光る君へ第2回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第2話「めぐりあい」後編




いつものように意気揚々と

代筆仕事へ向かったまひろだが、


「突き返された!?」


と、驚きのあまり

思わず素の声に戻ってしまう。


慌てて絵師が咳払いをする。


まひろは低い声に戻り


「文や歌に返事をせぬ、

ということはあるが

突き返してきたとは

いかなることか…」


客はあの小太りの男、

麻彦だった。


「別の女のことを言っていると

えらく怒っておりました」


「別の女?」


まひろは自ら書いた歌を

見返してみる。


「私はあなたと桜を

見たことはないと言うて…」


「そうなんだ…」


と気まずそうにまひろは

小声でつぶやいた。


桜くらいは二人で見たことは

あるだろう、と

勝手に決めてしまっていた。


「違う歌を書いてくれませんかね。

もう一度、よい歌を」


「もっとよく話を聞いておれば

よかったな。

桜ではなく思い出の花は

ほかにないのか?」


麻彦は考えこむと


「出会った去年の夏、

家に夕顔が咲いておりました」


と答えた。


それだ!とばかりにまひろは


「待たれよ」


と、改めて歌を書き始める。


今度こそ会心の作だ。


「今回の礼は要らぬ」


謝罪をこめてそう伝えるも

絵師は


「そうはいかないよ。

成果はお客様次第。

しっかり頂きますよ」


とちゃっかりしている。


とはいえ、恋の歌など

百発百中で叶うわけは

ないのだから仕方ないだろう。


それでも麻彦はうれしそうに


「ありがとうございました!」


と帰っていった。


「次の方」




その頃…詮子も呼ばれなくなって

久しい夫、円融天皇のことを

想いながら筆を取っていた。



街中では散楽が行われている。


かつて三郎と名乗っていた頃と

まったく変わらぬ様子で

道長は百舌彦を連れて

見学にきている。


「アキの女御はらめよ

ハルの女御はらめよ

やどれやどれやどれよ」


「授かりました!」


まるっきり姉の詮子のことを

からかうような内容なのだが

道長は笑っている。


さすがに


「若、若…」


と百舌彦がたしなめるが

道長は楽しそうだ。


「やり遂げました〜」


赤子の人形を使い


「私は皇子を産みました」


散楽のものがおどけると、

また道長は笑った。


「皇子の母上、お上のキサキ!」


「アキはそんな姿ではない!

来るな!来るな!」


「お上、お上!」


「この子がおれば

アキなど要らぬ。

あっちに行け!」


「なんという仕打ち…」


「弟よ、どうしたらいいの…

助けてくれ…弟よ」


なぜか道長の前に

男が寄ってくる。


「え?」


道長は苦い顔をした。



まひろは麻彦の歌が

上手くいかなかったことを

悔やみながらあるいている。


「歌を渡した時に

言ってくれればよかったのに…」


「私がキサキじゃ!」


「ハルよ、ハルよ!

