光る君へ第3回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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家庭菜園、ゲーム、アイドルなど趣味の話題や、子育て、介護関係のことをつらつらと書いています。

光る君へ

第3話「謎の男」後編




道長が庭で幼い女の子と

追いかけっこをして

遊んでやっている。


逃げる道長だが、

女の子は転んでしまった。


「あっ」


起こしてやろうとする道長。


「道長様」


兄、道隆の妻である

高階貴子が止める。


「定子、自分でお起きなさい」


定子と呼ばれた女の子は

ゆっくりと起き上がった。


貴子は微笑む。


「偉いわ、定子」


「さすが義姉上」


詮子が褒めた。


「貴子は利口な母なのです」


と、道隆が誇らしそうに言う。


「私の自慢の妻ですから」


幸せそうな道隆に


「あらま」


と詮子も笑う。


定子と詮子の息子、

懐仁が遊び始めた。


「今はこうして姉弟のように

遊んでおりますが懐仁親王様が

帝に即位されたなら、

定子を入内させるつもりです」


いとこ同士なのだが、

そうした結婚は珍しくなかった。


「何にも動じぬ強い心を養わねば

帝の后にはなれません。

転んで泣いているようでは」


貴子の厳しい育て方もあって

定子はしっかりした女の子に

育っているようだ。




安倍晴明が邪気祓いの

報告に兼家のもとへ来ている。


「邪気ははらいましたが

背負われたお荷物が

重すぎますゆえ

一番重いお荷物を下ろされたら

よろしいのではと

先ほど奏上つかまつりました」


つまりは帝に譲位したほうがいい、と

暗に伝えてきた、ということだ。


「追って褒美を遣わす」


と、兼家は礼を言う。


兼家が去ると晴明は

従者の須麻流を見て

ニッと笑った。


陰陽師…と言っても

こうして政治的な場面では

その力を利用しながら

生き残りをはかっているのも

またこの時代であった。



円融天皇は気落ちしている。


「荷を下ろせ…

安倍晴明まで譲位せよと

申すのか」


実資が憤る。


「そのようなこと申しておりませぬ!」


「何を怒っておるのじゃ」


「お上はまだお若く

ご回復されればますます

お力を発揮してくださると

皆、信じておりまする。

どうかご譲位なぞお考え

あそばしませぬよう

お願い申し上げまする」


「お前の心は疑わぬが

皆がそうとは限らぬ」


帝なりに周りの者達が、

次の天皇をと考えていることは

感じているのだ。


「そのようなお気の弱いことを…」


「こたびの邪気ははらえても

またすぐに朕を呪う者の

新たな邪気にさいなまれる」


「その時はまた邪気ばらいを

させればよろしゅうございます」


円融天皇はあえて、名を出した。


「右大臣のしてやったりの顔が

見えるようじゃが

懐仁はたった一人の我が皇子。

ほかの皇子に東宮の座を取られては

朕の血筋は絶えてしまう」


右大臣、兼家の娘である

詮子を遠ざけたのは帝自身だが、

懐仁親王が息子であること、

後を継がせたいことには

変わりはないのだ。


「懐仁を次の東宮にしたい。

その一点において

朕と右大臣の利害は

一致しておるのじゃ」


これが兼家の恐ろしい

ところであった。


「恐れながら師貞親王様が

今すぐ次の帝におなり

あそばせば世は乱れまする」


と実資は心配した。


現在の東宮、

師貞親王がよほどの変わり者

であることは広く知れ渡って

いたからである。



その師貞親王は相変わらず

扇子を足で挟みながら


「ほれ…ほれ…ほれ」


と遊んでいた。



そんなところが想像できるようで

円融天皇も顔をしかめる。


俊古が声をかけた。


「疑わぬ様がお見舞いに

お見えでございます」


ぬけぬけと…とばかりに

実資は告げた。


「今はまだお加減がお悪いゆえ」


しかし円融天皇は


「会おう」


と言う。


「お上!」




兼家は御簾の向こうの

円融天皇に恭しく頭を下げる。


「お体ご回復に向かわれていると

