どうする家康第32回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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どうする家康

第32回「小牧長久手の激闘」後編






「殿の策を示す…

三河中入り!

この中入り勢はただの

囮にあらず。

大軍をもってまさしく

岡崎を落とすものである!

家康本軍は必ずや

出てくるであろう」


秀長が全軍に対して、

指示を飛ばした。


秀吉が口を開く。


「中入り勢は池田勝入、

森長可…加えて、

堀秀政、そして…

総大将は我が甥、

羽柴秀次とする!」


堀秀政はかつては

信長の小姓も務めていた忠臣、

秀次に関しては秀吉の甥で

この頃、息子がいなかった

秀吉にとっては、

後継者候補でもある。


池田、森だけには任せない、

というところが、

彼らへの牽制も兼ねていたの

かもしれない。


「三万の兵をもって

岡崎を落とせ!」


秀吉の号令とともに、

大軍が動き出した。




「中入り勢、出ました」


加藤清正が報告する。


「虎之助、物見を怠るな。

家康が小牧山を出たら

ただちに追い討ちをかける」


と、秀長が声をかける。


この加藤清正、そして

福島正則も、

息子がいない秀吉がまるで

我が子のように可愛がって

育て上げた猛将たちだ。


「さあ…岡崎を灰にしてまうか?

出るか…?

どうする家康」


秀吉は面白そうにつぶやいた。




三万もの大軍が移動を

開始していることはすぐに

家康にも伝わる。


「敵が動き出しました。

およそ三万、さあ出てこいと

ばかりに悠々と東へ

進んでおります」


「間違いなく中入りでござる」


酒井忠次の報告を受け、

石川数正も確信する。


家康も予想通りとばかりに


「案の定じゃな」


と答えた。


城の外からは


「どっこい!どっこい!」


と、堀を掘る声が聴こえてくる。


狙い通り、とばかりに

忠次は微笑んだ。




秀吉の大軍が迫っていることは

岡崎城にも当然、伝わる。


「申し上げます!

敵の軍勢、こちらへ

向かっておるとのこと!」


「皆!たとえ如何なる

強敵がこようとも

この岡崎は我らの手で

守り通す。

徳川の力を信じようぞ!」


と、於愛の方が声をかける。


女達は、おう!と答えた。


正室ではない於愛だが、

立派に瀬名の代わりを

果たしていた。




深夜、家康本陣では

皆が、ある報告を待っている。


総大将のはずの信雄は、

うつらうつらしているが

家康は城の外を眺めていた。


「殿!」


忠次が呼ぶ。


直政、平八郎、小平太が

ついに報告にきた。


「充分かと」


「ようやった」


と、家康が小平太に頷く。


「ぬかりはございませぬ」


直政も胸を張る。


「いや〜、くたびれ申した〜」


本多正信がさも働いたかのように

そんなことを言うと


「お前、やっとったか!?」


と、平八郎が突っ込んだ。


「…やっとった、やっとった」


「汚れとらんぞ!」


ともあれこれで、

家康側の策は完成した。


「皆の者、これより敵の

中入り勢を叩く!

万事、手筈通り!」


数正が号令する。


「この一戦に勝利すれば

羽柴秀吉の大軍勢、

バラバラと崩れていくに

違いない!」


忠次の言葉に皆が「ハッ」と

声を揃える。


「弱く…臆病であったこのわしが

なぜここまでやってこられたのか…

今川義元に学び、

織田信長に鍛えられ、

武田信玄から兵法を

学びとったからじゃ」


と、家康は皆に伝えた。


これまで死んでいった、

強者たち…


その中にはかつての

主君もいれば恐ろしい敵もいる。


だが彼らの生きた証は

家康の中に刻まれている。


「そして何より、

よき家臣たちに恵まれたからに

他ならぬ、礼を申す」


家康は皆を見た。


とくに直政、平八郎、

小平太らはもう、

部隊を率いる将にも関わらず、

皆に混じって泥まみれになり

今回の策に貢献してくれた。


「このいくさは、

我らの最後の大いくさと

なるやもしれん…いや!

