光る君へ第1回あらすじ&感想前編 | NobunagAのブログ

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家庭菜園、ゲーム、アイドルなど趣味の話題や、子育て、介護関係のことをつらつらと書いています。

第1話「約束の月」前編




貞元二年(977年)。


大内裏の陰陽寮。


星を見上げる男がいる。


「紫微垣の天蓬の星が

いつになく強い光を放っている」


「それは都に凶事が起きる

ということですか?」


「今宵がその始まりだ」


男…安倍晴明は言った。


「雨が降るな」


「星も月も輝いておりますが…」


「雨だ。大雨だ」



安倍晴明の言った通り、

その夜、都には雨が降った。


ところどころ、

穴の開いてしまっている

天井から雨粒が落ちてきて、

幼いまひろは


「母上!」


と、飛び起きた。


籠の中の鳥が、

突然の雨に驚いたのか

鳴き声を上げている。


寝床から起き出した

まひろは籠を仕舞おうと

手を伸ばす。


下女のはるが


「熊」


と声をかけ、

熊丸が急いで家に入る。


「駄目です」


まひろの弟、

太郎は遊び盛りで

外にでも出たがったのか、

乳母のいとが抱きしめる。


母、ちやはが


「お前たち、中へ中へ」


と急いで招き入れた。



翌日、雨が上がると

ちやはは


「ご苦労さま」


と下働きの者らに

声をかけながら歩いている。


まひろは濡れた床を拭いていた。


「王戎簡要、裴楷清通

孔明臥竜、呂望非熊

楊震關西、丁寛易東」


父の藤原為時は書物を開き

漢詩を読み上げている。


太郎が退屈そうに


「あっち行こう」


と言うと、いとは


「はいはい」


と答える。


「お庭」


太郎は外へ行きたがる。


「お庭は寒うございますよ、若様」


「遊びたければここで遊べ」


と、為時は言った。


「遊びながら聞いておればよい」



「年が明けるのが早いか、

屋根が落ちるのが早いかだな」


熊丸は天井を見ながら

ぼやいた。


「遅くなってしまったけど

年末の手当」


ちやはがお礼を渡す。


「もったいないことで

ございます」


「今年はこれで辛抱しておくれ」


「北の方様、

私、今年いっぱいで

おいとまを頂きとうございます」


と、はるが思い切ったように言う。


「えっ」


「親が年なので戻ってまいれと…」


「まあ…それはしかたないわねえ」


残念そうにちやはは答えた。



狭い籠の中を鳥が飛んでいる。


「母上、うちには屋根を直す

蓄えもないの?」


と、まひろは母に尋ねた。


「まひろが心配することは

ありませんよ。

年が明ければ何もかも

うまくいきますよ」


「でも、また母上は

衣を食べ物に換えたでしょ」


「大丈夫、大丈夫。

年が明けたら父上の

新しいお役目が決まるのよ。

父上のような博識の学者を

帝がほっておかれるはずがないもの。

案ずることはありませんよ、

大丈夫、大丈夫」


ちやははまひろを

安心させるように、

そして自分にも言い聞かせるよう

そう述べた。


まひろは寂しそうな目で

琵琶を見つめる。


「母上は琵琶を弾かなくなりました」


「父上の官職が決まったら

お祝いに弾きましょう」


そう言うとちやはは

花を備えて仏に手を合わせた。


きっと趣味であったはずの

琵琶を弾く暇もないほど、

困窮した暮らしにあるのだろう。



「孫敬閇戸、郅都蒼鷹

寗成乳虎、周嵩狼抗」


相変わらず為時は、

漢詩に夢中だ。


まひろは床を拭きながら

為時の読む声に合わせて

暗唱している。


すでに暗記しているのだから

賢い子なのだろう。



まひろという名のこの少女が

