「建替え検討委員会」は安易につくらない | 廣田信子のブログ

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マンションコミュニティ研究会、MSC㈱代表廣田信子より
日々のマンション生活やお仕事に、また人生にちょっとプラスになるストーリーをお届けしています。
一人ひとりが自分らしく活躍しながら、力を合わせることで豊かに暮らす、新しいコミュニティ型社会を目指して・・・

こんにちは! 廣田信子です。

「建替え検討委員会」って、つくっただけで揉めます。

どんなに、「検討するだけで建替えを前提にした委員会じゃない…」
といっても、
「建替え検討委員会」は、建替えに興味がある人が集まり
建替えの検討をする委員会なのですから、
当然、建替えの方向に進みたくなります。

と、少なくとも、周りからはそう見えます。

憲法の改正を検討する…というだけで、
憲法改正に突き進むように思え、
護憲派の人たちが警戒するのと同じです。

今の延長でいいと思っている人は、
改正を検討するのに積極的じゃなくて当たり前ですから。

そして、なぜか、
理事会は輪番制で理事は毎年入れ替わるのに、
「建替え検討委員会」のメンバーは固定で
ものすごく精力的だったりします。

先日、とある団地の「建替え検討委員会」の委員長が…

建替えを検討するための調査やコンサルティングが必要だと
委員会から理事会に上げても、

理事が1年交代で話にならなくて
いつまでたっても自分たちの提案を総会に掛けないので、
話が前に進まない、

専門委員会は理事会の諮問機関とかいっていたら、
進まないから、

建替えの検討に関することは、
「建替え検討委員会」が総会議案の提出権を持つようにできないのか…
との質問が。

もちろん、できませんよね。

理事会が総会で承認された唯一の執行機関であり、
総会への議案提出ができるのは理事会だけですから。

理事が毎年替わるので理事会に当事者能力がなくて話が進まないと
委員長は言いたいようでしたが、

理事会は、ごく普通の組合員の感性で、
そんなに急いで、建替えの調査やコンサルティングに
お金を支出する必要がないと思って、

専門委員会の提案を採択していないのかもしれません。

「建替え検討委員会」は、どうしても、
住民の感覚から離れて突っ走りがちになります。

無理もないことで、
もともと建替えに興味がある人が集まって、
建替えの事例を見に行ったり、コンサルタントの話を聞いていたら、
それは、建替えの計画をつくりたくなりますよね。

そして、私が気になるのは、
自分たちの未来のためにどの選択がいいかという視点が薄れ、

コンサルタントを使って、大きな事業をやってみたい
という願望から離れられなくなる…

ということが、ご本人の自覚はなくても、
見うけられることです。

リタイアされた方にとって、
建替え計画というのは、現役時代を思い出すような
久々に心躍る大事業なのです。

私に、つい本音を漏らされる方もいます。
「やってみたいんだよね。自分のところで建替えを。」

その「建替えしたい」というオーラが、
どんなに検討するだけだと言っても
建替えなんて考えないという組合員に警戒感を持たせるのです。

一方で、
「建替え検討委員会」が設置されている別の団地では、

耐震診断をすることすら、
耐震診断して、「耐震性が不足しているから建替えよう」と言って
建替えを進めたいための調査じゃないかと、
建替え反対派の人に警戒されて実施できません。

過去記事でも書いた通り、「建替え」という言葉に対する抵抗感は、
尋常ではありません。
→「「建替え」という言葉は聞きたくない


最近は、「再生委員会」というような名称で、
必ずしも建替えじゃなくて再生だよということで
委員会を設置しているところもあります。

が、前に書いた、稲毛三丁目団地のように、

再生を諮問しても、
どうしても建替えたい人がすぐ建替えの話にもっていくので
たいへんなのです。

名前を「再生」に変えても、こういう委員会に集まる人は、
建替えに興味がある人が多いというのも事実なのです。

国も同じで、団地再生の検討といっても、
結局、いかに団地を建替えやすくするかの検討になっています。


まず、専門委員会にこんな重大なことを検討させる前に
理事会を強化することです。

1年交代輪番制の理事会で、
建替えも選択肢に入れた大きな問題を扱うのは難しいのです。

何人かは、マンションの未来の検討のため、
継続的に役員を続ける覚悟がなくて、
合意形成に漕ぎつけるのは難しいと思います。

ただ、輪番制を崩すと、建替え派の人が理事に立候補して、
結局、建替えに突き進むので、

それができないように
あえて輪番制を守っているという管理組合もあるので、
むずかしいのです。

役所的に言うと、高経年マンションは
まずは「建替えか修繕か」の検討を…
ということなのでしょうが、

少ない負担で建替えできる条件が整った
ごく一部のマンションを除いて
(こういうところは、
建替えないかという働きかけが事業者からあるはずです)

高経年マンションでは、
私は、建替えの検討はまず置いておいて、
マンションを再生させて、
今後30年もたせることをまず考えることが先決だと思います。

その計画がうまく立てられたら、
もう建替えの検討はいらないのですから。

建替えと改修による再生を比べるのではなく
再生だけをまず考えた方がいいと思います。

名称は、分かりやすく
「マンション80年計画検討委員会」というように。

で、どうしてもそれがうまくいかない場合、
(例えば、耐震改修が難しい…というような)

始めて建替えの検討をするということの方がいいのです。

輪番制の役員のもとで、
「建替え検討委員会」を安易に設置するのは危険です。

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