今日は七夕。そして都知事選。私は期日前投票をしましたが。

 

備忘録となっているこの日記です。いってみましょう。

 

昨日の土曜日。私は朝ドラ「虎に翼」を1週間分、みました。この頃、主人もリンゴをよく食べるので、果物屋さんで、リンゴを2袋、買いました。

この日は、古本屋の仕事をはじめ、色々な雑務をこなしました。

 

今日の日曜日。私は美容院に行きました。髪の毛をシャンプーセットして頂きました。それから、喫茶「風味」に寄ってランチ。ハムとポテトのサンドイッチ、アイスレモンティーを頂きました。

帰宅してから、今日も古本屋の仕事をはじめ、色々な雑務をこなしました。

 

 

 

 

さて私は原 詩夏至様が御詩集「キッザニア」(待望社)をお送りくださったので、読みました。以前、双子の詩集となっている「シャーマン」はこのブログでご紹介させて頂いたのですが、大分、間隔があいてしまい、申し訳ないことをしました。こちらも力作ぞろいです。

 

ここでは、6篇、ご紹介させて頂きたいと思います。

 

「ざます」

 

昔、

マンガに出てくる

お金持ちの嫌味なおばさんは

みな

三角眼鏡で

語尾はいつでも「ざます」。

 

でも、本当にいるのか、

そんな人?

いるんだったら、

ぜひ見てみたい、と

常日頃から

思ってはいたのだがーー

 

これが

なかなか見つからないのだ、

まるでツチノコやUFOみたいに。

マンガ雑誌にも、

TVアニメにも、

あんなにフツーに出ているのだから

絶対、いない筈はないのだが。

 

だから、あの夏、

いつものように遊びに来ていた

東京の母の実家のお祖母ちゃんが、

玄関先で、見知らぬお客さんに

「そうざますわね」と

とっても自然に

相槌を打ったのには

心底、びっくりした。

 

(全く、どうして気づかなかったのか!

 そういえば、お祖母ちゃんも

 あの、マンガみたいな、

三角眼鏡をかけていたのに・・・)

 

それで、その後も

お祖母ちゃんが、また、何かの拍子に

「ざます」を言わないか

俺は、暫く、

聞き耳を立てていた。

 

でも

それきりだった。

そして、そのまま夏休みが終わり

次の夏休みも、そのまた夏休みも終わってーー

やがてお祖母ちゃんは

そのまま

「ざます」と

天国へ旅立ってしまった。

 

 

「アンパンマン」

 

「愛と勇気だけがともだち」*なんて

アンパンマンは

孤独なやつなんだな。

 

愛より勇気より

たった一人の

生身の友だちが

俺なら欲しいけどな。

 

愛して

裏切られて

勇気を出して戦ってーー

気づけば

どこにも引き取り手のない

愛と勇気だけが

残ってしまったのか

ーー空っぽの、心の片隅に。

 

今では

愛と勇気にしか

もう、決して心を許さない

アンパンマン。

 

今日も

愛と勇気だけを道連れに

しんと

家路につく

アンパンマン。

 

    *「アンパンマンのマーチ」(作詞・やなせたかし)

 

「音楽/抒情」

 

1.音楽

 

目が覚めても

頭の中を

まだ

走り続ける

夢の音楽。

 

あたかも

終わった

サイレント映画の

光る砂嵐のスクリーンを背に

まだ

歌い続ける

生演奏の

ヴァイオリンのように。

 

2.抒情

 

〈抒情〉は

自分が〈抒情〉であることを

忘れているとき

最も〈抒情〉なのだ。

 

〈愛〉が

自分が〈愛〉であることを

忘れているとき

最も〈愛〉であるように。

 

 

「婚活」

 

「どうして離婚したのですか、

 前の人とは?」

そんな愚直で無作法な質問に

かみさんが

凍りつくのではなく

微笑んだことは

一つの〈奇跡〉だったのかも知れない。

 

それから

1.定職があること。

2.借金がないこと。

そんな

かみさんの

ささやかなリクエストに

その時

たまたま

俺が辛うじて答え得ていたことも

ーー今思えば。

 

その日は

ちょうど俺の誕生日で、

前日は大雨。

当日は晴れ。

翌日はまた大雨。

そして、その更に翌日、

俺は小雨の駅頭で待ち合わせて

初めてかみさんが当時住んでいた

小岩のアパートの一室を訪れた。

 

部屋の隅には、

蒲団が積まれたまま。

折り畳み式のちゃぶ台に出された

お碗の中の

柔らかいラーメン。

冷えたトマトには

砂糖が振ってあった。

(そうか、

 こうするものなのか、トマトは。

 この人が

 やむなく出奔してきた

 海の彼方の

 この人の故郷では・・・・。)

 