お上、お上!」


散楽の笑い声に

まひろは顔を向けるが

バカバカしい、

とばかりに歩き出そうとするが、

小石に躓いてしまう。


ふんだりけったりだ。


まひろは小石を

蹴飛ばそうとしたが、

代わりに草履が

飛んでいってしまう。


「ん…?」


あたったのは、

道長の頭…


道長は頭を撫でながら

上を見回す。


「あの…それ…」


「ああ…」


道長は草履を手に取ると

まひろの足に履かせてやった。


「えっ」


と、まひろは道長を見つめる。


「何で草履を投げたんだ」


「いや…あ…石を蹴ったら

草履も一緒に…」


ばつが悪そうに答えるまひろ。


「石を蹴るのか?いつも」


「いつもではないですけど

がっかりすることがあったんで」


「そうか、それは気の毒であったな」


道長は怒るでもなく、

淡々と述べた。


「すいませんでした。

ひどいことをしたのに

怒らないでくれて

ありがとうございます」


まひろは頭を下げた。


と、道長の足が目に入る。


足首に残る傷跡…


それは三郎と名乗っていたころ、

兄に庭に転がされた時

矢で怪我をした場所だ。


「え…」


「何だ?」


「あなたはもしかして

足で字が書ける人ですか?」


まひろはあの幼き日に

出会った少年を思い出す。


「はあ?」


「あっ、違いますよね…」


「ああ、子供の頃、

足で自分の名前を書くのが

得意だったことはある」


まひろは目を見張る。


「何を驚いている」


「さ…三郎?」


「ん?」


道長もあの日、

お菓子を食べて微笑んでいた

少女を思い出した。



二人は思い出の川辺を歩く。


「何であの日来なかったんだ?」


まひろは答えない。


「菓子を持ってずっと待っていた。

気が付けば月が空に見えたが

俺はずっと待っていた。

なぜ来なかった?」


怒っているわけでもないが、

ぼやくように道長は尋ねる。


まひろは


「あの日のことは思い出したくないの。

だから話せない」


とだけ答える。


まひろはミチカネが、

この三郎、道長の兄とは

知らないし、

道長も自分の兄が

まひろの母親を殺したことは

知らない。


二人は川を眺めながら、

しばし思い出に浸った。


なぜか漢文にくわしい

幼いまひろ。


貴族の子なのに漢文も

知らない三郎。


「まひろ。

お前は一体誰なんだ?」


あのとき聞けなかったことを

道長は尋ねる。


まひろは少し考えると


「代筆してるの」


と、秘密をひとつ教えた。


「代筆?」


「高辻富小路の絵師のところで

代筆をやっているの。

いろんな人の気持ちになって

歌や文を書く仕事。

それは楽しい仕事なのよ」


「へえ〜、この世には

楽しい女子がいるのか」


さりげなくそう言う道長は

きっと世の女子たちは、

男に利用されてかわいそうな人

ばかりだと感じていたのだろう。


「三郎の周りは

楽しくない人ばかりなの?」


「俺の周りの女子は

皆、さみしがっておる。

男は皆、偉くなりたがっておる」


他人事のように言う道長。


「三郎こそ誰なの?

偉くなりたい人?」


笑いながらまひろが問うと、

道長は笑った。


「三郎は名前しか書けないから

偉くはなれないか」


まさかふたりとも、

この時点ではこの三郎が

最高権力者になり、

まひろも紫式部として

後世に名を残すことなど知らない。


「ハハハハハ!」


と、男のような声で笑うまひろ。


「男のように笑うのだな」


若干、引き気味に

道長が驚いた。


「あ…今日、男の声を

出していたから」


「え?」


意味がわからない、

道長も笑った。


「あの人、三郎を呼んでるの?」


ふと見るとぬいを連れた、

百舌彦が手招きしている。


「行かねばならない。

俺のことは今度話す。

絵師のところには

毎日いるのか?」


「毎日はいない」


「ああ、そうか。

では会えるまで通う」


そんなことを男に言われたのは

初めてなのだろう、

まひろは戸惑うが、

道長はきっといい奴なのだ。


去っていく道長に


「好きな人がいるなら

いい歌を作ってあげるわ」


と声をかけた。


「歌は要らぬ」


道長は走っていった。


好きな人などいない、

とも取れるし

歌などなくても自分で

気持ちを伝える、

とも取れる。


不思議な人…と感じたのか

まひろは道長の背中を

見つめ続けた。



宮中は相変わらず、

女たちの噂の場だ。


「今宵、お上は詮子様のもとに

お渡りよ」


「何年ぶり?」


「詮子様はウキウキしておいでよ。

湯あみもされたんですって」


「キャ〜!やる気満々!」



しかし、詮子の前の現実は

そんな甘いものではなかった。


円融天皇は詮子が

書いた歌を床に捨てる。


「これは何だ?

見苦しいことをするな。

そなたは懐仁の母であるぞ。

汚らわしい」


あんなに優しかった

帝の変わりように、

詮子は訴える。


「かつてのお上の私へのご寵愛は

偽りだったのでございますか?