いうことホッといたしました」


「ようやく晴明の祈祷が

効いてきたのやもな」


「褒美を取らせましょうか」


帝自身、これが本当の邪気のせい、

などとは感じていないのか


「急に悪くなったり

よくなったり、

おかしなものだ」


と探りを入れるように言う。


「お働きが過ぎてご無理が

たたったのかもしれませぬな」


話を変えるように、


「懐仁はどうしておる」


と円融天皇は尋ねる。


詮子が東三条殿へ下がる、

と告げた時に懐仁は自分が

育てるから置いていけ、

と命じた帝だあったが

結局は体調が優れず、

詮子に預けるしかなかったのだろう。


つまりは懐仁は、

兼家の手の中なのだ。


「女御様が片時も離れず

お世話をしておられます」


女御様、などと言うが

娘の詮子である。


もっとも、詮子も父に

利用されまいとしているので

全てが兼家の思い通りではないが。


「そうか…あまり甘やかすなと

伝えてくれ」


「東宮になられましたら

もう少しお強くなられましょう」


兼家は核心をついた。


「懐仁が東宮になるのか?」


「それがお上の願いであり

この国の願いであると

思っております」


実資にも話したように、

この点において帝と兼家は

利害が一致しているのだ。


円融天皇は黙るしかなかったわ



(頭中将様いけ好かない)


(私たちを疑うなんて

無礼極まりないわ)


(無礼、無礼、無礼…)


(己の立場を誇示したかっただけよ)


(嫌なやつ〜)


陪膳の女房たちを調べに

回っていた実資だったが、

後ろからぞろぞろ歩く、

女たちに背中へと鋭い視線を

向けられながら、

肩身の狭い思いをしていた。


女達の心の声が聴こえるようで

どうにも調査どころではない…



「いかがされましたか?」


「内侍所の検分は

私の勘違いであったやもしれぬ」


実資はそう道兼に答えた。


あの女達の圧力の中では

誰かを疑ったりしたら

とんでもないことになりそうだ…


「検分はもう終わりになさるのですか?」


「ああ、お上は次第に回復されておる。

毒を盛られておいでならもっと

どんどんお悪くなるはず。

私の早とちりであった」


道兼は実資に悟られぬよう、

安堵している。


「とにもかくにもお上に

回復の兆しがあるのは

よろしゅうございました」


「女房たちの憤りもただならぬ。

これからやりにくくなるな…」


と実資は本音をこぼす。


道兼は笑顔で実資を褒めた。


「頭中将様は筋の通ったお方。

私はどこまでもついてまいります」


兼家からは実資は味方に

しておきたいと言われているし、

道兼から見ても実資は、

嫌いな男ではない。


「あ、そ…」


女達の圧力に負けたせいか、

ばつが悪そうに実資は返事をした。



道兼が外に出ると、

道長が歩いている。


「おう、ご苦労」


「は…」


「変わったことはないな」


道長が連れていた若者たちに

声をかける道兼。


「はっ!」


「兄上」


「ん?」


「今宵も東三条殿に

おいでですか?」


最近、兼家と道兼が

話し込んでいることに

道長も気づいているのだろう。


「何が言いたい」


道兼は怪訝そうに返す。


「いつもお目にかかれず

擦れ違ってばかりですから」


「だから何だ?」


「ああ別に」


道兼はため息をつく。


さすがに幼い頃のように

暴力を振るうことはないが


「いつか一献傾けたいな。

父上も交えて」


と意味ありげに答えた。


「はっ」


二人は厳しい表情を浮かべながら

背を向けて歩き出す。



まひろの父、為時は

いつものように兼家に

師定子親王のことを

報告に来ていた。


「東宮様はこのところ

お心を入れ替えられたように

勉学にお励みでございます。

ご即位も近いとご覚悟されたの

やもしれませぬ」


「お上が譲位され東宮様が

帝に即位された時、

左大臣は娘を入内させる気で

あろうか?」


「は?」


「左大臣の北の方、穆子殿は

そなたの親戚ではなかったか?」


「遠い親戚ではございますが…」


政治的な野心に疎い

為時の返事はパッとしない。


「左大臣の思惑は何だ?

