どうする家康第46回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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どうする家康

第46話「大坂の陣」後編




開戦を決めた家康は、


「南無阿弥陀仏」


と筆を動かし心を鎮めていた。



「わしが家康の首をあげる!」


「徳川はどう出るであろうか」


「徳川への恨みを忘れたことはない!」


と、大坂方では牢人たちが

気勢をあげている。


「徳川の世はもうごめんじゃ!

何としても武功を挙げねば!」


牢人たちのほとんどが、

関ヶ原で敗れ改易となった

武士たちである。


彼らにとっては、

この一戦で徳川を倒せるかは

まさに死活問題だった。


「一同!静かにせよ!」


と、長宗我部盛親が号令する。


大野修理治長が続いてくる。


「我らの殿、秀頼様ならびに

おふくろ様、千姫様がお見えである!」


秀頼、千姫、そして茶々は

皆の戦意高揚のために

やってきたのだった。


「豊臣に忠義をつくしてきた皆々、

苦しくひもじく恥辱に耐える日々を

送ってきたことであろう。

よくぞここに集ってくれた、

心より礼を言う!」


あの幼かった秀頼が、

立派な若武者となり

皆を鼓舞している。


その姿に目頭を押さえる

牢人すらいた。


「あれなるは大谷刑部が息子、

吉治にございます」


「大谷吉治、我が父

刑部少輔吉継の無念を

晴らしに参りました」


と、大谷吉治が秀頼の前に

膝をついた。


さらに修理が紹介する。


「黒田家に仕えた暴れ馬、

後藤殿!」


「後藤又兵衛正親!

卑劣なる古狸を退治致しまする!」


後藤又兵衛はあの秀吉の軍師、

黒田官兵衛に仕えた豪傑。


現当主であり徳川方についている

黒田長政との折り合いが悪く、

牢人生活を送っていた。


千姫はうかない様子で

佇んでいる。


「関ヶ原の武功の者!

明石殿!」


「明石全登!