汚らわしいことだったので

ございますか?」


「子をなすことは

帝たる者の務め。

朕は真面目に務めを

果たしただけだ」


帝は冷たく告げる。


「もうあの頃のことは

覚えておらぬ。

そなたも忘れよ。

そして母として生きよ。

懐仁は我が唯一の皇子。

そなた国は母となるやも

しれぬ立場だ。

そのことを忘れるでない」


去ろうとする帝を

詮子は


「お上!」


と、止める。


「私、東三条殿に下がります」


これが詮子の精一杯の意地だ。


子供も連れて出ていって

しまうことが、

一番痛手なのだろうから。


皮肉にも父の言っていた通りだった。


「好きにせよ。

ただし懐仁は置いてゆけ。

遵子と共に大切に育てよう」


あまりにひどく、

屈辱的な扱いだった…




その東三条殿には、

まひろの父、為時が

兼家を訪ねてきている。


「本日、東宮様のもとに

上がりましたので

ご様子をお知らせに

参りました」


「うん」


「相変わらず勉学の成果、

全く上がらず、

昨日も…」


為時は言い淀むが、

続けた。


「母親と娘の双方に

手をつけたという話を

一日中私にお話しになって…」




東宮…師貞親王は

足に扇子を挟みながら


「よく似た親子で手応えも似ておる。

どちらと寝ておるか分からなくなる

こともしばしばじゃ」


と、自慢げに語っていた。


いくらやがて帝になる身、

そして性に奔放な時代、

といっても母親と娘、

両方と寝たなどと、

他人に楽しげに話すのは

正常なことではない…




「しれ者のふりをしておるだけかと

幾度か思ったが、

やはりまことのしれ者なのだな」


兼家も驚く。


「帝になられても、

誰もついてはゆかないかと…」


残念そうに為時は答える。


兼家はしばし考えこんだ。



明くる日、兼家は久々に

息子の道兼を伴って、

馬を走らせた。


小高い丘にたどりつくと、

二人は馬を降りる。


「わしはのう、ここからの

景色が幼い頃から好きであった」


都の街が広がっているのが見える。


いつもは兄ばかり、

優遇されているように

感じていたこともあり、

道兼は


「父上とご一緒に

この景色を眺める誉れ、

胸が高鳴ります」


と喜ぶ。


「我が一族は常に

都を見下ろしておらねばならぬ」


「はっ」


「それにはお前の力が欠かせぬのだ。

道兼」


兼家は道兼を、見た。


「そなたは蔵人で

帝のおそば近くに仕える身。

配膳の女房を手なずけて

帝の食事に薬を入れさせろ。

お命は取ってはならぬ。

お加減をいささか悪く

されればよい。

お気が弱って退位を望まれれば」


「そのような…」


「そのようなことをなすのが

お前の役目なのだ」


「何故、私の役目なので

ございますか?」


兼家は道兼を見据えた。


「6年前、お前は家の名を汚した。

そのことをわしが知らぬとでも

思っておったか」


道兼は目をそらす。


「高貴な者は自らの手で

人をあやめぬ。

そのおきてをお前は破った。

お前を守るためわしは

あの時の従者を始末した。

お前のおかげでわしの手も

汚れたのだぞ」


道兼は荒い息をつくと、

その場にへたり込んだ。


「分かりました。

必ずやり遂げて父上の

お心を取り戻しまする」


「しくじったら我が一族の

命運は尽きる。

分かっておるな」


「はい」


うなだれながら、

道兼はあの日、

おそらく弟が血まみれの

自分を見たであろうことを

思い出していた…




その道長剣の稽古に

励んでいる。


道兼はその様子を

遠くから睨んでいた。



まひろは戸板から出て

絵師の描く絵をながめている。


「今日は暇だな」


「師匠の絵はどことなく

おかしみがありますね」


「おかしき者にこそ

魂は宿る」


「ほう〜」


と、楽しそうに笑うまひろ。


「おっ」


誰か来たようだ。


まひろは慌てて戸板の裏へ

引っ込んだ。


例の麻彦である。


「また突き返されました。

私は細工師ですが、

仕事も手につきません。

何がいけないのでしょう」


嘆く麻彦。


まひろは低い声で


「もう少しその女子のことを

聞かせてくれぬか」


と促した。


「やんごとない家の女房で

学も深く字も書けない私なぞ

到底かなわない女子なのです」


字も書けないのなら、

こうしてまひろに