何故帝にも東宮にも娘を

后に差し出そうとせぬ」


左大臣とは右大臣より、

ひとつ上の立場である。


兼家にとっては、

蹴落としたい一人だ。


「さあ?」


と、為時は頼りない。


「もうよい!下がれ!」


「ははっ!」


為時は立ち去りかけたが、

ふと思いつく。


「右大臣様、お役に立てるやも

しれませぬ」



その夜、土御門殿。


左大臣、源雅信とその妻穆子は

娘である一の姫、倫子のつまびく

琴を聴いていた。


「上達いたしたのう」


「あっ、そうでしたわ。

先ほど殿の新しい装束が

届きましたの。

お召しになってみません?」


妻の提案に


「わしは今、倫子の琴を

聴いておるのじゃ」


と、雅信は断る。


「さようでございますか」


「よき姫に育ったものじゃ」


「来年は22でございますけれども…」


雅信は娘可愛さのあまり、

手元から離したくないのだろう。


「我が家は宇多の帝の血を引く

家柄ぞ、年などいくつでも

慌てることはない」


「そんなに甘くはございませんわよ。

この土御門殿に殿が婿入りなさったのも

私が二十歳の頃でしたもの」


雅信は気にも止めず


「良い音色じゃ」


と倫子を見た。



為時はまひろを呼び出していた。


「お呼びでございますか?」


「左大臣家の姫たちの集いに

行ってみないか?

代筆仕事は許さぬが

その日だけは外出を許そう」


意外な話だった。


「左大臣様の北の方、

穆子様の女房には

赤染衛門殿という和歌の

名人がおる。

そこにやんごとなき姫君たちが

集って学ぶ会があるそうじゃ。

お前、和歌は得意であろう」


「私のような身分の低い者が

行く所ではないと存じますが…」


「お前は賢い。

身分など乗り越える才がある。

穆子様は親戚だ。

安心して楽しんでくるがいい」


父とは不仲であったが、

本気で父を嫌っていたわけでもない。


何より父は子供の頃から、

まひろの才を認めてくれていた。


そんな父の勧めに、

まひろは嬉しそうに胸を弾ませた。



久々の堂々と外出する機会を得て

まひろの足取りは軽い。



まひろはたくさんの姫が

集まるところへと案内される。


「私の親戚の娘ですの」


穆子が紹介する。


「お名乗りなさい」


「はい、前播磨権少掾、

藤原朝臣為時の娘、

まひろでございます」


まひろは頭を下げた。


姫たちの一人、

茅子が


「お父上の今の内裏でのお仕事は?」


と尋ねた。


「官職はございません」


姫たちは静まり返る。


「私のような者でもどうか

ご研鑽の場に加えていただきたく

お願いいたします」


丁寧に挨拶するまひろに


「オホホホホ…」


と倫子が優雅に笑った。


「ご研鑽などと大層な。

あ、そ、び。

楽しんでいってください」


倫子は笑顔を見せた。


「は…」


皆も真面目なまひろに笑う。


「さあ…」


穆子も穏やかに微笑んだ。


まひろは皆の側に座った。


和歌の名人、赤染衛門が


「では、新しい方も

お見えですので

手始めに偏つぎをいたしましょうか」


と誘った。


肇子が


「え〜!偏つぎ苦手…」


と悲鳴をあげ、

しをりも


「私も」


と続く。


「はいはい、札を広げましょう」


赤染衛門に言われて

姫たちが札を床に置いていく。


まひろは不思議そうに見つめる。


「ご存知ない?」


「はい」


「私が旁を示しますので

それに合う偏を取ってください。

例えば…旁は見、

偏は石で硯」


赤染衛門が例を示す。


「やってみれば分かりますよ。

では皆さん」


赤染衛門が「月」を示した。


まひろはすぐに札をとる。


「それは?」


「日です。月と日で明です」


意外なまひろの才能に、

姫たちが感心している。


その後も次々と、

まひろは正解していく…


あまりにも一人勝ちすぎて

ほとんど全ての札を

まひろが取ってしまった。


まひろには忖度も接待もない…


新参者のあまりの勝ちすぎに

他の姫たちの顔が険しくなっている…


そんな様子を見て倫子は


「すご〜い!

まひろさんは漢字がお得意なのね」


と大げさに褒めた。


さすがにまひろも気づいたか

辺りをチラッと見て


「あ…」


と、視線を落とした。


「一枚も取れなかった、フフフ…」


倫子がそうして笑うと、

空気も和らぎ倫子が

認めるなら、と感じたのか

と姫たちも笑い出した。


「まひろさんにはまるで

かなわないわ」


「倫子様ももう少し漢字を

お覚えになりませんと」


赤染衛門が指摘する。


「これからは女子でも

漢詩が読めて漢文が

書けなければ

我が子の指南はできませんよ」


「は〜い」


と倫子はのんびりと返事をする。


「皆様もですよ」


「は〜い」


皆がケラケラと笑う。



女子たちが学んでいる間…


三郎ら若者たちも、

勉学に励んでいる。


「孟子の言う、

人に忍びざるの心有りを

覚えていますか?