せねばならん!

今こそ我らの手で

天下を掴むときぞ!」


家康は拳を握りしめ、

皆が吠えた。


「出陣じゃあ!」


正信も感慨深げに

家康の声を聴いている。


皆が出ていく中、

信雄も頼もしそうに

彼らを見つめている。


忠次も同じだ。


が、数正だけはどこか

悲しそうな表情を

浮かべていた。



小平太を中心に工事が

行われていたのは、

堀にする予定だった箇所を

正面の秀吉からは

見えないように

抜け道として作り変えること。


徳川軍はそこから密かに

小牧山城を後にしていく。




「まんだ、動かんか…」


「ハッ、城から出た様子は

ごぜえません」


秀吉の陣からは、

家康の狙い通り徳川軍の

動きはまったく見えていない。


秀吉も秀長も完全に

術中にはめられていた。


「堀を掘って守りを固める

ばかりでございますからな」


と、清正。


福島正則も


「我らの大軍を見れば

震え上がって出てこられんのも

無理はない!」


と大笑いした。


が、秀吉はジッと思案している。




「外へ出るぞ!

一気に駆け上がれ!!」


隠し通路からついに、

城の外へと

小平太の手勢が出陣する。




池田勝入は野営をしながら


「奴ら…岡崎を見捨てる気

かもしれんな」


と、口にした。


家康は動かない。


仮に岡崎を取られても

遠江、駿河の兵がゼロと

言うことはないだろうし、

あえて三河だけは一時的に

取らせてやる、

という戦略もなくはないのだ。


「ならば遠慮なく落として

しまいましょう」


と、森長可は答えた。


が、そこに銃声が聴こえてくる。


「敵襲!敵襲!

申し上げます、

最後尾の堀秀政勢、

羽柴秀次勢、

白山林にて徳川勢の

奇襲を受けております!」


伝令が駆け込んでくるが、


「そんな馬鹿な…」


と池田勝入は信じられぬ、

といった表情を浮かべた。


小牧山から兵が出たという

報告はないのに、

一体、どこから…


「いつ城を出たと言うんじゃあ!」



小平太…榊原康政勢を示す

「無」の旗印の兵達が

次々に堀秀政、羽柴秀次軍に

襲い掛かる。


「悪逆非道の秀吉に

思い知らせてやれえ!!

踏み潰せえ!!」


と、小平太は勇ましく号令する。


そして、自らも槍を振るって

敵兵を討ち倒した。



この小牧・長久手の戦いにおいて

一番槍を務め多大なる功を

挙げたるはいわば、

徳川四天王と称す一人、

榊原康政であった。



井伊直政は新しい紅に染めた

甲冑に身を包んでおり、

あの武田の赤備えの

兵達がそれに従っている。



直政は少年の頃を

思い出していた。



美しかった母、

奥山ひよ。


ひよは直政…虎松の顔に

そっと触れると


「仕官する気になってくれて

良かったわ…

そなたはまことに馬鹿な

悪童じゃが…

母に似て顔だけは綺麗だから」


と、笑った。


「見た目の良さは

天賦の才ぞ、

きっと徳川様のお目にとまる。

よいか、徳川様を天下一の

お殿様になされ。

井伊家の再興はそなたに

かかっておるんじゃぞ」


と、ひよは虎松に告げた。


虎松の実の父、

井伊直親は早くに亡くなり

ひよは奥山家へと再嫁した。


それもあって虎松は、

井伊家の跡を継いだ

おんな城主、直虎の

養子となっていた。


没落した井伊家の再興は

ひよの言うとおり、

虎松の出世次第だった。



が、幼かった虎松は

そうした事情もよく

理解できなかった。


ましてや今川領へと

進軍してきた家康を許せず

むしろ顔の良さを利用し、

女装して家康を襲う、

ということまでやらかした。


まさに、悪童、では

あっただろう。


だが、今、直政となった彼は

母が望んでいたように

家康を天下一の殿にする

一歩手前まできている。




「やってみせますぞ、母上。

行くぞ」


冷静に兵達に声をかけると、

赤備えの最強の兵達が直政の

後ろに続いた。



徳川本軍も出陣していく。




池田、森軍本陣。


「申し上げます!

