、私にどう思う?と

お聞きになるのはおやめ

くださいませ。

既にお心はお決まりでしょう」


詮子はそれでも背中を

押して欲しかったのだ。


「意地悪、もうよい」


詮子は怒って去った。




安倍晴明が占いを行っている。


夜を徹して行われた占いで

円融天皇の退位と、

新しい帝の即位の日が決まった。


そして次の東宮も。



「東宮様は懐仁親王様ですって」


「帝のただお一人の皇子だものね、

順当よ」


「大っ嫌いな詮子様の生んだ皇子だけどね」


「誰が産んだって我が子は我が子よ」


「ご譲位、ご即位、忙しくなるな」


相変わらず宮仕えの女たちは

噂話に花を咲かせている。




「お呼びでございますか?」


藤原実資は新しく帝になる

師貞親王に呼び出されていた。


「藤原実資、私が帝になった後も

今のまま蔵人頭を務めてほしい。

そのつもりでおってくれ」


実資が有能であることは、

親王の耳にも届いていた。


「恐れながらそれは

お許しくださいませ」


実資は淡々と断る。


「あ?」


「御代がお代わりあそばせば

蔵人頭も交代するは内裏の

習わしにございます」


「煩わしい習わしなど無用」


親王は現実的だった。


「私は関白も左大臣も、

右大臣も信用しておらぬ。

ゆえにこの者らを傍らに置く。

義懐の叔父上と我が乳母子の惟成、

ずっとわしに学問を授けてくれた為時。

それにお前だ」


親王は自分の粗暴な振る舞いにも

じっと耐えながら熱心に

学問をおしえてくれていた

為時のことは本当に評価していたのだ。


ゆえにこの場に、

為時も居合わせている。


そして実資は円融天皇の元でも、

誰にも臆することなく

意見を言える実力者である。


「右大臣にこびぬお前に

傍らにいてもらいたい」


親王からしてみたら、

正当な評価を与えているはず。


しかし実資は言った。


「辞退いたします」


さすがに場が凍りつく…


「実資殿、わしも蔵人頭を務める」


義懐がべつに何も考えず

しきたりを、破るわけでは

ないことを伝えた。


「2人でお上をお支えいたそう」


だが実資はさらに先ほどよりも

大きな声で


「辞退申し上げます」


と頭を下げた…。


これが実資という男なのだ。


「このありがたいお申し出を

お断りするとは

天罰が当たっても知らぬぞ」


義懐が脅すように実資を

説こうとするが、

親王は


「う〜!」


と癇癪を起こす。


「なぜじゃ、なぜじゃ、なぜじゃ!

なぜじゃ、なぜじゃ、なぜじゃ!」


こういうこともよくあるのか


「東宮様、お静まりを」


と、為時がなだめる。


「親王様、実資殿は必ず説き伏せます」


義懐もそう言ったが…


親王は


「叔父上、叔父上…」


と、泣きついた。


抱きついてくる甥である

親王を笑いながら


「はいはい」


となだめようとしたが…


「あっ!あ〜っ!」


親王はなぜか義懐の烏帽子を

剥ぎ取った…


「お前もじゃ!」


惟成もなぜか烏帽子を

取られていた。


当時、かぶり物を取られるということは

今で言うなら下着を脱がされたと

同じ感覚の恥辱であった。


このような帝もなかなかいない、

いや、まず、いないだろう…


人前でなぜか他人の下着を

剥ぎ取って回るわけなのだから

明らかにどうかしている。


為時も実資もさすがに

苦い顔でその嬌態を見つめるしかない…。



「この度はまことに

おめでとうござりまする。

何と言っても東宮は

御孫君におわし

右大臣兼家公のお支えがあれば

東宮のご隆盛は明らか。

末永く栄えられましょう」


「にぎわっておるのう」


藤原文範と源雅信が

兼家に声をかけている。



左大臣の源雅信は、

心中には複雑なものがあった。


というのも娘の倫子を

新しく帝になる師貞親王に

入内させるかどうかを、

悩んでいたからだ。



「おお。倫子、次なる帝に

入内する気はないか?