公任殿」


「人皆、人に忍びざるの心有り

と謂う所以の者は、

今人乍ち孺子の将に井に

入らんとするを見れば

皆怵惕惻隠の心有り。

交を孺子の父母に内るる所以に

非ざるなり。

誉を郷党朋友に要むる所以に

非ざるなり」


スラスラと答える公任…


道長は相変わらず

学問は進まないようだ…。


姫たちののどかな遊びとは

対照的に関白の屋敷では

休日であっても上級貴族の

子息たちが

国家を率いてゆく者としての

研鑽を積んでいた。


「辞譲の心無きは人に非ざるなり。

是非の心無きは人に非ざるなり」


道長は字を書くことも得意でなく、

隣の若者を、見た。


後に書で名をはせる

藤原行成が悠々と美しい

字を書いており、

道長は側に寄ると食い入るように

それを見つめた。



「お戻りになられました」


「お帰りなさいませ」


まひろは楽しそうな様子で

帰宅していた。


「ただいま戻りました」


と、父に報告する。


「土御門殿はいかがであった?」


「よい時を過ごしました」


「まことか。

倫子様という左大臣様の

一の姫はどういうお方であった?」


「今まであのようなお方とは

会ったことがありません」


まひろはにこやかに答える。


「それはどういうことだ?」


「よくお笑いになる方で

姫君たちにも慕われて

おられました」


為時が聞きたいのは、

そういうことではなかった。


「婿を取る話などは

出なかったか?」


「いえ」


為時も後ろめたいところが

あるのかなるべくまひろを

見ないように喋っている。


「左大臣の姫君は

お年頃と聞いている。

東宮の后となさっても

おかしくない」


まひろの表情が固くなる。


「なぜそのようなことを

おっしゃるのですか?」


父は答えない。


「兼家様に何か頼まれたのですか?

私を間者にしろと」


為時はごまかすように言った。


「お前が外に出たがっていたの

ではないか。

それに高貴な方とお近づきに

なっておいて損はない」


あくまでまひろから、

目をそらす為時。


「嫌なら行かなくていい」


「はい、余計なことを申しました」


まひろが思ったよりも、

聞き分けのよい返答をしたため

為時はまひろを見た。


「倫子様のお気に入りに

なれるよう努めます」


「うん」


まひろは涙をこらえながら

頭を下げると去った。


為時も胸が痛んだのか、

少しため息をつく。


まひろは涙と怒りを

こらえるように

母の残した琵琶を見つめた。



それでもまひろは、

為時の言う通りに

姫たちの集まりに参加

し続けていた。


まひろにとっては、

決して居心地が悪いわけでは

なかったのだろう。


「見てもまた

またも見まくのほしければ

馴るるを人は厭ふべらなり」


まひろは姫たちの読む歌を、

知っている、という

表情で聴いている。


「すてき」


「今のは古今和歌集ですね。

人の歌をそのまま盗んでは

なりません」


赤染衛門が咎めた。


「自分の心を見つめて

自分の言葉で歌を作らなければ

相手には伝わりませんよ」


「は〜い…」


皆が笑う。


「衛門は古今和歌集を

全てそらんじてるから」


と倫子が言う。


「恋の歌三、小野小町の歌は?」


「秋の夜も名のみなりけり

逢ふといへば

ことぞともなく明けぬるものを」


思わずまひろは声をかけた。


「すごい!合ってます!」


合っているのは当たり前なのだが、

まひろも知っているということだ。


「衛門のよいお相手になりそう。

フフフフフ…」


倫子が笑う。


「小町が恋の歌の名人と

いわれるのは恋をたくさん

したからかしら」


「いい歌を詠むためには

いい恋をしませんとね」


皆がまたわらいだした。


まひろも合わせるように

ぎこちなく笑う。



帰り道。


「四条万里小路の辻に

寄っていい?