長久手にて新たな軍勢、

金の扇が見えるとの

ことでございます!」


「家康じゃ…家康の馬印じゃ」


と、長可。


「大将、自らお出ましじゃ!

相手に不足なし、

出るぞ!!」


池田勝入が号令すると、

彼らも動き出した。




「家康を討ち取れぇー!!」


突撃していく池田軍。


砂煙の中現れたのは…


「あ…赤備え…?」


「武田…?」


「武田勢じゃあ!!」


眼前に現れた赤備えの軍勢に、

池田勢は恐れをなした。


武田軍の赤備えの伝説は、

まだ生きていた。


そんな敵兵を見て、

直政は誇らしく叫んだ。


「井伊直政勢、かかれえっ!!」


あの戦国最強と謳われた

武田信玄、勝頼親子を支えた

最強の兵士達が雄叫びをあげる。


さすがに池田軍も、


「ひるむな!

武田は滅んだ!

残党に過ぎん、

かかれ!」


と、立て直しながら

突撃を仕掛ける。


が、井伊を表す「井」の旗を

立てた直政軍は、

まさにかつての武田軍を

彷彿とさせる強さで

敵を倒していく。



後に神の君と呼ばれた

家康を守り旧武田勢を

率いて敵を撃滅したのが

徳川四天王、井伊の赤鬼こと

井伊直政。



「申し上げます!

中入り勢、長久手にて

徳川勢に襲われまして

ございます!」


「なにっ!?」


と、秀吉含めて皆が

驚きの声をあげた。


「家康本軍、突然現れ

既に合戦に及びたる由!」


「なぜ気づかなんだ!

物見は何をしとったんじゃ!」


秀長が叱責するが、

秀吉はやっと気づいた。


「堀ではねえ!

奴らがせっせと

掘っとったんは、

守るための堀ではなく

密かに討って出るための

抜け道だわ!!」


秀吉は兜を抱えると


「出るぞ!」


と、陣を出ていった。




秀吉を待ち構える

平八郎。


その槍、蜻蛉切の刃先に

蜻蛉がとまり、

飛んでいく。


とまった蜻蛉が

真っ二つになった、と

言い伝えのある蜻蛉切だが

その蜻蛉が切れていないのは、

殺気を抑えて落ち着き払った

平八郎の心情を表して

いたのかもしれない。



秀吉本軍を小勢にて

迎え撃ったのが、

徳川四天王、天下無双の

平八郎…本多忠勝。



「幾度のいくさで

かすり傷ひとつ負ったことなし、

我こそは本多平八郎忠勝!」


平八郎は両手を広げて

どっしりと構えて見せた。


「こっから先は!

一歩も通さん!!!」


かつて伯父、

本多忠真が残した言葉を

平八郎は口にした。


「かかれえっ!!!」


兵らに混じって真っ先に

平八郎は突撃し、

次々と敵兵をなぎ倒していく。


一振りで何人もの兵士が

吹き飛ばされる。


まさに天下無双の豪傑が

そこにはいた。



「申し上げます、長久手にて

三河中入り勢、総崩れ…

池田勝入、森長可殿、

共にお討ち死に!」


伝令の報告に、

さすがの秀吉の決断は早かった。


「引き上げじゃ」


もう、流れは完全に

家康のほうにある。


いくら秀吉軍のほうが

数が多いといっても、

これ以上無理をすれば

さらに敵の思う壺になる。



家康は引き上げる秀吉軍を

黙って見つめていた。




本陣へ帰ると家康は、

家臣らを褒め称える。


「皆の者、ようやってくれた!

我らの勝利である!

勝鬨をあげようぞ、

えい、えい…」


おう!!


