お父さんは変えられないのだから

あんたが変わりなさい


あんたが変われば

お父さんの態度は変わる。



母の言葉だ。





幼いわたしは

純粋にその言葉を信じていた。




あんたが悪い

そんな風にも受け止められた。



父が差別する原因は

父がわたしを好かない原因は

わたしにあると思っていた。

わたしの性格が悪いから。

わたしの泣き方が可愛くないから。

わたしは人をイライラさせてしまう性格なんだ。





だけど、




気難しい父を

理不尽に、わたしだけを怒鳴りつけ暴力をふるう父を


家族中が非難していた。



非難はしていたけれど

どうにもならなかった。



離婚してほしいと

兄弟全員が心底願っていたけれど、


母は、離婚しなかった。

食べていくために

学校に行かせるために

離婚はできない。と言った。



私たちは

なによりも安心安全を求めていた。

わたしたちの平和のために離婚して

とお願いしたけど

その言葉は母には届かなかった。






小学生になる頃には

父の理不尽さに怒りを覚えるようになった。

兄弟同じことをして遊んでいるのに

何故わたしだけが怒鳴られ殴られるのかが

わからず、悔しくて、

わたしは父に反発した。




弟は、シクシク泣いていた。

父に殴られているわたしを見るのが

怖くてたまらなくて辛かった。

自分は小さくて何もできなくて

だけど、どうしたら

父から可愛がられるかが

殴られるわたしを見ていて分かってしまった。

弟ばかり可愛がられてムカつく!と弟と喧嘩をした時に

弟がわたしに言った。





反発するから、余計に殴られる。

弟みたいにシクシク可愛く泣けばいいのに

アンタは泣き方が可愛くない。

神様は見ています。だから我慢しなさい。耐えなさい。



母は常々

わたしにこう言った。









当時のわたしの気持ちを

今のわたしが代弁すると、

母に

気持ちを受け止めて欲しかった。

怖いよぬ。悲しいよね。悔しいよね。

怒りたいよね。嫌だったね。

そんは風に気持ちに寄り添ってもらいたかった。






母から突き放される事が

なにより

怖く、苦しく、悲しかった。





ひとりでは、どうにもならない

行き場のない

苦し過ぎてどうしようもない気持ちでいっぱいで

押しつぶされていた。











母は、



神様はみています。

正しい行いをしなさい。

祈りなさい。

耐えなさい。

耐えればお母さんみたいに強くなります。

お母さんは、お父さんに鍛えられて強くなったのだから。









両親は厳格な真面目なクリスチャンなのだ。

(クリスチャン同士の結婚でわたしは3世になる。)

祖母はクリスチャン同士の結婚にすごく拘っていた。

母もまた、祖母に何の疑いの念もなく服従していた。

母も真面目だから…



クリスチャンの縛りも本当に辛くて…

離婚してはいけないだの

結婚するまで純潔をまもらなければならないだの


わたしは離婚もしていて

罪を犯したのだそう。

教会の裁判で罪を償わなければならない。

それまで再婚はしてはならない。

だけどわたしはまた違反をして

裁判をする前に子を授かり籍を入れたのだ。


わたしがやることなすことが

両親、特に父にとって苦しみの材料なのだそうだ。







母は争いが大嫌いで


だけど、

家は争いが絶えず

その度に悲しい顔をしていた。



母の悲しい顔を見る事がまた辛かった。


父の暴力や激しい性格は

わたしにはどうにもならず

努力しても、避けられず


だけど、父の怒りや暴力のターゲットはわたしで、わたしが争いの源になっているように感じて、本当に本当に辛かった。



殴られるわたしがいけないんだ…

父の機嫌を損ねてしまうわたしがいけないんだ…

泣き方が可愛くないわたしがいけないんだ…

弟みたいにシクシク泣けないわたしがいけないんだ…

怒っちゃいけないんだ…

反発したらいけないんだ…

どうしてわたしは生まれてきたのだろう…

こんな家に生まれてきたくなかった…




本当にどうしたらいいか

分からなかった。






母からも突き放されているようで

余計に心の行き場所がわからなくなり

苦しかった。


自分を否定され続けていて

変わらなきゃ

この思いは強かった。







この思いだけで

今日まで努力して

生き延びてきた気がする。











まりあさま

嫌なことはわたしがよろこんで



母はこの言葉が好きだとわたしに話す。






嫌なことを進んで引き受けなさい。

進んで灯りをつけなさい。

人は誰しも十字架を背負っていきている。

お母さんもお父さんから傷つけられて辛かったけれど強くなったの。

だからアンタも強くなりなさい。

アンタが変わりなさい。

お父さんは可哀想な人なの。

アンタが理解しなさい。


わたしは、そう言われ育った。




小学生のわたしが

父親の生い立ちを受け入れ

父親の理解に努めた







変わらなきゃ変わらなきゃ。

いい子にならなきゃ。

殴られないわたしにならなきゃ。

怒らせないわたしにならなきゃ。




必死に生きてきたと思う。



すごく

努力した。





努力したけれど

父は変わらなくて(暴力や差別)



わたしはまだまだなんだ…






今日まで

ずっと

努力人生だった気がする。






人から好かれる人間にならなきゃ…

嫌われない努力をしなきゃ…

母が認めるわたしにならなきゃ…










わたしは

わたしが分からない。


自分らしく生きたいんだ!!

と、心が叫んでいるのに



自分らしいわたしが分からない。









自分が自分を

否定し続けて生きてきてしまった気がする。





自分が自分を

苦しめてきてしまったような気がする。






変わらなきゃって

わたしがわたしを否定し続けていたことに

気づく。