後々の世まで名をはせる作家、

紫式部となる。



天皇を頂とした京の都では

上級貴族たちの出世争いが

しれつを極めていた。


大納言、藤原兼家もその一人。


妻、時姫との間にもうけた子供は

長男・道隆、次男・道兼、

娘の詮子。


兼家は娘を天皇の妻にすることで

更なる力を得ようとしていた。


東三条殿に兼家の家族一同が

集っている。


「父上、母上にはご機嫌麗しく

祝着至極にございます」


長男の道隆が頭を下げる。


「めでたく詮子の入内の日も決まり…」


「挨拶はもうよい、姫を抱かせよ貴子」


父・兼家は道隆の言葉を遮り、

そう声をかける。


道隆の妻、高階貴子は


「はい」


と答えて侍女から赤子を

受け取ると


「さあ、おじい様ですよ」


と、兼家に抱かせてやった。


「肌が透き通るように白い。

美しい姫じゃ。

そなたもゆくゆくは

入内せねばのう」


孫の可愛さに顔を

ほころばせてはいるが、

兼家の頭の中には

この子もいずれは、

天皇の妃にして、

さらに権勢を握りたいという

思いで溢れている。


「そのつもりで心して

育てまする」


道隆が答えた。


「頼んだぞ」


「はい」



豪華な食事が運ばれてくる。


「詮子が入内すればこのように

皆がそろうことはもはやない。

三郎はいかがした?」


兼家が三男、三郎の不在に気づく。


「遅れて申し訳ございませぬ。

兄上、お久しゅうございまする」


まだまだ少年の

三郎が悪びれることもなく

にこやかに入ってきた。


「何をしておった」


そんな三郎に道兼が冷たく問う。


「なんというわけでも…」


「答えになっておらぬ!」


「まあよい」


「背丈が伸びたのう、三郎」


道隆が声をかけると、

道兼が急かすように


「返事をせぬか!」


と怒る。


「背は伸びました」


素直にそれだけ答える三郎に

道兼は


「まぬけめ!」


と、蔑むように言う。


道兼はよほど三郎のことを

嫌っているようだ。


「三郎、来年、詮子が入内するは

父上の世が到来する第一歩。

お前もそう心得て気を引き締めねば

ならぬぞ」


長兄らしく道隆が諭す。


「は…」


「安倍晴明に関白の姫より

詮子が先に入内するよう

帝に奏上せよと申しつけて

おいたのに裏切りおった」


兼家が腹立たしげに言う。


「入内の順番なぞ関わりございませぬ」


道隆は冷静だ。


「関白様の一の姫より先に

詮子が皇子を産めばよいこと、

必ずや父上の世は参りまする。

詮子、頼んだぞ」


道隆は妹にそう声をかけた。


「お気の早い兄上…」


詮子はそれだけ答える。


道兼はそんな様子に焦ったように


「父上、私も早く妻を持ち

入内するような娘を

もうけとうございます」


と訴える。


「うん…」


兼家は気のない返事をし、

母の時姫もそれには浮かない顔だ。


「道兼、その件考えておこう」


と、代わりに道隆が答えた。


「私は父上にお願いしておりまする」


「父上と共に考えておくゆえ」



三郎はそんなやりとりを

暇そうに聞いてあくびすらしている。



このボ〜っとした

三男の三郎が、

後に貴族の頂点に立つ

藤原道長である。



まひろの父、

下級貴族の藤原為時は

5年間、官職を得られなかった。


次こそは任官をと願いながら

貧しい生活を送っていたのである。



「殿、夕げにございます」


と、ちやはが声をかける。


「うん」



「宣孝様、お見えになりました」


熊丸が報告した。



やってきたのは藤原宣孝、

為時の親戚である。


「おいでなさいませ」


ちやはが挨拶すると、

宣孝は笑う。


「ちやは殿、にわかにすまぬな。

正月用の酒を持ってまいった」


宣孝は瓢箪を渡す。