と多くの者達が

誇らしげに吠えた。



が、そんな様子を見て

数正だけはやはり

浮かない顔でその場を

離れていった。




秀吉は本陣に戻ると、

呆然と立っていたが


「返って良かったわ。

言うこときかん奴が

おらんようになった。

ありがてえこった」


とつぶやく。


悔し紛れ…負け惜しみ、

ではあるけれど、

それもひとつの現実ではある。


織田家臣の筆頭のように

振る舞っていた池田勝入や、

生意気な森長可は、

徳川が討ってくれたわけだ。


秀長、清正、正則らも

複雑な表情となった。


「…わしの策ではねえ、

わしの策ではねえ…

わしの策ではねえ…

わしの策ではねえ…」


何度も取り憑かれたように

つぶやき続ける秀吉。


秀長らが真意を聞こうと近寄る。


「中入りはわしの策ではねえ。

池田が無理強いしてきた

策だっちゅうて言い回れ。

わしの言うことを

聞かんもんだで

こうなったと…」


「されど殿、

家康はどうなさいます?」


「あれは…強うござる」


若い清正と正則は、

改めて家康という男の

いくさの強さを学んでいる。


「まことにの〜う、

信長様のせいだわ。

徳川をさんざんこき使って

とんでもねえ軍勢を

育ててまったわ…」


信長の主要ないくさには

いつも家康が引っ張り出された。


あの白兎はごねたり

反発しながらも、

それに食らいついていった。


その姿を秀吉は近くで見てきた。


家康が秀吉の野心を

二十年見てきたように、

秀吉も家康の成長を見てきたのだ。


「まぁ、なーんも

案ずることはねえ」


秀吉は楽観的だった。


さすがに秀長が案じる。


まさか、家康がここまで

強いとは…


「どうやって家康に勝つんで?」


「家康には勝てんでも…

このいくさにゃあ、勝てる。

考えてみやあ、

敵の総大将は…へっ…

家康ではねえ」


秀吉の目はあくまでも、

ひとつの戦局ではなく

全体像を見ていた。


局地戦では勝てない。


しかし、最終的には勝てる。


単純ないくさの実力は

家康のほうが上だと認めつつ、

どうすればそれを上回れるか、

冷静に分析できる、

秀吉にはそんなしたたかさがある。




一方の家康陣営は完全に

勝利に酔いしれている。


「者ども、心置きなく飲めえ!」


と、総大将の信雄が

兵達に声をかけている。


「徳川殿、まことに

ようやってくれた、

これで秀吉に勝てる!

我らの天下じゃ!」


家康の手を握ると、

笑い転げた。


家康もやぶさかではない。


にこやかに笑っている。



正信はあれから仲良くなったのか

直政と並んで呑んでいる。


「ま、この勝利は

敵の策を見破ったこの切れ者!

本多正信でござろうなあ!」


と、杯をあげた。



徳川四天王…

残る一人は…いかさま師、

ではなく…



「皆の者!ここは海老すくいならぬ…

天下すくいでござるな!」


頼れる大黒柱、酒井忠次である。


このいくさの勝利は、

忠次が森長可軍を

いきなり討ち破ったところから

始まっていたのだから。



「どっこい!どっこい!」


「天下取るため。まもるため!」


「どっこい、どっこい!」


と、忠次の踊りに合わせて

兵達が喜びをあらわにしている。


直政も思わず近づいていった。


平八郎もいつになく、

嬉しそうだ。


「天下取るため、守るため!」


と、信雄も踊りだした。



楽しそうに見ていた家康だったが、

ふと一人だけ輪に入れず

呆けたように座っている

数正に気がついた。


家康は声をかけてやる。


今回、数正は慎重論を

唱えていたとはいえ、

ここまで来られたのは

数正がいたから。


そんなことは家康だけでなく

皆も理解してくれているはずだ。


「こんなときは素直に

皆と喜べ」


「…喜んでおります。

まさに会心の勝利。

平八郎も小平太も直政も、

まさに見事でござった。

されど…」


と、数正は口ごもる。


「されど?」


「…秀吉には勝てぬと

存じまする」


家康は怪訝そうな顔になる。


現に勝ったではないか、と。


「どういう意味じゃ?」


「ひとついくさを制しただけのこと。

秀吉は我らの弱みにつけ、

そこにつけ込んでくると

存じまする…」


数正が見やった方向には、

楽しそうに浮かれて


「我が天下!