秀頼様の御為、大暴れ

いたしまする!」


「そして一度ならず二度までも

徳川に勝利したる者!」


その男は一同からやや

離れた場所に、

遠慮がちに座っていた。


「真田殿!」


「真田信繁にございます。

我が真田家が武田信玄より

受け継ぎし兵法の全て、

お見せいたしまする」


真田信繁は落ち着いた様子で

頭を下げた。


「頼りにしておる」


と、秀頼が言う。


「はっ」


徳川を二度撃退したのは、

信繁の父である昌幸なのだが

息子の信繁が、

その采配を見てきたのは事実。


信繁にはひときわ大きな期待が

かけられていた。


茶々が皆を見回す。


「世を欺いて天下をかすめ取った

卑しき盗人が言いがかりをつけ、

豊臣を潰しに来た。

かような非道、許されてよいものか」


茶々は一歩進み出た。


「そなたらは皆、我が息子である。

豊臣の子らよ、

天下を一統したのは誰ぞ!!」


茶々の呼びかけに牢人たちは


「太閤殿下!」


と声を揃えた。


「正しき天下の主は誰ぞ!」


「秀頼様!」


「いまこの時、徳川家康を

討ち滅ぼし天下を我らの手に

取り戻そうぞ!!」


牢人たちは吠えるように

応!!と叫んだ。


茶々は秀頼を見る。


秀頼も口を開いた。


「亡き太閤殿下の夢は

唐にも攻め入り海の果てまでも

手に入れることであった。

余はその夢を受け継ぐ。

共に夢を見ようぞ!!」


若い殿様の檄に皆が

歓声をあげた。


武者たちの士気は

大いに上がっている。


茶々は千にも呼びかける。


「お千や、そなたも

豊臣の家妻として

皆を鼓舞せよ」


千は悲しそうに秀頼を見ると、

自ら進み出た。


「…豊臣の…ために…

励んでおくれ!」


美しい奥方の言葉に、

男達はさらに大きな声で

応えた。


皆が笑顔でお互いを

励ましあっている。


茶々は満足げに微笑んだが、

千は俯いていた。


こうして男達は死にに行く。


愛する夫か、それとも祖父か。


いくさはこうして、

止められないものへと

なっていくのだ。


その残酷さに千は

悲しげに震えていた。



慶長十九年・冬。



徳川方は総勢三十万に及ぶ

大軍勢を持って天下一の

城塞都市、大坂へ進軍。


対する豊臣は十万。


十四年ぶりの大いくさ、

大坂の陣の始まりである。




さすがに年老いた家康は

家臣の手を借りながら

ゆっくりと歩いている。


家康は大坂城の南、

一里ほどにある茶臼山に

本陣を構えていた。


そして豊臣のもとを離れた

片桐且元を徳川方に

迎え入れていた。


「この度はお助けくださり

御礼申し上げます。

この命、徳川様の御為

尽くしまする」


「片桐…大坂の内側、

大いに教えてもらいたい。

期待しておる」


「はっ!」


本多正純が家康に報告をする。


「此度、いくさが初めての兵が

多ございますゆえ、

渡辺守綱殿に若い奴らを

仕込んでいただいております」


渡辺半蔵守綱もだいぶ

年老いたが、

まだ気力は衰えていない。


「近頃の若いのは

どうしようもないわ。

いくさを知らんくせに

血気盛んで言うことを聞かん!

おまけに礼儀を知らん!」


家康は半ば呆れて言った。


「お前に言われたら

世話はないわ。

皆々、この守綱じいはな、

若い頃、わしの頭を思い切り

ぶっ叩いたんじゃ」


その通り守綱は、

三河一向一揆のときに

本證寺へ潜入した

若き日の家康に気づかず

顔くらい洗え、あほたわけ!

と、頭を思い切り叩いていた…


「あ…それでも殿は

お許しくださった、

お優しい…!」


ばつが悪そうな守綱を

からかうように家康が続ける。


「一度たりとも許した覚えはない」


「えっ?」


慌てて守綱は膝を折る。


「ぶったたいてくだせえ!」


バシン!!