「いつもいつもありがとうございます。

これは前祝いでございますね、

頂戴いたします。

ただいま夕げを…」


「あっ、夕げはよい、

急いでおるゆえ」


「今宵はどなたの所へ?」


と、まひろが尋ねる。


「そなたは大人のようなことを

言うのう」


困った宣孝をまひろは

ニコニコして見ている。


宣孝は為時の横に座った。


「大納言様に話はしたのか?」


任官のことである。


「式部省で働きたい旨、

申し文は奉ってある」


「大納言様とは漢詩の会で

会うと言うておったではないか」


宣孝は呆れたように言った。


「漢詩の会は自分を

売り込む場ではない」


生真面目に答える為時…


宣孝はますます、呆れる。


「そのような見えを

張っている時ではない。

この先、官職を得られなければ

どうやって暮らすつもりだ」


「分かっておるが

宣孝殿のようにずうずうしくは

なれぬ」


「なまじ学があると

誇り高くてやっかいだなぁ。

はい、今から大納言様の屋敷に行け」


と、宣孝は言った。


「わしの勘だがいずれ

大納言、藤原兼家様が

力を持つ。

今宵は東三条殿におられると聞いた。

はい、今宵しかない。

行って推挙をお願いしろ。

いいな、わしの言うとおりに

しておけば間違いない。

ちやは殿、邪魔をした」


言うだけ言うと、

宣孝は立ち上がった。


「はい」


と、促すように為時に声をかける。


「はい、って…」


為時は困った顔を浮かべた。



東三条殿では、

道隆が笛を披露している。


幼子と遊んでやっている三郎。


詮子は


「三郎はまことによい子ね」


と褒めた。



為時は宣孝に促されたように、

しぶしぶ東三条殿へと

向かったのだが…


「大納言様は今宵、

どなたにもお会いにならぬ」


と、平惟仲に門前払いされる。


「そこをなんとか…

ご在宅と聞いて伺ったのだ」


「できぬ。お見えになったことは

お伝え申した」


「ではこれを…

せめてこれを…お渡しください。

よしなに頼む」


為時は文を渡し頭を下げた。




「三郎、帝ってどんなお顔かしら?」


二人きりになった詮子は

弟に尋ねた。


「知らないよ、そんなこと」


「いかに立派な帝でも、

お顔だちが好きでなかったら

皇子を産むのはかなり

つらいと思うのよね。

入内が決まってから

それが心配で眠れないの」


「床入りしてだんだん

好きになるんじゃないの?」


「三郎!そんなことを

口にしてはいけません」


恥ずかしそうに詮子が言う。


「だって姉上が言い出したんだよ。

姉上が皇子を素早く産めるか

どうかで我が一族の命運が

決まるんだから

頑張ってくれよな!」


三郎は興味もなさそうで

そんなことを言っている。


「やめて、父上や兄上みたい」


詮子は真顔になる。


「三郎だけなのだから、

このような話ができるの。

兄上たちがこんなこと聞いたら

火がついたように怒るわ」


「俺は怒るのあまり好きではないんだ。

学問も好きではないけど」


「父上の子なら元服したら

何もしなくても偉くなれるわ。

姉は帝のお妃だし」


詮子は三郎が可愛いのである。


「兄上が二人もいるから

俺の出番はないよ。

あ…でも、名前なら書けるよ。

足でも書ける。

やってみようか、見てて」


三郎は足に人形を

筆のように挟むと

床に1、2、3…と

字を書く真似をする。


「おかしな子」


と詮子は笑う。


「帝が三郎みたいに

面白い方だといいけどな」


そこにイライラした様子の

道兼が通りかかる。


邪魔だとばかりに、

道兼は三郎を押しのけた。


「わっ!」


片足で字を書いていた

三郎は転んでしまう。


「あっ。何をするの兄上!