代筆してもらっていること

そのものが無理があるのではないか…


「身の程知らずだと

怒っているのやも…」


「代筆を頼んで字が書けると

偽っておるのか?」


「は…はい…」


「うそはいずれあらわになって

しまうと思うが…」



まひろは道長のことを思い出していた。


「まひろ、お前は一体誰なんだ」



「この際、本当のことを

言ってしまったほうが

いいのではないか」



「代筆?」


とふしぎそうにしていた道長。



「うそをついたことを

わびることで仲が深まるやもしれぬ」



「歌は要らぬ」


と語った道長の言葉を

まひろは思い出していた。



「歌なぞいらぬ。

まことの姿を見せろ、

という意味だったのではないか?

相手の思いは」



「では、会えるまで通う」


道長のあの言葉を思い出し、

まひろは思わず胸を抑えた。


偽りの歌のやりとりでなく、

会いたい、共に話したい。


そのほうが自然な男女なのだ…


「幸運を祈っておる」


と、まひろは麻彦を励ました。



その頃、道長は弓の稽古を

していたが珍しく矢をはずした。


「あっ…」


迷いがあるのだろう。


「三郎は名前しか書けないから

偉くはなれないか」


と屈託なく笑った

まひろのことを思い出していた。



内裏では雅信が帝への

報告を行っている。


「先日、高麗人の船が

筑前に来着した件で

ございますが

太宰府からの知らせによりますと

万事滞りなく帰国の途についた

とのことでございます」


それを聴いていた

円融天皇はとつぜん、


「うっ…」


と呻いた。


「お上、いかがなされましたか?」


「大事ない、続けよ」


「太宰府は高麗人たちに…」


道兼に命じた毒が、

効いてきたのだろう。


兼家は心のなかでほくそ笑んだ。



「胡亥の貢献をしていた趙高は

まれに見る奸臣で…」


為時は親王に教えているが、

相変わらず親王は聞いていない。


「ないしょだけど俺、

いよいよ帝になるみたいなんだ」


為時は驚く。


「は?」


「ないしょだよ、ないしょ。

でもうれしいだろ?

俺が即位したら

お前を式部丞の蔵人に

してやるから」


親王は楽しそうだ。


「俺、などとご自分のことを

おっしゃってはなりませぬ」


親王は構わず続ける。


「みんな俺から逃げていくのに

お前だけはずっと傍らにいてくれた。

教え続けてくれた。

お前のおかげで俺はだいぶ

賢くなったぞ」


「東宮様…」


「とんだ好き者のように

皆は言うが俺だって

見るところは見てるんだ」


自分のことを見放さないで

いてくれた為時のことを、

親王はちゃんと見てくれていたのだった。



絵師のところに麻彦が、

女子を伴って訪れた。


「先生、うまくいきました」


まひろは嬉しそうに

膝を叩いた。


「おお!」


「先生のおっしゃったとおりでした。

ありがとうございました」


女子も言った。


「世の中に通じたお方は違いますわね。

ありがとうございました」


人に恋のことを教えられるほど、

何の経験もないまひろは、


「世の中に通じてないけど…」


と、聞こえないようつぶやく。


「代筆仕事もこれでは

上がったりだな、ハハハハ!」



帰宅した為時は、

太郎の乳母であるいとに

親王が即位するかも

しれないことを話した。


「殿様が式部丞の蔵人に

なられるなら

姫様にも行いを慎んで

いただかなければ

大変なことになります」


「何じゃ、それは」


「実は殿様…」



まひろは久しぶりに

父からの説教を食らっている。


「そなたがわしと口を利かぬのは

それでもよい。

されど学者である父の顔に

泥を塗るようなことは

断じて許さぬ!

家で写本を作るのはよいが

代筆仕事なぞにうつつを

抜かすようなこと、

あってはならぬ!」


まひろは小さく答えた。


「代筆仕事は私が私で

いられる場所なのです。

この家では死んでいるのに

あそこでは生きていられる」


思わず為時の顔も曇る。


「いろんな人の気持ちになって

歌を詠んだりする時だけ

6年前の出来事を忘れられるのです」


まひろは父を睨むと、

語気荒く訴えた。


「母上と私を裏切った父上を

忘れられるのです!」


「黙れ!」


と、為時も叫んだ。


「6年前と言えば

わしがおじけづくと

思っておるな。

父をなめるでない!