とぶったたいたのは、

本多正信である。


守綱どころか正信は、

家康の頭を鉄砲で

撃ち抜こうとすらしたのに

良い気なものだ。


家康は笑った。


「ハッハッハ…守綱、

そなたのような兵が…

わしの宝であった」


古参の家臣に対する

最高の賛辞だった。


「その全てを若い兵に伝えてやれ」


「ははっ…!」


守綱が立ち上がると、

正信も頷いた。


三河一向一揆の折には

家康に敵対した二人。


多くの家臣がこの世を去り、

はからずもそんな二人こそが

こうして最後まで家康を

支え、冗談を言える相手として

生き残っている。


家康の顔がほころんだ。


「父上」


秀忠が声をかける。


「うん」


「前方には伊達、前田

藤堂らを配しております」


布陣図を見せながら

秀忠が説明する。


「東には上杉を、

北の備えには片桐を」


かつて関ヶ原開戦の

きっかけのひとつとなった

上杉景勝もいまや、

家康に臣従し心強い

味方となっている。


「四方から取り囲んで…」


戦術を説明しようとする秀忠は、

江に頼まれていたように

なんとか自分が総大将として

このいくさを収めたい、

という気持ちがある。


が、そんな秀忠を家康は止める。


「秀忠。

指図は全てこのわしが出す。

そなたはそれに従え。

よいな」


そう釘を刺されては

秀忠は下がるしかない。


家康の真意を知っている

正信が険しい表情でそれを

聞いている。


「このいくさの責めは

全てわしが負う。

おのおの陣へ」



こうして大坂・冬の陣が

開戦した。


大坂城の周辺で

徳川勢と豊臣勢の局地戦が

繰り広げられていった。



「ひるむな、前へ、前へ!」


豊臣軍は懸命に徳川軍へと

攻撃を仕掛けていったが、

やはり兵力の差は歴然である。


「ここは持ちこたえられん!」


「引け!引け〜!」


その全てで数に勝る

徳川勢が勝利を収めていった。


しかし、豊臣が話し合いに

応じることはなかった。



「何も案ずることはない。

この大坂は難攻不落。

我が父が築いた天下一の名城。

籠城すれば落ちることはない」


と秀頼が諸将に声をかける。


それは偽りでもなく、

徳川は三倍近い兵力を

備えているとはいえ、

籠城戦というのは

堅固な城であれば

三倍くらいの兵力ならば

跳ね返せるものだ。


とくに大坂城は、

秀吉が晩年に築いただけあり

防御設備も整っている。


「仰せの通り。

備前島に大筒を並べておるが

あんなこけおどしに

頼るようでは徳川も

落ちたものよ」


と、修理が余裕を見せる。


備前島から大坂までは

通常の大筒ならば、

ぎりぎり届かないくらいの

距離がある。


「それに敵は大軍といえども

長らくの太平を貪ってきた

飼いならされた犬。

翻って我らの兵は

この時のために鍛錬を

積んできた手柄に飢えた虎よ。

負けるわけがない」


茶々も力強く言い放った。


事実、徳川軍の武将たちは

世代交代もされており

このいくさが初陣、

という者も少なくはなかった。


まだまだ、どちらが勝つかは

わからない…


そうした状況である。



年老いた家康は疲れが

溜まっているのか、

咳き込む。


「大御所様」


「大丈夫じゃ、いかがした?」


正純の報告は、

嬉しいものではなかった。


「前田勢ら合わせて数千が

討ち死にいたしました」


家康は目を見張る。


「…あの出丸で」



銃声が轟く…


立ちはだかるは、

今は亡き真田昌幸の息子、

信繁が籠もる真田丸。


大坂城の南に築かれた

要塞には赤備えの真田隊が集い、

次々に徳川軍を打ち倒していた。


「この真田丸より先、

一歩も城に近づけるな!

構え!…放て〜!!」


信繁の命令により

放たれた銃弾が徳川兵を

貫いていく。


徳川軍は塹壕を掘って

進撃しようと試みるが

真田隊の奮戦の前に、

引かざるを得ない。


「乱世を泳ぐは…

愉快なものよ」


まるで父、昌幸のように

そう不敵に言いながら

信繁も自ら鉄砲を撃ち

敵を倒している。




「秀頼様!秀頼様!