我が天下じゃあ!」


と喜ぶ信雄の姿があった。




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出陣前の家康の演説は

非常に良かった。


今の彼があるのは、

今川義元に学び

織田信長に鍛えられ、

武田信玄から兵法を

学びとったから。


すでにドラマ内でも

こうして偉大な先人たちが

命を落としているのだが、

彼らのことは家康の中に

根付いている。


が、秀吉が一枚上手なのは

普通のいくさでは勝てない、と

見極めると標的を信雄へと

切り替えたことだろう。


秀吉のこうした天下への執念、

切り替えの早さというのも

後に家康は学んでいくのだろう。



石川数正が終始、

危惧していたのは

こういうことだ。


確かに四天王と呼ばれる

象徴的な存在が出来たのは

喜ばしいことである。


年長の酒井忠次はともかく、

まだ若い平八郎、小平太、

直政らが自分たちのあとを

託せるような名将へと

育っていくのは、

数正にとっても嬉しくない

わけがない。


徳川軍がかつてとは違い、

とてつもなく強いのは

間違ってもいない。


先に述べたように家康は

著しく成長し頼もしくなり、

それを四天王たちが支える。


三方ヶ原のときとは違い、

本多正信のような知恵者もいて

敵の策を見破ることもできる。


少なくとも局地戦、

戦術レベルの戦いでは

徳川は秀吉よりも強い。


そこはもうすでに、

秀吉自身が今回気づき、

認めるくらいである。


が、天下を取れるかどうかは

何もひとつのいくさで

勝てることを意味してはいない。


若者たちがひとつの勝利で

それを喜び次への糧とするのは

ごく当たり前のことだ。


が、それで天下を取れるなら

いくさにさえ強ければ

誰でも天下が取れることに

なってしまう。



数正の立場は難しかっただろう。


異論を唱えればせっかくの

皆の士気に水を差すことにもなる。



家康自身がまだ若く、

このまま何度も勝利すれば

天下が近づくと、

思ってしまってもいる。


これは家康がいまだに

完成されていない、

ということを意味しているだろう。



勝って兜の緒を締めよ、

という言葉もあるが

家康は数正に言われるまで

目前の勝利に酔いしれて

しまっていた。


ましてやこれが、

さらに若い信雄はどうだろうか。


信雄が狙われたら、

どうなるだろうか?


秀吉の野心というのは、

それくらいに深く、

どんなことでもしてくる

相手なのだから。



とはいえ、四天王の

大活躍に心が踊ったのも

間違いない。


今回はいくさの描写も

比較的、丁寧だったし

迫力もあった。


あの勝利を見せられると

家康強い!この徳川軍が、

秀吉に負けるとは思えない!