三郎は何もしていないのに!」


詮子が咎めるが道兼は去っていく。


「いいよ、慣れてるから。

いくよ、もう一回いく」


と三郎は笑った。



まひろはちやはに連れられて

願かけのお参りをしている。


「我が夫、藤原為時、

来る除目にて何とぞ

式部省の少丞に

任じられますように」


険しい道を登っては


「何とぞ式部省の少丞に

任じられますように」


と繰り返す。


疲れてきたであろうまひろに


「そなたはもうよい。

そこで座っておれ」


ちやはが声をかけると

まひろは腰掛けて、

お祈りを続ける母の背中を見た。




この時代、男が嫡妻のほかに

妻を持つことは珍しくなかった。


為時もその例外ではなく

度々、家を留守にした。


夜になっても為時は

帰ってこない。


まひろはそれが腹立たしい。


「母上。母上が毎日願かけをして

父上のことをお祈りしているのに

なぜ父上は今宵も家を空けて

平気なの?」


「私の里が豊かであれば

こんな苦労はしないで

済んだのです。

夜のお出かけに文句なぞ

言ってはならないわ」


と、ちやははまひろを

優しく諭した。


この時代は妻の実家の力も

重要であった。


「願かけをしてくれる

母上より他の人がいいんだ」


大人びて宣孝に今日は

誰の所に行くのかと

尋ねるようなまひろでも、

本音はそういう男たちが

理解できなかった。


「私のこともいいと

思ってらっしゃると思うわよ。

父上の気持ちも母の気持ちも

まひろがもう少し大人になれば

分かるわ、きっと」


そう言うとちやははまひろを

抱きしめてやった。


「さあ、もう寝なさい」


まひろはなんだか

釈然としないまま、

眠りにつくのだった。



貞元三(978)年、正月。


下級貴族たちの運命を左右する

除目が内裏、清涼殿で行われる。


除目とは天皇、大臣、

参議以上の公卿によって

行われる人事の会議である。


事前に希望する官職と

自分を売り込む申し文を提出。


公卿の審議を経て天皇が

承認すると官職を得られるのだ。


「うん…うん」


と、円融天皇が頷くたび

官職が決まっていく。


藤原文範が、

為時の出した文を読み上げる。


「私、藤原為時は

祖父が中納言まで登った

名門であるにもかかわらず

不遇の身です。

播磨権少掾を真面目に

勤め上げましたが、

今は無官にて妻と幼き子

2人を食べさせてゆくのも

困難な暮らしでございます。

昨今の式部省では

学識の乏しい者が重要な位に

ついておりますが…」


黙って聞いていた円融天皇が

はたと目を上げる。


「大学で首席を修めた私のような

者こそ式部省でお役に立つはず…」


「学識の乏しい者が

重要な位についておるとは

朕の決定に不服があるということか」


天皇は厳しい声を発した。


売り込みの文とはいえ、

為時は正直すぎたのである…。



この年も為時の官職は

決まらなかった。



ぼんやりしている為時のもとに

まひろがやってくる。


「おいで」


「それは何?」


「【史記】の【本紀】だ。

ここには偉大なる秦の始皇帝が

亡くなったあと、

新しい皇帝を操って

権力をほしいままにした

男の話が書かれている」


「怖いけど面白そう!」


とまひろは明るい声をあげた。


為時はまひろを見る。


「お前は書物が好きだな」


「はい、父上読んでください」


「おう、太郎も来なさい」


と、幼い長男を呼ぶが、

太郎は興味がなさそうに

遊んでいる。


「お前が男子であったら

よかったのにな…」


為時は愛おしそうに、

まひろを膝の上に乗せてやった。


「八月己亥、趙高乱を為さんと欲す。

群臣の聴かざらんことを恐れ

乃ち先づ験を設け

鹿を持ちて二世に献じて曰く…

馬なりと」


為時自身、よほど

熱心に研究しているのだろう。


書には線が引かれている。


「二世笑ひて曰く、

丞相誤れるか。

鹿を謂いて馬と為すと」


まひろは楽しそうに

聴いていた。




桜の季節となった。


「常に雪に映して書を読む。

少より清介にして

交遊雑わらず

後に御史大夫に至るなり。

宋略車胤、字は武子」


…太郎は全然聴いていない。



籠の鳥にまひろが

餌をあげている。


ちやはが帰ってきた。


「ただいま」


「お帰りなさい」


「その子もおなかを

すかせているのね」


まひろは寂しそうに答えた。


「もう餌がないので…

いっそのこと外に放してやったら

どうかしら?