真田の息子、

やりおりますわ!」


「敵は堀を掘って進んで

おりまするが顔を出せば

真田の鉄砲の餌食。

面白いように死んでおりまする」


と、毛利吉政が説明する。


茶々は笑った。


修理が進言する。


「家康は再三、和議を申し入れて

きておるが応じることはありませぬ。

我らは戦い続ける!」


修理が立つと諸将も立ち上がる。


「家康に死が訪れるその日まで!」


一同は、おう!と声をあげた。



家康はびっしりと、


「南無阿弥陀仏」


を書き連ねていた。


このままでは一向に

いくさは終わらない。


「正信…あれを使うことにする」


「あれ…」


秀忠の表情が曇った。


「父上、あれは脅しのために

並べておるのでは?」


正信は用意のために、

静かに陣を出ていく。


「本丸には届かんでしょう」


秀忠は止めるが家康は

恐ろしい顔で


「秀頼を狙う」


と告げた。


「さ、されど…そうなれば…」


秀頼を狙うということは、

その側にいる城の者たち、

すなわち女、子供といった

非戦闘員が犠牲になるだろう。


当然、千姫も、である。


「いくさが長引けば

より多くの者が死ぬ。

これが僅かな犠牲で

終わらせるすべじゃ」


家康は秀忠を見る。


「主君たるもの…

身内を守るために

多くの者を死なせてはならぬ」


瀬名、信康…


妻も息子も犠牲にして

ここまで生きてきた家康が

辿り着いた答えだった。



大坂城の北、

備前島には無数の

砲台が築かれている。


その中のいくつかは、

かつて三浦按針に用意させた

新型のカルバリン砲だ。


「かかれ」


と、正純が号令する。


大坂城のことを熟知している

片桐且元が


「今頃ならば秀頼は

本丸の主殿に。

おなごはその奥にいるかと

存じます」


と告げる。


「が…届きますかな」


国崩し、と言われた

フランキ砲ではおそらくは

届かない。


秀吉もそこは想定したうえで

築城していたはずだ。


正純にとっても

いちかばちかである。


「大坂城本丸に

狙いを定め!」


「本丸に狙いを定め〜!」


と号令が飛び、

兵士たちは弾を砲身に

詰め込んだ。


正純が采を、振るう。


「放てえ!!」


無数の大砲が一斉に

砲撃を始めた。


その音は家康本陣にも

響いてくる。


次々と砲弾が放たれていく。



城壁を打ち破り、

いくつかの弾が大坂城内へ

降り注ぐと女たちは

逃げ惑った。


おかしな様子に気づき、

諸将たちも様子を見に

外へ出る。


「大筒じゃ〜!

大筒じゃ〜!」


城内は混乱に陥り、

容赦なく弾丸が降り注いだ。


「何事じゃ!」


「申し上げます!

敵の砲撃にございます」


「卑劣な奴らめ!」


と、修理が吐き捨てた。


秀頼は即座に命令した。


「女たちを天守へ逃がせ!」


皆が逃げ惑う。


「早う!早うせい!」


と、茶々が皆に声を

かけている間にも、

城壁に弾丸がぶつかってくる。



且元は息を飲むようにして

砲撃の様子を見ていたが、

さらに冷たく伝えた。


「恐らく天守へ向かって

逃げるでしょう」


可能な限り砲弾がとどかない、

上へ…


「放てー!!」


正純はさらに命令を、下す。




「落ち着け!」


砲弾は天守にまで

届いている。


茶々は女たちを励ました。


「まやかしの脅かしにすぎぬ!

落ち着け、

上へ、上へ早う!」


床を這うようにして、

茶々は皆に命じた。


しかしふと見ると、

怯えた千が座り込み

動けなくなっている。


恐ろしい轟音といつ死ぬか

わからない恐怖。


混乱するのも無理はない。


「千…」


しかし止まっていては、

駄目なのだ。


敵の無慈悲な攻撃は、

やがてここにも、届く。


茶々は千の元へ向かおうとする。



次々と弾丸が放たれていく。


遠く離れた本陣から

様子を見ている秀忠にも、

あの着弾した先で、

どれほどの者達が

命を落としているのかはわかる。


「父上…やめてくだされ」


秀忠の耳に無情なる

砲撃の音が響いてくる。


「父上…!」


秀忠は家康に掴みかかった。


「やめろ!!

こんなのいくさではない!!」


やっていることは、

武の競い合いなどではない。


徹底的に相手の弱点、

非戦闘員を狙った

一方的な殺戮…


「父上!もうやめろ!!」


秀忠は涙する。


「これがいくさじゃ」


砲弾の先をしっかりと

見据えながら家康は

そう言った。


砲撃の音がこだましている。


「この世で最も愚かで…。

醜い…」


そう言いながらも

この自らがもたらしている

殺戮の責を負うように

家康は城から目を離さない。


「…人の所業じゃ…!」


苦しみを絞り出すように

そう言う家康の目からも、

涙が零れ落ちていた…


阿茶局も正信も、

そんな家康の心中を

慮るように辛そうに

見ている。


秀忠はただ泣きながら

千の、娘の無事を祈るしかない。



凄まじい砲撃音と悲鳴の中、

侍女たちの死体に囲まれ、

茶々は軋む天井を見る。


崩れる…


そして、その下にいるのは

動けない千だった。


「ああ…あっ…」


茶々は咄嗟に千に駆け寄り、

覆いかぶさった。


その瞬間、

音を立てて天井は落ちた。



砲撃が止み、

静寂の中で千は

目を覚ます。


「は…義母上。

義母上?義母上!!