散楽をやってるかもしれないの」


乙丸が止める。


「そのようなもの

姫様がご覧になるものでは

ありません」


「は〜い…」


とあの姫たちのように

返事しながらもまひろは


「でも行く」


と袖で口元を隠して

倫子のように笑った。


「姫様、それはどういう…」


「倫子様のまねよ。

乙丸って優しい」


散楽ではまた詮子のことを

揶揄した劇を行っている。


「来るな、来るな」


「お上、お上」


ちょうどその頃、

道長も散楽を見にやって

きている…


まひろは…散楽でなく

道長…三郎を捜していた。


「あ〜!なんという仕打ち…」


散楽の青年が、

まひろのもとにくる。


「弟よ。助けておくれ、弟よ」


その駆けた先にいたのは…道長。


「私がキサキじゃ!」


そんな散楽の向こうに。


道長はまひろを、

まひろは道長を見つけた。


二人は歩き出す…


やっと、会えた…


二人が見つめ合う中、

散楽の青年が、

被っていた布を取る。


そこにいたのは、

あの筆入れを届けてくれた男、

直秀だった。


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安倍晴明の立ち回り方が

実に現実的でよかった。


邪気祓いの祈祷を

しておきながらも、

災いそのものは


「円融天皇が帝であるから」


起きているものなのだ、と

伝えている。


もちろん毒を盛られている、

などとは言わないし、

おそらくは直接、

譲位したほうがいい、

とまでは言わないのだろう。


邪気は祓ったが、

その原因となっているのは

帝であるという重い立場を

背負っているからこそ

鬼が寄ってきてしまうのだ、

ということ。


帝自身もこれが、

本当に「邪気」などとは

信じていないのか


「急に悪くなったり

良くなったりおかしなものだ」


と言っているくらいなので、

兼家の手によることだとは

直接言わないにしても、

牽制をしているのがわかる。


鬼や怨霊などといった、

平安時代に恐れられていたもの…


その正体はこうした

誰かの悪意であったり

人間の心が作り出す闇こそが

その根本にあったのだろうし

陰陽師はお祓いもするけれど

裏で立ち回ることでそれを

解決していたのかもしれない。


こうした歴史の中の

ファンタジックな面も

どうやって現実に落とし込むか、

このドラマはそこが非常に

上手いと思う。



陪膳係を取り調べようと

意欲満々だった実資も、

あの女子たちの怨念のような声と

恐ろしい視線にビビッて

中止している…


これは…わかるのだよ…


俺も女性ばかりの職場で

上に立っているけれど

うまくいってるときには

頼りになる!