外には餌がいっぱいあるでしょ」


「一度飼われた鳥は

外の世界では生きられないのよ。

だから最期まで守ってやらなければ

ならないの」


母の言葉にまひろは鳥を見つめる。


「もっともっと仕立物に

精を出さねば」


為時の仕事がないぶん、

生活はちやはにかかっていた。


「お方様」


熊丸が口にした。


「実は親戚の家で男手が

必要となりまして…」


「えっ、お前まで出ていってしまうの?」


「申し訳ございませぬ」


「顔上げなさい。

今までよう勤めてくれました」


困窮しているせいで、

皆が去っていく…


まひろは寂しげに

鳥を見つめた。



為時一家が困窮を極める

この年の春、

関白・藤原頼忠の娘、

遵子が円融天皇に入内。



続いて秋の初め、

大納言、藤原兼家の娘

詮子も入内した。


そしてこれを機に

兼家は右大臣に昇進した。



円融天皇は詮子に


「よう参った」


と、声をかけた。


緊張している様子の詮子に


「今日は暑かったのう」


と、天皇は優しく言う。


「仲よくやってまいろう」


「もったいないお言葉、

痛み入ります」


「そのように気張らずともよい」


天皇は軽い調子で言った。


「私こそお上のために

この命、ささげ奉ります」


天皇は思わず吹き出してしまう。


「フッ…ハハハハ…

大仰なところが父親に

よう似ておる」


朗らかな天皇に、

詮子も笑みを見せた。


為時の任官を却下したときには

怖い様子の円融天皇であったが、

人には様々な面があるものである。


少なくとも詮子にとっては、

天皇が嫌な人だったら、

という心配はなさそうであった。




この夜、安倍晴明の館に

雷が落ちた。


屋敷は一気に燃え盛る。


従者の須麻流が


「予言された凶事とは

このことでございますか?」


と尋ねたが安倍晴明は


「いや…これからだ」


炎をじっと見つめた。



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第一回、前半部分は

各キャラクターたちの

顔見せがメインのような

展開となっている。


藤原◯◯がやはり多いのだが、

こうしてドラマとして観ると

それぞれ個性が違っており

本で読むよりはわかりやすかった。



まひろの父、為時は

いわゆるプータローのような

状態である。


この時代は官職が得られないと

下級貴族は仕事にありつかなかった。


貴族であるがゆえに、

簡単に転職などもできず

ましてや為時は漢詩を

諳んじるほど頭が良い。


子供たちには優しい父でもあるが、

誇り高い部分もあるのか、

大納言である藤原兼家に

堂々と取り入ることもせず

親戚で友人でもある宣孝に

注意されている。


この宣孝は飄々として面白い、

親戚のおじさんといった感じだが

実は後にまひろの夫となる…


かなり年齢は離れていたようで、

結婚後、程なくして

亡くなってしまうようだが…


同族内での結婚は、

この時代とくに

おかしなことでもなかった。


実を言うと鎌倉時代の

鎌倉殿の13人でも、

小四郎の最初にして

最愛の妻だった八重さんは

実は小四郎の年が近い叔母である…


ちょっと話が逸れたが、

為時は基本的に生真面目である。


であるからこそ、

自身の推薦文に余計なことを

書いてしまうために

円融天皇の不興を買って

またもや、職を得られず…


天才にありがちなタイプというか…


頭は良いけれども、

人の心を読むことはあまり

得意ではないのかもしれない。


このあたりが、

宣孝とは対照的な性格だ。


ちなみに宣孝もそうだが、

為時も妻をべつに持っており、

たびたび家を留守にする。


これもこの時代は、

こういうものであったと

言うしかないし、

真面目な為時すらそうだから

不倫でも不義でも浮気でもなく、

それが当たり前でもあった。