誰か!!」


千を庇った茶々は、

意識をなくして倒れている。


千が辺りを見渡すと、

あの美しかった城が

まるで廃墟のように

破壊され…多くの侍女たちが

下敷きとなり、

死んでいた。


この無数の死をもたらしたのは、

自分の祖父、家康…


城の天井には丸々と

穴が開き光が射し込む。


「義母上…。義母上!」


千は泣きながら茶々に呼びかけた。



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大坂の陣で活躍した、

豊臣方の武将は

俗に大坂五人衆として

よく知られている。


長宗我部盛親、

真田信繁、毛利吉政、

明石全登、後藤正親。


長宗我部盛親は、

あの四国を席巻した

長宗我部元親の息子である。


毛利吉政は「毛利勝永」の

名前のほうが有名だが、

一次史料では「吉政」と

なっている。


真田信繁の「幸村」と同じで、

後世、作られた名前の

可能性があるため、

本作は勝永ではなく

吉政が採用されている。


後藤正親もおそらくは

「基次」のほうが

有名なのだが本人は

「又兵衛」と名乗っている

ことのほうが多いうえに、

書状では「正親」と

書いていることから

本作は正親になっている。


明石全登は宇喜多秀家の家臣。


ほとんどの牢人たちは、

関ヶ原で敗れた者達で

構成されている。


この頃、徳川軍は

諸大名を集めた連合軍として

大坂を囲んだ。


上杉景勝や伊達政宗のような

いくさ経験の多い者はいたが…


このいくさが初陣、

という武将も多かったようだ。


ちなみに四天王の四家も、

井伊直孝、酒井家次、

榊原康勝、本多忠朝、

と代がわりしている。



真田丸を築いた真田信繁は

「真田幸村」としても

非常に有名であり、

歴史に詳しくないひとでも

その名は聞いたことが

あるとは思うのだが…


この信繁が築いた真田丸は、

かつて大河ドラマの

タイトルにもなった、

鉄壁の要塞だった。


ところが実は信繁自身は、

それほどいくさ慣れを

しているわけではない。


信玄や勝頼のもとで

活躍していたのは、

父親の昌幸のほうだし

徳川軍を破ったのも

昌幸の采配によるものである。


とはいえ徳川軍を

二度も撃退している

「真田」の名前への

周囲の期待は大きく…


ドラマ「真田丸」では

その重圧を感じる信繁、

という姿も描かれている。


が、やはり信繁も昌幸の子…


いくさに関しては

天才的だった。


信繁は上田城を守るために

父の昌幸がいかにして

戦い抜いたかを熟知していた。


真田丸の奮戦は凄まじく

実に一万近い徳川軍を

葬ったとされている。



そもそも籠城戦というのは、

囲まれたら負けかというと、

絶対にそうとは言い切れない。


ドラマの中では豊臣軍10万、

徳川軍30万、とされているが

城攻めは3倍から10倍近い

兵力がないと簡単に落とせない、

とされている。


つまり30万でぎりぎり、

といったところだ。


ましてや30万もの軍勢は、

ただ多い、というそれだけで

弱点を抱えている。


兵糧の問題である。


人がいる、ということは

必ず食料が必要になる。


30万人が食える量を、

それも城を落とすまでの間

食いつなげる食料を

用意すること自体が

大変なことであった。


ドラマでは省かれているが、

このとき大坂方は堺周辺の

米の買い占めをしていたとされる。


徳川軍は兵糧との戦い、

という側面もあっただろう。


徳川は講和を望んでいる、

という報告もなされていたが

つまりは誰しもが、

命を奪い合う「決戦」を

期待していたわけでは

ないのだ、ということ。


家康からしてみたら、

秀頼が降参さえしてくれれば

それで良かった可能性もある。


が、大坂方は真田丸の

奮戦もあり戦意は衰えず、

それならば、と家康は

ついに大筒を使うことになった。


大筒は大坂の陣の前から

フランキ砲と呼ばれる大砲が

輸入されてきており、

大友宗麟などが

これを「国崩し」と呼び、

活用していた。


射程は300〜400メートル、

とされている。


当時の大砲は爆弾を

飛ばしているわけではなく

重い鉄球を撃ち出している

イメージなのだが…


それでも物理的な破壊力は

相当なものがあった。


家康がイギリスから

購入したのはさらに

飛距離と威力が大きい、