右大臣、藤原兼家が

東宮の外戚となれば

その力は嫌でも増すであろう。

私が隅に追いやられないように

するためには

倫子が新たな帝に入内するのが

一番なのであるよ」


とは言いつつも、

倫子のことが可愛くて

仕方ない雅信は無理強いを

するつもりもない…


倫子は猫を抱きながら

黙っている。


妻の穆子があきれたように


「今更、何を仰せになりますの。

わしは倫子を自分の出世の

道具にはしない。

入内はさせないと仰せに

なったではありませんか」


と意見した。


「ん〜…」


雅信は苦い顔になる。


「父上、次の帝はあの女子好きで

名高い東宮様でございましょう?」


「ん〜…」


「入内して幸せになれるのかしら。

帝のお心を失って

東三条殿にもお下がりに

なられた詮子様のようには

なりたくはございません」


「ん〜…そうであるな…

されど即位をすれば

お人柄は変わるやもしれぬ」


倫子と穆子は黙って

微笑んだ。


「…ということはないか」


2人に見つめられ


「ないな。

ああ、すまぬ、いまのは

すべて父の独り言であった。

忘れてくれ。

穆子、酒を持て、酒だ酒」


結局、雅信にとっては

己の栄達よりも娘のほうが

大事なのであった…



その夜、雅信の土御門殿に、

忍び込んだ者達がいた。


黒い装束を着て塀に

駆け上がった男は、

あの直秀だった。


直秀に導かれ男たちは

価値のありそうなものを

次々と盗み出していた。



昨夜、そのようなことが

ありながらも倫子は

おっとりしたもので


「昨夜、この屋敷に盗賊が

入ったそうですよ」


と姫たちに告げる。


「え〜!怖いわ…」


「見事なまでにやられたそうです。

警固の者も大勢いたのに

誰も気付かずごっそりと」


皆が悲鳴を上げる。


赤染衛門が


「汚らわしい盗賊のことなど

姫様がみだりに口にされては

なりません」


と注意する。


まひろは少し興味深そうに


「盗んだものを売りさばいて

貧しき民に分け与える

盗賊もいると聞いたことが

あります」


と皆に語った。


「まひろさんは何でそんなことを

知っているの?」


「辻で人々が話しているのを

聞きました」


姫達の一人、肇子が


「そんな所に行くの?」


と驚く。


ほとんどの姫達は、

こうした会合くらいしか

外出の機会はないのだろう。


「辻も歩けば馬にも乗ります」


まひろからしたら当たり前なのだが

こうした場では浮いてしまい、

他の姫達が引いてしまいそうな

発言でもある。


皆が静まりかえっている。


「馬にも乗るの!?

盗賊みた〜い」


と倫子が茶化すと、

姫達も笑った。


「盗賊のお話はそれまで!」


と赤染衛門がピシャリと

制した。


「今日は竹取物語について

お話ししましょう。

かぐや姫はなぜ5人の公達に

無理難題を突きつけたのでしょう」


しをりが答えた。


「誰のことも好きではなかったから…

かしら?」


まぁ、当たり前の回答である。


まひろは変わったことを言った。


「かぐや姫には

やんごとない人々への怒りや蔑みが

あったのではないかと思います。

帝さえも翻弄していますから」


「恐れ多いことねえ」


倫子が驚く。


このような独自の解釈は、

なかなか聞いたことがない。


「身分が高い低いなど

何ほどのこと?