が、さすがに幼いまひろは、

一生懸命、父のために願かけを

している母を気の毒に思う。


しかし為時は為時で、

賢いまひろのことを、

お前が男子であったらなぁと

可愛がっており、

他に妻がいるからといって

家庭を蔑ろにしているとか、

そういうことでもない。


この辺は複雑なところだが

そういう、時代なのだと

割り切ってみるほうが

良いだろう。



もう一人の主人公ともいえる、

藤原道長…三郎。


こちらも同じ藤原家だが、

為時、まひろの家よりも

位の高い貴族である。


長男の道隆は優しく

穏やかな様子ではあるが

父の兼家は権力を得るために

娘を入内させることに

躍起になっている。


次男の道兼は乱暴で

怒りやすく、

なぜか三郎にはとくに

きつくあたっている。


道兼は後半にとんでもない

事件を起こしてしまうのだが…


三郎はのんびりと

マイペースな性格であり


「争いが嫌いなんだ」


と自分で言っているように、

父や兄とは違ってこの頃は

とくに上昇志向などは

ほとんどなさそうだ。


このまま大人になるのか、

そうではないのか。


後に最高権力者となる

藤原道長であるだけに

どんなふうに育っていくのか、

まひろとともに、

注目していくべき人物だ。


やがてまひろとも恋に落ちる。


この一話でも後半、まひろとの

不思議な縁が作られていく。



前半は為時の貧乏さが、

ちょっと哀れではあるのだが

都は雅な様子であるし、

円融天皇も気難しそうな

一面はありながらも、

詮子には優しい笑顔を

見せるなど、

華やかな平安時代…


といった感じで

時間が流れていく。


別の記事にも書いたが、

こうした映像がとても綺麗で

上質なアニメを観ているような、

そんな前半であった。



が、オープニングが

非常に独特というか

昼ドラのようだと

すでに批判も起きているのだが…


美しいだけではなく、

官能的な感じで

大河ドラマでは珍しい。


脚本家の大石静さんが

セックス&バイオレンスを

描きたいと言っているから

確かにイメージ通りではある。


源氏物語自体が、

要は男女のあれやこれやを

色々と書いてる書物だし。


セックス、といっても

なにもそんないやらしい

ことばかりではなく、

男女の絆としても

大切なものでもある。


とはいえ配信の時代でも

一応、日曜夜20時に放送する

家族でも見られるドラマなので

そんなあまりにもエロくは

ならないと思うがw


バイオレンスのほうは…


すでに一話の後半が、

バイオレンスである。


バイオレンス&ホラーであった。



有名な陰陽師、

安倍晴明は「せいめい」ではなく

「はるあきら」として、

登場している。


不吉なこと、を予言していて

一話の前半では自宅に

雷が落ちているのだが、

安倍晴明が予言した

不吉なこととは何なのか、

それがあのバイオレンスなのか?


それとももっと後のことを

見通していたのか?


安倍晴明は狂言回し的な

読みきれない存在になりそうで

これまた面白い。


SFドラマではないから

鬼や妖怪と戦う、

あの陰陽師のような

スタイルではないが、

何を考えているのか

よくわからない…


言っていること、

起こすことも真実か嘘か

よくわからないところは

むしろ、当時の陰陽師を

ちゃんと再現しているのでは

ないだろうか。



前半はまひろも三郎も可愛くて、

まひろは家が困窮していたり、

三郎も兄貴に疎まれていて、

少し不穏ではあるものの、

比較的まったりとした印象だった。


まさか後半に、

あんなことがあるとは

この時点では俺は考えて

いなかったのである…



為時とまひろは、

文が好きという共通点を持つ。


だが、このとき為時が

教えてあげた馬と鹿の話は、

もしかしたらこのドラマ全体の

テーマになるのかもしれない。