という気持ちにはさせられる。


つまり今回を観て、

四天王の活躍に胸を踊らされる

我々視聴者の気持ちは、

家康や兵士達の気持ちと

とても近いものであるといえる。



小平太の「無」の旗は、

実は由来がわかっていない。


「無欲無心」で仕えることを

意味していたとも言われるし

「無名の一兵卒で構わない」

という意味だったとも伝わる。


いずれにせよ、

榊原康政という人の

人柄の一端が伝わるような

そんな旗印である。




直政の過去が少し描かれているが、

直政の母は奥山ひよ。


直虎ではない。


大河ドラマ・直虎では、

直政の父、井伊直親は

直虎の許嫁だったのに

ひよ(大河ドラマでは、しの)と

結ばれて直政という子を

作ってしまっていた。


が、直親は謀反を疑われて

殺されてしまう。


そのためにひよ(しの)は

再婚することになり、

直政は直虎の養子として

井伊家の跡取りとなった。


このあたりは、

大河ドラマ・直虎を

観ていた視聴者への

ファンサービス的な

意味合いもあったかもしれない。


顔が綺麗であることを、

ルッキズムだなんだと

批判する連中がまた

いるけれども…


顔が良くて見出された、

というのは通説にある

エピソードだ。


本作ではむしろそれは

採用せずに家康への

暗殺未遂を企てた、と

描いていた。


そのことは批判するのに、

今度は顔が良いエピソードも

批判してくるとなると、

いったい何を描けば

満足するのか実に不思議だ。


実は小平太なんかも、

顔が良かったという話は

残っている。


榊原康政と井伊直政、

どちらが殿に愛されたか?


なんて、衆道絡みのちょっと

下世話な話すらあるくらいで。


それはさておき、

ひよが言ったように

見た目が良いというのは

立派な天賦の才である。


こんなの現代でも

見た目がよければ

モデルやタレントになれたり、

会社での付き合いのうえでも

見た目が良いほうが、

相手のウケが良いことは

普通にある。


ましてや


「ルッキズムダメぇ!」


なんてのは今の人の考え方で

当時、そんなものはない。


直政は22歳で北条との

外交の取りまとめも

していたが、

おそらく見栄えも良い若武者で

北条のほうもこういう

若者は信用できそうだ、

くらいの思いにはなっただろう。


でも直政が顔の良さだけを

武器にしていないのなんか、

前回を見たらわかる。


あの最強の武田兵士達を

手懐けるために直政は

果敢に稽古に励んでいた。


かつて勝頼がそうしていたように、

兵士達に認められるため、

自身も訓練に参加していたのだろう。


そんな傷だらけになる直政を、

家康は「人たらし」と称したが、

あれは口先だけで人に

取り入ることを意味していない。


見た目も良く人に好かれるし、

何より努力家だから、

きっと武田兵たちもお前を

認めてくれる、

だからお前にあの

最強の軍団を任せる、

と託したのは普通にわかるはずだ。


わからない、忘れてしまった、

というならそいつの頭が

おかしいので何をどう描こうと

伝わらないので、

観ないでくれと思う。



平八郎は前半に、

傷を負ったことに

気づいてないんじゃないかと、

小平太にからかわれつつも、

そんな姿が兵士達の

士気を上げていると

褒められていた。


そんな友の言葉通り、

自分は傷を負ったことがない、

と高らかに叫び


「ここから先は

一歩も通さん」


と、伯父である本多忠真が

彼を守ってくれたときと

同じ言葉を口にした。


非常にかっこいいシーンで、

本多忠勝の強さというのが

よく伝わる場面だった。


山田裕貴さんは、

すごい役者だと再認識した。


かつては本多忠勝役にしては、

線が細いかな、とか

ドラマなので繊細なイメージの

新しい忠勝でもいいか、

という記事を書いた記憶もある。


が、本作の忠勝は

これまで様々なドラマで

描かれてきたような

猛将としての部分を持ちつつ、

人間らしい魅力に満ちている。


戦国最強、無双、

みたいな言葉が独り歩き

しがちなだけであって、

無傷伝説もそうだが

本当の本多忠勝はむしろ

こういう人だったかもしれないと

思わされる。





小牧・長久手の戦いの

難しいところは、

戦術レベルでは完全に

徳川が勝利していること、

しかし結果的には

秀吉に勝てないこと。


これをドラマで表現するには

徳川の大勝利を描きつつ、

秀吉を落としすぎない表現が

必要になってくる。


つまり両雄の強さの質の違い、

というのを描かないといけない。


その点でも今回は良かった。




まだ関ヶ原までは、

十数年ある。


大坂の陣というと、

三十年だ。


家康の天下までは、

まだまだ遠い。


四天王の成長も、

家康の成長もめざましいが

それでも天下を取るためには

まだ足りないものがある。



家康が天下を取る頃には

亡くなってしまう者もいる。


何より来週は、

初回から家康を支えてきた

石川数正の出奔という、

悲しい出来事も待っている。


まだまだ進む道は険しい。