というかぐや姫の考えは

まことにさっそうと

していると私は思いました」


自分なりのかぐや姫への

見方を披露して

にこりとするまひろだが、

一堂が静まりかえる…


「まひろさんは私の父が

左大臣で身分が高いということを

お忘れかしら?」


チラ、と倫子がまひろを見た。


さすがにまひろもしまった、と

思い目を丸くする。


が、倫子はすぐに


「ほんのざれ言!」


と笑ってくれた。


「皆様、そんなふうに

黙らないでくださいませ」


倫子の怒りを恐れていた

他の姫達も笑い始めた。


さすがにまひろは


「申し訳ございませんでした」


と深く頭を下げた。


世間知らずでどうしても、

失敗してしまうまひろだが

倫子はこうしてうまく

時々、釘を刺しながらも

まひろが皆からいじめられないよう

庇ってくれているようでもあった。



兼家の屋敷では

藤原道隆が父の兼家に


「我が家の運も開けて

まいりました。

父上、おめでとうございます」


と、祝いを述べている。


「おめでとうございます」


次兄の道兼も頭を下げた。


道長は何か釈然としない

顔を浮かべながらも、

頭を下げる。


「次の帝をどうやって

素早く退位させるか

それが一番難しいところだ。

お前たちも知恵を絞れ」


「はっ」


と3人は答える。


「返事だけでは駄目だ。

道隆、よい案はないか?」


「ちまたに帝は無類の女好きで

人の道をわきまえず

このままでは国が滅びると

うわさを流します。

その手はずは整っておりますので

ご即位あらばすぐにも」


「そ…それだけか」


兼家は不満そうに言う。


そんな噂はとっくに

流れており、

兼家だって知っていることだ。


「道兼はどうじゃ」


「次の帝の御代でも

私が蔵人になれば

帝のおそば近くに仕え

お気持ちをとらえるように

努めます。

帝のお力不足は見えて

おりますので、

それとなくご譲位なさったほうが

お心のためだとささやきます」


「お前が蔵人に再任されるよう

計ってみよう。

頼んだぞ、道兼」


道兼は笑顔になり


「はは〜っ!」


と頭を下げた。


まさか道兼が円融天皇の

退位に関わっていたことは

道隆も道長も知らない。


「息子たちが3人そろうことは珍しい。

今宵はうたげといたそう」



散楽の場にまひろが走っていく。


「帝には何人ものキサキが

ましました。

中でも父の身分が高い

アキとハルが帝の寵愛を

競い合っていましたが…」


輔保が語っている。


まひろはあたりを見回す。


当然、道長を探しているのだ。


「嫉妬にくるうアキ」


と、詮子を揶揄する劇が

始まっている。


「アキでございます」


滑稽に立ち回るアキ役の

直秀はちらっとまひろを見た。


まひろは心の中で


なぜ来ないの?

あの時、伝わらなかったの?

身分なぞいいのに…


と思い悩んでいた。



道長はうたげになど

参加したくなさそうに、

廊下で立ち止まっていた。


「どこへ参る?」


と道隆に尋ねられて


「ああ…かわやへ」


とごまかした。


「今宵はお前も残れ。

出ていくことはならぬ。

我が家の結束のためじゃ、

よいな」


「は…」


と、答えながら道長は

辛そうな顔を浮かべた。




「あいつ来なかったな」


「う〜ん…」


寂しそうなまひろに、

直秀が声をかけていた。


「これから散楽の仲間と飲むんだ。

お前も一緒にどうだ?」


「面白そう」


「姫様!」


乙丸が慌てて止めた。


「お姫様じゃ無理か、

じゃあな」


と直秀は去る。


ここでも身分か…と

まひろは悲しそうだった。




夕刻…


詮子は鏡を見ながら、

帝を待つ。


扉が開き円融天皇が

姿を現した。


「何事じゃ」


「お上、長らく玉座にあって

成し遂げられたご善政の数々は

世の末までも語り継がれることで

ございましょう。

それらに際し多くのご苦難が

あったこと心より

おいたわり申し上げます」


帝は近づく。


「お上と過ごした内裏での日々は

私にとっても…」


「黙れ」


帝は冷たく言った。


「朕に毒を盛ったのは

お前と右大臣のはかりごとか」


毒?そんな話は聞いたことがない…


詮子は不思議そうに

帝を見つめた。


「何もかもお前の思うとおりに

なったな。

懐仁が東宮となるために

朕は引く。

なれどお前のことは生涯許さぬ。

二度と顔を見せるな」


「お上、何のことを

仰せなのか分かりませぬ」


「去れ!」


帝が扇子を投げつけると、

詮子の顔に当たり

血が滲んだ…


「人のごとく血なぞ

流すでない。

鬼めが」


そう言うと帝は立ち去った。


詮子は全てを理解した。


帝から遠ざけられたのも、

帝が退位せねばならなくなったのも…


娘である詮子が帝の子さえ

なせばそれを東宮にし、

さらに栄達を得ようとする

父、兼家のせいだったのだ。



「父上!」


詮子は恐ろしい形相で

宴を楽しんでいる

兼家のもとへ向かった。


「おお、詮子様」


娘であるとはいえ、

前の帝の妻である。


兼家は他人のように声をかけた。


「帝に毒を盛ったというのは

まことでございますか!」


兼家はとぼけたふりをし、

道隆は驚いて父を見つめ、

張本人である道兼は

あっと口を開けて父を見る。


道長もまさかそこまで…?と

兼家を見た。


「父上!」


「一体、何事で?」


兼家はしらを切る。


「帝と私の思いなぞ

踏みにじって前に進むのが政。

分かってはおりましたが、

お命までも危うきにさらすとは…」


「何を仰せなのか分かりませぬな。

お命とは誰のお命のことで

ございましょう」


「下がっておれ」


と道兼が声をかけ道隆は


「詮子様、大きく息をなさいませ、

大きく」


と詮子を落ち着かせようとしたが


「離せ!」


と詮子は振り払った。


「懐仁のことももう父上には

任せませぬ。

私が懐仁は守ります。

そうでなければ懐仁とて…」


「詮子様」


道隆が声を掛けるが、

詮子は無視して続ける。


「いつ命を狙われるか…」


「詮子様、お口が過ぎますぞ」


「兄上は何もご存知ないのですか!

嫡男のくせに!」


その通りではあった。


道隆は知らなかったのだ…


「兄上はご存知なの?

道長!」


「薬師を呼びます」


困った道兼が言う。


「要らぬ!