と、持ち上げられるが

あまり気に沿わないことすると

あいつ、いけ好かない…になるw


実資はやり手だとは思うが、

やり手だからといって

やりすぎると怒りを買うし

女の怒りは怖い…


あとはそうしたコミカルな面以外にも、

この時代は「女性の実家」のちからも

強かった。


だから実資が誰かを疑い、

それが無実だった場合には

彼女らの「背景」そのものが

敵になってしまう。


それは実資も避けたいだろうし、

帝の体調自体は良くなっているなら

今回は調査中止!にしたのは

賢明なのかもしれない。


道兼が安堵していたのも

印象的ではあるが、

道兼自身も上司としては

実資のことを慕っているの

ではないか、とも思う。


実資の調べが自分にまで

及ぶことになると、

兼家は実資のことも

なんとかしろと言うかもしれず、

道兼もそれは避けたいだろう。 


しかし、父親からも

そんな圧力を受けているのに

あの恐ろしい父になぜか

可愛がられている道長を見ると、

さすがに少年時代のように

暴力を振るったりはしないが

当たりがきつくなる道兼。


道長のほうもやはり

道兼は苦手なのか、

会話しながらもその後の

表情は硬かった。



結局のところ円融天皇は

懐仁親王を置いていけ、

などと詮子に言いながらも

連れていかれてしまっており

その帝は詮子…というより

兼家のことは嫌っていても、

息子の懐仁親王を次の

東宮にしたい点では、

兼家の利害と一致している。


この書き方も上手かった。


そもそも帝が譲位すれば

東宮の座が空き、

そこに懐仁を置くことができ、

帝も毒を盛られるようなことは

なくなる。


つまりそうすることが

帝にとって一番リスクがない

ことなのだ、と兼家は

一本だけ道を残している。


これは兼家が恐ろしく

政治的なセンスが

高いことがよくわかる部分だ。



後半はその兼家のために

為時がまひろに女子が

学ぶ会への参加を提案する。


まひろは為時とは、

仲が悪かったものの

昔から漢詩に詳しい父に

憧れており…


その父からお前は歌が上手いから、

たとえ身分が低くても才があり

他の姫たちに劣らない、

やっていけると言われたのは

嬉しかったろう。


これは為時から見ても

本当にそういう評価は

していたはずなのだが…


とはいえまひろはそもそも


「ミチカネという男が

兼家の息子の中にいるのでは」


という疑いを持っている。


そんな兼家のために、

父が自分のことすらも

間者にしようとしたというのは

非常に辛かったと思う。



しかしそんなまひろが、

あの女子会に参加することが

楽しいと思えたのは、

あの一軍女子のリーダーたる

倫子の人柄のおかげもあるだろう。


まぁ、ぶっちゃけ

宿直の際にふざけて

女の話ばかりしていたり、

勉強もできる公任たちに

道長が素直に憧れを

抱いているように、

男の世界は単純だ。


とくに思春期の男子など

まさにあんな感じ。


道長を始めとした、

若者たちの育成は

関白の屋敷で行われている、

というのも興味深い。


関白であり公任の父、

頼忠と右大臣の兼家は

政敵ではあるけれども

そうした権力争いと、

次世代の育成はちゃんと

切り分けているのか。


このあたりが平安時代の

良さなのかもしれないし、

息子世代の公任と道長とは、

友人同士、仲良くやってる

ところがまた良い。


道長はなんでもできる

公任を慕っているのもわかる。



ところが女子はそうではない。


まひろには接待プレーなどという

世渡りの観念はないので

そこは不器用だった為時にも

そっくりなのだが、

他の姫たちのことも立てる、

という考えはない。


だから偏継ぎでも

一人勝ちしてしまい

他の姫たちはドン引きする…


あのときリーダーたる

倫子様が


「まひろさん、すごーい!」


と褒めてくれたから、

姫たちも和んだわけだが

まさに女子の恐ろしさが

あのシーンに象徴されている。


和歌の達人であり、

皆の先生でもあるはずの

赤染衛門が古今和歌集を

詠んだときにも


「あってます!」


と批評してしまう…


あのときも倫子様が


「衛門のよい相手になりそう」


と笑ってくれたから、

他の姫たちも笑ってくれたが…



目立ちすぎると、

反感を買うのだ。


倫子様が褒めてるのも

本心なのかわからないのが

また怖いわけだが…


京都のお姫様だし…


褒める=言葉の通り


ではない可能性はある。


が、まひろならぶぶ漬けでも

おかわりして食うだろう。


そんなまひろのことは、

もしかしたら父から

溺愛されすぎて育った

倫子様から見たら

むしろ新鮮でまばゆいかも

しれない。


ネタバレになってしまうから

多くは書かないが、

倫子様は道長とも

とても深い関わりを持つし

生涯にわたってまひろにとって

理解してくれる友達、に

なれるかもしれない。


が、ライバルになるかもしれない…


倫子様を演じる黒木華さんは

まさに、平安時代の美人そのもの。


平安時代には、

現代のようにくっきりした顔より

オカメみたいな顔が美人だったと

言われているのだが…


それは今の感覚で言う

ブス、などではなくて

黒木華さんのような

全体的に顔の丸みがある

愛らしい感じの女性、

なのでは?とも思う。


黒木華さん可愛いし

他の姫たちも認める

彼女らのリーダーという

役どころはとても

似合っている。


これからのまひろとの

関係も楽しみだ。



まひろが散楽を見に行きたい、

と言い出したのはあの

姫たちの集まりで恋の話が

出たからだ、

ということに他の方の

ポストで、気付いた。


そういうことか…


本作は女性脚本家、

女性主人公なので

女性の方の感想から

細かい描写がわかる。


男の俺には正確に理解できて

いない部分があるところも、

また面白い。


まひろ、道長の再会は

謎の男である直秀を挟んで…


直秀もまひろを、好き?


この辺がベタな90年代の

ラブストーリーみたいだが

それはけなしているのでなく、

政治パートが重たいぶん、

こうしたベタな部分に

ドキドキさせられる…


ホントに良い構成だと思う。


とてもメリハリが効いている。


次回も楽しみだ。