これより見張りをつける」


「縛られても必ず縄を切って

出ていきます。

父上の言うことなぞ

私は聞かない!」


自分の居場所は奪わせない、

大切なものはもう父上には

渡さない、とばかりに

まひろはそう言い切った…



しかし…まひろが

こっそりと抜け出そうとすると


「お許しください、姫様」


乙丸が見張っている。



また、別の日…


乙丸は睡魔に負けてあっさりと

陥落した…


まんまと家を出たまひろは

絵師のもとへと走る。


ところが…


どうせまひろは脱走してでも

仕事を続けるであろうことを

見抜いていた為時は


「しかと申し渡したぞ」


と、絵師に配り物をしていた。


つまりは代わりに、

もう、まひろと関わるな、

ということである。


絵師はそれを受け取ると


「はは〜っ」


と、返事をする。


為時と入れ替わるように

道長が訪ねてきた。


「あの…ここでまひろという

女子が代筆をしていると…」


「はあ?女子が、ここで何をするって?

言いがかりはやめてくれ」


「え?」


道長は諦めるしかない。




川辺では検非違使たちが

褒美目当てに暴れている。


「これは盗んだものではありません」


そう言っている男を

乱暴に痛めつけている。


「盗賊かどうかは役所で聞く」


「俺はそのような者ではありません」


「黙れ!」


検非違使は棒で殴りつけた。


「勘弁してください!」


「刃向かうかこいつ!」


「謝れ!」


そんな横暴な検非違使に、

一人の男が石を投げつけ

尻を叩くと逃げ出した。


検非違使たちは追いかける。


逃げた男はまひろとぶつかり、

男はまひろが落とした荷物を


「すまん」


と手渡しすぐに駆け出した。


男は直秀、という

散楽の一員だがまひろは知らない。


「おい、男が逃げてこなかったか?」


まひろはあたりを見回すと、

男が逃げたのと逆の方を指した。


「あいつだ!」


「この…ふざけたまねしやがって!」


まひろは適当に示しただけだが

運悪く直秀と似たような青い着物に、

黄色い袴をはいていた男がそこにいた。


男は検非違使に捕まってしまう。


「何をする!」


「話は獄で聞いてやる」


まひろは捕まった男を見て驚く。


「三郎?

その人じゃありません!

待ってください。

逃げてたのはその人じゃ

ありません!