薬など生涯のまぬ」


詮子は出ていった。


兼家は他人事のように


「長い間の独り身ゆえ

痛ましいことだ…」


とまるで詮子が急に

頭がふれたかのように言った。


道長は抗議の目を向けるが

兼家は気にしていない。


「これからは楽しい催しなどを

考えて気晴らしをさせて

やらねばならぬな」


突然、父親に戻ったかのように

白々しく言う兼家。


「飲み直そう、興が冷めた」


「父上」


道隆が進み出た。


「存じ上げなかったとはいえ

今、事情はのみ込めました。

詮子様にはお礼を申さねば

なりませぬな。

これで父上と我ら3兄弟の

結束は増しました。

何があろうと父上を

お支えいたします」


涼しい顔で言ってのける

道隆に兼家は頷いた。


続いて道兼も頭を下げた。


道長も嫌々ながら、

頭を下げたが…


父を見る目には怒りが宿っている。


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まひろと道長の再会は

ドラマチックではあったが、

道長のほうは明らかに

自分の身分のほうが高いことは

分かっている、

しかしまひろのほうは

自分のほうが身分が高いと

思い込んでしまっている…


そのため微妙に噛み合わない

ところが面白い。


そんなところに現れた宣孝は、

うまくまひろを道長から

引き離しながら、

身分差のある恋が危険なことを

諭そうとする。


宣孝はまひろが父のことを

心から嫌いなわけでもないのは

わかってもいるのだろう。


そのうえでまひろが抱いている

複雑な思いにも理解を示している。


大人の男性らしい優しさが

宣孝には備わっており…


まひろはおそらく

父親とうまくいかないことで

どこかで父性を求めている面は

あると思うので、

親戚のおじさんとはいえ

今後の二人の関係も

注目である。



実資はあの女性陣からの

鋭い目線と呪いの言葉により

帝の毒の調査は撤退したものの

師貞親王の誘いを断固として

断るなど非常に高い理想を

持っていることがわかる。


癇癪を起こした親王が

烏帽子取りすなわち、

パンツ脱がしまつりを

始めたが、

まぁ、イケメンなので

良いだろう。


「フッ…俺の前では

全て脱ぎ捨てちまえよ…!」


ってことだ。



倫子さまは相変わらず、

本気でおっとりしているのか

したたかなのか

わからないところがあり、

そこが魅力的でもある。


左大臣の源雅信は、

欲を言えばその倫子を

師貞親王の妻に…


という思いもあるけれど

幸せになれるのかしら?

などと倫子に問われると、

すぐに諦めている。


本当に娘が可愛くて

仕方ないのだろう。


右大臣の兼家とは、

大きな違いでもある…


左大臣のほうが位としては

ひとつ上なのだが、

こういう天然な感じの雅信と

娘を利用してでも

のし上がりたい右大臣兼家が

正反対の性格なのも面白い。


女子勉強会の場では、

いつものごとくまひろは

すぐに失言をする。


「盗賊みたい!」


とか


「私の父上が身分が高いことを

お忘れかしら」


と、倫子さまは釘を刺しつつ、

いつもその後に笑ってくれるから

他の姫達もまひろを

いじめることなく、

面白い子、くらいで収めて

くれている。


こうしたまひろに対しての

扱い方は姉のようでもあり

ヲタ気質でつい

失言してしまうまひろを

時には厳しくしつつも、

すぐに和やかな雰囲気へと

場の空気をコントロールして

くれている。


こういう倫子さまだからこそ

まひろは憧れるし、

他の姫達も慕っているのが

よくわかる。


まひろが女子会で失敗するのは

もはやお約束のようだが、

そこを外さない、というのも

ドラマとしてはかなり大切な

部分だろう。


安心して、失敗を楽しめる…


いや、倫子さまの反応に

ハラハラはするけどw




左大臣家の倫子さまが

これほど父親や周りの者に

好かれているのに、

詮子はこういう時代とはいえ、

こうまで父親に翻弄されるのは

かわいそうではあった。


しかし…元々、

権謀術数の使い手である

父の兼家よりも、

恐ろしいのは普段は

優しくて冷静な長兄、

道隆のほうだろうか…


嫡男なのに帝に

毒を盛っていたことすら

知らないのか!


という言葉にはひそかに

プライドが傷ついたろうし、

弟の道兼のほうがそれを

知っていたとわかれば

良い思いもしないだろう。


様々なことを飲み込んだうえで、

妹を利用し帝に毒を盛るまでして

退位に追い込んだこの計画を、

兼家含めて兄弟3人も、

共有したことで


「結束が強くなった」


と言ってのけた。


よく犯罪者が罪をおかして

しまうほどに犯罪組織を

抜けられなくなるのと

同じことで…


秘密を知ったからには

抜けることは許されない…


そんな負の結束である…


これをあんなに涼しい顔で

言ってのけるほどに、

本当は暗い野望を秘めている

のだとしたら、

兼家よりも将来恐ろしい

存在になるかもしれない。


花山天皇が剥ぎ取ってたのは

烏帽子ではなく「冠」と呼ぶ

そうです。


教えてくださった方、

ありがとう!