一括受電に合意しなかったら住民から損害賠償請求? | 廣田信子のブログ

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マンションコミュニティ研究会、MSC㈱代表廣田信子より
日々のマンション生活やお仕事に、また人生にちょっとプラスになるストーリーをお届けしています。
一人ひとりが自分らしく活躍しながら、力を合わせることで豊かに暮らす、新しいコミュニティ型社会を目指して・・・

こんにちは! 廣田信子です。

明日、3月5日に、
一括受電に関する注目の最高裁判決が出る予定です。

この訴訟の経緯は、新聞等によると、
下記のようなものです。

札幌市の500戸超の団地型マンションで、
2011年ごろから一括受電方式の検討を始め、
2014年~15年、
一括受電方式を導入し、
区分所有者が自由に電力会社と電力供給契約を結ぶのを禁止し、
管理組合と電力供給契約を結ばなければならないとする
3/4の特別多数決議を可決しました。

一定数の反対者がいたのを、
押し切った形になります。

2016年4月からの完全電力自由化を前に、
駆け込んだように決議しているように感じます。

ご存知の通り、
全戸の専有部分の電力供給契約を変更してもらわないと、
一括受電(まとめて管理組合が電気を購入)には、
切り替えられないので、
ていねいな合意形成が必要な事案です。

私は、反対者がいるのは、ある意味当たり前だと思います。

一括受電への切り替えで、
今後、定期的に点検のため停電がある…。
(停電は、常に医療機器を使う等の事情がある人には、
かなりの不安材料になります。)

管理組合には、
各戸からの電気料金徴収(滞納対応含む)の仕事が発生する。

受電設備を自前で持つとなると、
今後の受電設備メンテナンス費用も考えなければならない。

等々を考えると、
まとめて電気を買うことで多少電気料金が安くなることのために、
切り替えに賛成できないという人がいても、
当たり前だと私は思います。
(これは、一般論としての話です。)

だからこそ、
どうしても一括受電切り替えが必要だという事情があるのであれば、
それを理解してもらうような丁寧な合意形成が必要で、

一定数の明らかな反対者がいる状況で、
総会決議で押し切ろうと思うのは、
無理があると私は常々思っています。

このマンションの場合、

区分所有者のうちの2人が、
現電力会社との契約を解除する書面の提出を拒否。

それによって、一括受電方式の導入ができなかったとして、
一括受電方式の導入を検討してきた専門委員会の一委員が、
同意しなかった2名を強く非難。

たぶん、2名の区分所有者に対して、
かなりの強制するような、脅しのような言動が、
あったのではないかと推測します。

(この当時、相談を受けた他のマンションの
区分所有者の声からの推測です。)

で、その専門委員個人が、
一括受電を導入できなかったことによって、
自分の専有部分の電気料金を余分に払ったことになり、
9千円の損害が発生したとして、

2人の区分所有者に対して、
不法行為に基づく損害賠償等を求めて、
2016年5月に札幌地裁に提訴したのでした。

その後、管理組合は、
2017年には、導入撤回を総会決議しています。

それなのに、
この個人による訴訟は続いていたのです。

裁判所の判断は、
2017年5月の地裁判決、11月の高裁判決で、
原告の9千円の支払い請求を認めました。

裁判では、契約変更を全戸に求めた総会決議が有効か…
ということが争点になったのですが、

裁判官は、
共用部分の変更及び管理に関して総会で決議した以上、
この決議に従うのが、区分所有建物では当然のこと、
と判断したのです。

私は、この地裁、高裁判決に強い違和感を覚えました。

えっ、区分所有法は、
専有部分の電気契約の変更強制を許容しているというの?

電気料金が短期的には安くなる…というだけのことが
区分所有法の「共同の利益」っていうの?


最近の最高裁判例は、
管理組合としての団体的な拘束を認める傾向がありますが、
それにしても、ここまで…と。

そして、
この判断が固定化し、拡大解釈されることで、
区分所有者の暮らしが、1つの価値観に強制されることを、
危惧していました。

この裁判に関して、
最高裁が上告審として受理を決定し、
2月5日に上告審弁論が行われました。

通常は、書面審理が中心の最高裁で
上告審弁論が行われ場合は、
高裁判決が見直される可能性があると言われています。

最高裁は、
区分所有法の法学者の方にも意見を聞いているといいます。

しかし、どのような判断が出ても、
このマンションに暮らす多くの人にとって、
この裁判は何か意味があったのでしょうか。

このような争いをしたことが、
もっと重要な場面での合意形成に暗い影を落とすのでは…
と心配です。

判決を前に、
3月2日の読売新聞で、
「マンション決議 拒めるか…電気契約 全戸で変更」
という記事になり、

私のコメントも記載されています。

読売新聞↓
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190302-OYT1T50144/


私は、
「総会決議の拘束力が各戸に及びすぎると暮らしづらい。
共有スペースと各戸を区別し、各戸に関することは
基本的に強制すべきではない」

と発言したことになっています、笑
(もっと丁寧に話したのですが…まとめとこうなるのです)

読者の皆さんは、分かってくれていると思いますが、

共用部分のことは、総会の決議に従うのは当たり前だが、
専有部分内のことは、
他の住戸に迷惑をかける等特段の事情がない限り、
総会の決議で縛ることはできないのでは…という趣旨です。

価値観が人によって違うのは当たり前です。

だから、強制ではなく、
協力しようと自主的に思うような管理組合運営が重要で、
それが、結局、重要な合意形成を可能にする…
というのが私の思いです。

記事の中では、全管連の川上会長が、
「老朽化が進むマンションが増える中で、
住民全体の利益が広く認められなければ、
管理や修繕も進まない」

と発言されたこととなっています。
川上会長ももっと丁寧に話をされたことと思いますが、笑。

川上会長が話されている
全員の協力を得られず給排水管設備の更新が進まないという事例と、
今回の裁判例は違いますので、
そこだけは、皆さん誤解しないでくださいね。

管理組合が協力を求めて
訴訟を起こしたわけではないのです。

専有部分の電気契約、電気料金に関して、
1区分所有者が、他の区分所有者に損害賠償請求をしているのです。

多発する漏水被害を防ぐために、共用部分と専有部分一体で、
給排水管の更新工事を管理組合ととして実施しすると総会決議し、
それに協力を求めるということとはまったく違うことです。

むしろ…
全住戸が同時にガス給湯器の取り換えを実施するのであれば、
戸当たり〇円安くするというので、
全戸一斉にガス給湯器を取り換えると総会決議した。

しかし、
自分のタイミングで別の工事会社に頼みたいという人が一定数いて、
目標数に達しないため、自分の自宅の工事費も割引にならなかった。

それは、総会決議に従わなかった区分所有者のせいだから、
損害賠償請求をする…

というような話に近いのでは…と思えてしまいます。

こんなことを言われたら、
私は強制されることに弱いので、
なんかものすごく住み心地が悪く感じると思います。

その辺のことについては、
今回の裁判を意識して、2月13日のブログに書いています。

https://ameblo.jp/nobuko-hirota/entry-12439806400.html


事前に新聞にコメントが出たこともあって、
今日、ちょっと書きました。

明日、最高裁判決が出てからでは、
書きにくいので、笑。


常に全員の合意が得られる合意形成をしている
西京極大門ハイツの佐藤理事長に、

もし、反対者がいたらどうするのですか?
と伺ったとき、

強引に進めることはしないで仕切り直しする。
反対の意見の人とのコミュニケーションを深めて、
その人にも理解してもらってから総会決議をする…と。

裁判よりコミュニケーションです!

 

 

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