カルバリン砲とセーカー砲

だったと言われる。


ちなみに家康が大砲を

大量に配備していたのは

大坂城の北、備前島。


この備前島から大坂城までは

約500メートルというところ。


つまりはこれまでの

大筒であったら、

ぎりぎり届かない距離であり、

豊臣の諸将があれは

脅しのために置いているだけ、

と考えてしまったのも

無理はないともいえる。


この配置は絶妙だし、

狙ってやっていたのなら

家康の恐ろしさがわかる。



大筒を発射させたときの、

家康の苦渋に満ちた涙は

とても印象的だった。


このシーンはあの長篠で

鍛え抜かれた武田兵を

信長が虫けらのように

殲滅していった様子と

良く似ている。


あのときはその凄まじさに

信康も家康も愕然としたばかりか、

信康はこのいくさを期に、

心を病んでしまった。


「これがいくさか、

これはなぶり殺しじゃ」


と訴える信康に、

家康は答えを返してやれなかった。


が、今の家康は違う。


家康が今回仕掛けたやり方は、

信長以上に無慈悲で

なおかつ効率的な


「人の殺し方」


である。


家康は目を背けることなく


「これがいくさ、

愚かな人の所業じゃ」


と、その身をもって

秀忠に伝えている。


秀忠には恨まれるかもしれない。


それでも、

これが答えなのだ、と。


だから、お前はこうなるな、

父のようにはなってくれるな、と。


思えば長篠でショックを受けた

信康に対して家康は、

それをフォローすることもなく

それから人が変わったように

戦い続ける信康のことを、

自分よりいくさの才があると

褒めそやしていた。


そのために瀬名から、

信康が危ういと言われても

気付けなかった。


その経験があるからこそ、

今回こそ家康は秀忠に

答えてやった。


前半に描いたことが

見事に繋がる、

すごいシーンだと思う。


そしてあの辛さに満ちた

家康の涙、あの表情こそ

この一年かけて本作を

観続けた甲斐があったと

思わせてくれる、

残酷だが素晴らしい

場面になっていた。


「いくさは嫌でございます」


などとは家康は言わない。


嫌だ、なんてことは

当たり前のことであって

それでもやらねばならない、

そういう時代だった。


そしてその時代をもう、

終わりにするためにこそ

最後のいくさを行っている。


秀忠に禍根を残さないためにも。


徹底的に残酷で、

無慈悲な方法で…。


愚かといえば、愚かでもある。


世界中で行われている

戦争というのはこういうものだ。


誰にでも正義はあり、

理由はあり、

それでも人を殺す、

というのはこんなにも

残酷で愚かな行為だ。


そのことをちゃんと、

視聴者に伝える主人公として

家康が描かれている。


今回の家康のやり方は

決して美しくもなければ

正義の味方などではない。


遠くから、戦えない

非戦闘員を次々と殺し

相手の戦意を奪う。


しかしこれが一番、

犠牲を少なくする方法なのも

否定はできない。


秀頼であれ孫の千姫であれ、

死んでくれれば相手の戦意は

ガタ落ちとなる。


あのまま真田丸に

何度も突っ込んだところで

死人は増えるだけなのだから。



そんな無慈悲な家康に比べ、

茶々は咄嗟に千姫を庇う

行動に出た。


これも良い描き方だと思う。


このいくさを招いた一端は

間違いなく茶々ではある。


そして茶々は千姫のことを

時には姑としていじめている

ような描写もあった。


が、実際には千姫は

妹の子供でもあり

可愛い姪なのだ。



おそらく茶々という人は

情が深く…そして深いゆえに

母の無念を忘れられないし

忘れられないからこそ、

家康を殺したいと思ってしまう。


秀吉に対してもそうだった。


死の床にある秀吉に

ひどい言葉を投げつけながら、

いざ秀吉が死んでしまうと

涙を流していた。



もしかしたら、

茶々も家康と同じように


「乱世の残りを消し去るために」


戦っているのかもしれない。


もちろんわざわざ負けたいとは

思っていないだろうが、

乱世の怪物、家康を殺すか。


それとも、乱世の生き残りを

全員、道連れにして

家康に殺されるか。


いずれを天が選ぶにせよ、

それで乱世は終わるのだ、と。



残すはあと2回。


世間からの評価も

上がっている。


残された少ない時間を

楽しみたいと思う。