違うんです!」


まひろは駆け寄っていった。



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まひろの草履がすっ飛んで、

見事に道長の頭にあたる。


そこでお互いにあの

幼い日から会えなかった

思い出の人だと気づく。


もうそのまんま、

ベタなラブコメのような

展開なのだが、

政治劇の部分がジメジメと

しているので、

まひろと道長が爽やかなのは

むしろ救いである。


おまけにこの靴が飛んでしまい、

拾ってもらったことが

きっかけに仲良くなる、

は中臣鎌足と中大兄皇子の

エピソードから取られたものと

思われる。


中臣鎌足と中大兄皇子は

協力して蘇我氏を倒すのだが、

まひろと道長とは、

恋人でありながらも

盟友のような関係になる

可能性を示唆するような

出会いになっていて、

そこを知っていると面白い展開だ。


父の兼家からは


「物事のあらましが見えている」


と評されていて、

鳥が逃げてしまったことに

悲しんでいた幼いまひろに


「飛んでこそ鳥だ」


と答えて泣かせてしまう、

リアリストな感じのある道長は、

まひろが「誰なのか」が気になる。


好きな人がいるなら、

歌を書いてあげると言われても

歌なぞいらん、と答える。


歌を書くくらいなら、

直接会いにいく、

そんな道長にまひろが

思わずときめくのも、

とてもいいなと思う。


この時代は回りくどいことを

しながら恋のやりとりを

楽しんだものなのだが

道長はなにか根本的に

考え方が違う人のように

描かれている。


ただ、それは時と場合によっては

冷徹になるのかもしれないが

そこはこれからどう道長が

成長していくのか、

見どころにもなるだろう。


大切なものは、

きれいな歌ではない、

という「現実」を知ったまひろは

客の麻彦に


「偽るよりも本当のことを

伝えたほうが相手は喜ぶ」


とアドバイスをし、

麻彦の恋を叶える。


第1話から


「バカ=偽りを尊ぶこと」


をひとつのキーポイントに

していたこともあって、

結局、まひろは代筆をして

偽ることによって、

間違った喜びを得て

しまっていたかもしれない

ことにも気付かされる。


が、まひろという人の

難しいところは、

その偽りをしているときだけが

本当の自分…

母のことを忘れられず

父のことを憎んでしまう


「家では死んでいる私」


とは、別の自分になり、

生きていられるのだ、

というくらいには

心を病んでしまっていること…



偽り、といえば検非違使なども

褒美目当てに何の罪もない人を

捕まえようとするように

なってしまっている。


兼家は


「褒美を用意してやれば

検非違使はやる気を出す」


と帝に献言したし、

これに関しては実資も


「好きではないが

兼家は正しい」


と評価したのだが、

末端の者たちがその

理想通りに動いてくれるとは

限らない、という

政治の理想と現実とを

うまく描いている。



兼家は道兼が「穢れ」を

背負ってしまったことを

知っていた。


これは道長…当時の三郎から

聞いたのかは定かではないが、

兼家は事が露見してはまずいと

道兼の従者を始末したのだ、と言う。


「穢れは伝染する」


というのがこの時代だが、

それを本当に呪いのように

描いてしまうと完全に

ホラーフィクションに

なってしまうので…


道兼が犯した罪が、

周りの者も罪を犯す

きっかけとなり、

それがまた道兼をさらに

苦しめる、という

現実的な解釈もできるように

描いたのだろう。


「道兼は道隆のための汚れ役に」


と、兼家は語っていたものだが、

その反面、猪突猛進で良いとも

評価をしていた。


それなのに道兼は、

タブーをおかした。


ならばもう割り切って、


「汚れ役に徹してもらう」


というのは、

兼家も「穢れ」を畏れるより

利用しようとする、

リアリストなのかなとも思う。


もっとも


「遵子に子供ができないよう

安倍晴明に頼み込む」


などは晴明の呪術を

信じているようにも見えるが。


「当時の貴族は自分の都合で、

穢れや呪いというものを

利用した側面もある」


というのはこういうこと

なのかもしれない。



後の花山天皇…師貞親王、

これが癖が強くてまた良い。


様々な女性と関係を持つのは

とくに問題はなかった時代だが

母親と娘を抱く、

などは当時の感覚でも

あまり褒められることではない。


が、それをしてさらに

自慢げに語る親王は

痴れ者のふりどころか

本当の痴れ者のように

見えてしまうのは仕方ない。


が、実のところそんな

馬鹿なことをさんざん

仕出かしてきている

親王に愛想を尽かさずに

一生懸命に学問を

教えようとしてくれてきた、

為時のことは大切に思っている。


そんな人間らしさがあるうえに


「俺だって見ているところは

見ているんだ」


と言ってのけるあたりは

聡明さすら感じる、

非常に読めない良いキャラだと思う。


女性たちはかわいそう、だが…


さらに言うならば、

では為時がこんな親王から


「離れない理由」


というのは親王のことを

大切に思っているわけでもなく…


「親王のことを兼家に

報告する裏仕事もしている」


という後ろめたい部分がある。


親王がそこまで見抜いているかは

わからないのだが。


これは見方によっては

為時は親王のことを

偽りの姿で欺いている、

とも言えるし、

それでもそうしなければ

生計が立てられないという

苦しい立場でもある。



全体を見ても完璧な人、

というのはいない印象で

そこは皆、人間らしく

面白いキャラ造形だなと思う。



誰もが癖があるからこそ、

(今のところ)まっすぐに見える

道長とまひろの関係性の

爽やかさには癒やしを

感じる…といった

権力闘争系ラブストーリー。


こういう大河ドラマも

なかなかないので

個人的にはとても面白い。