その後まもなく

川の向こうの

葱畑の真ん中の

別のアパートに、

俺たちは引っ越した。

かみさんの二十歳の娘も一緒だった。

橋を渡れば、

もう首都ではなかった。

といって、

この世の果てでもなかった。

向かいの部屋には

インドの青年が

男ばかり

三人で暮らしていた。

(とすれば、

 あそこはもしや玄奘三蔵が遂に行き着いた

 ”天竺”だったのだろうか

 ーー今思えば。)

 

俺たちは

葱の葉のそよぎに包まれて

仕事に出かけ

そうして帰って来た。

雨は上がり

また降り

また上がった。

婚姻届は、

少し遅れて、

非番の或る日、

市役所の夜間休日窓口に

二人で提出した。

書類は淡々と受理され

すぐに俺たちの視野から消え去った。

 

まるで

小川に放たれた笹舟が

忽ち

海へと流れ去るように。

 

 

「国勢調査」

 

「五年前は

 どこに住んでいましたか?」と、調査員。

 

「おーい!

 俺たち、五年前って

 一体、どこに住んでいたっけ?」

「どこだったっけ?

 さいたまだったっけ?」

「いや、多分、もう墨田区向島に

 引っ越していたんじゃないかしらん?」

 

思えば

いろいろあった五年間だ。

祖母が死に

母も死に

俺は

都心のビルの管理人から

半分リストラみたいな

不惑の見習い配管工を経て

遺産の小さなアパートの大家に。

その間

かみさんは

更年期障害に苦しみ

一緒に 病院を あれこれ回って

仕事も 短期を あれこれ変転して

遂には 自宅で 整体を開業。

(それも、今はもう、閉めてしまったけど・・・)

 

その間

住居も 何度も変わった。

産業道路と畑に挟まれた

冬には富士山の見える郊外。

隅田川と路地裏の狭間の

夏には花火の綺麗な旧花街。

それから

せっかく母の入った病院のそばに・・・と

契約したのに

結局間に合わず

引っ越しと

葬式の日取りが

わずか一日差になってしまった

中野区のアパート

(そう、夫婦で無理やり入ったけど、

 あれ、本当は、

 単身者用の物件だったんだ・・・)

 

「数ならぬ身」か。

それは、その通りだ。

それでも、数には入れてくれるわけだ。

「じゃあ、書いといてよ」

「どこ? 向島?」

「多分ね」

 

そうとも、

多分で十分、

さしあたりは。

憶えていること。

忘れてしまったこと。

よくわからんこと。

でも、

大事なのは、

少なくとも

俺たち当人には、

現に今、こうして生きてること。

 

それとも、

違うのかい、

君たちには?

 

「航海」

 

かみさんが

大の字になって寝ている。

本当に見事な「大」の字で

思わず

ほれぼれと

見とれてしまうのだが・・・

 

その寝顔は

安らかというより

なぜか厳かで

無邪気な赤ん坊というより

むしろ

十字架のイエスの感じなのだ。

 

そんなに目いっぱい両手をひろげて

あまつさえ両脚もひろげて

かみさんよ

貴女は一体

夢の中に吹くどんな潮風に

身を曝しているのか

ーーあの「タイタニック」みたいに。

 

やがて

「うぐっ」とうめき声をあげて

こっちの世界に

戻って来る頃には

たぶんもうすっかり忘れているーー

 

そんな

真夏の夜の航海の。

 

 

原 詩夏至様、ご恵贈ありがとうございました。

「ざます」 昔、ご近所に慇懃無礼なおばさんがいて、この詩を読んで思い浮かべたのだけれど、「ざます」と言っていたかどうかは定かでないです。原さんのお祖母様は嫌味でも何でもなく上品な素敵な方だったのでしょうね。ごく自然に1回だけ、ざますが出たのでしょうね。天国へ旅立たれた時は淋しかったでしょうね。

 

「アンパンマン」 私も愛より勇気より たった一人の 生身の友だち が欲しいなあと思いました。

 

「音楽/抒情」 〈抒情〉は 自分が〈抒情〉であることを 忘れているとき 最も〈抒情〉なのだ。

うーん、奥が深いなあと思いました。

 

「婚活」 素晴らしい婚活。素敵な奥様ですね。ささやかなリクエストは一番、大事なことかも。私達も、そういえば、夜間休日窓口に婚姻届を出した気がします。

 

「国勢調査」 色々あった5年間だったのですね。大事なのは、少なくとも 俺たち当人には、 現に今、こうして生きてること。本当にこれが、一番大事ですね。

 

「航海」 十字架上のイエスの感じの奥様の寝顔。夢の中で、どんな航海をしているのでしょうね? 何だか偉大な奥様のような気がしてきました。

 

ありがとうございました。ますますのご健筆とご活躍をお祈り申し上げます!