PIW横浜も今日で終わりですね。昌磨君がどの道に進もうと応援し続ける気持ちでいます。

 

備忘録となっているこの日記です。いってみましょう。

 

昨日の土曜日。朝ドラ「虎に翼」を1週間分、見ました。寅子のお父上が無罪になって、本当に良かったですね。

私は古本屋の仕事をはじめ、色々な雑務をこなしました。久しぶりに詩作もしました。

 

今日の日曜日。私は美容院に行きました。髪の毛をシャンプーセットして頂きました。その後で、喫茶「風味」に寄ってランチ。ブルーベリーのパンケーキとアイスレモンティーを頂きました。暑くなってきましたね。それから、所要があって、百貨店に行きました。

 

 

 

さて私は原詩夏至様が御詩集「シャーマン」(待望社)をお送りくださったので、読みました。

 

ここでは、8篇、ご紹介させて頂きたいと思います。

 

「讃美歌」

 

空を見上げて

もうそこまで迫った

巨大隕石の

真っ白な耀きを

何なすすべもなく

ただ

すごく綺麗だな、と。

 

これが

世界の終わりなのか、と

怯えながらも

不思議に納得して

まだ子供の頃に習い覚えた

讃美歌など

小さく

ハミングで。

 

「出立」

 

あなたがわたしを待っていてくれた

その通りは

荒野から市の中心を貫き

また荒野へと去る

大きな光の矢。

 

ーーあたかも

ウィリアム・テルが

幼い息子の頭上の

林檎を射抜いたような

一筋の。

 

そして今

わたしたちも旅立つ

その鋭く硬く勁く真っすぐな

何ものかの飛跡を

追いかけて。

 

なつかしい

けれど畢竟ふるさとではない

街並みに

別れを告げながら。

 

「ひょっとしたら」

 

”正義” と ”正義”が

ぶつかり合ったら

最後は、多分、

殺し合いしかない。

たとえそれが

ゴマ粒ほどしか違わない

”正義” と ”正義” でもーー

 

叫べば、

叫ぶほど。

 

それなら

”真実” と ”真実” の場合は

どうだろう?

これなら、ひょっとしたら、

殺し合わずに

両立できるかも知れないーー

 

たとえそれが

どんなにかけ離れた

どんなに数多くの”真実”でも

声をからし

必死で訴えれば、

最後には。

 

そう、どうしてだろう、

いつだって

”正義” と ”正義”は

際限なく

お互いを殺し合いながら

最後は

あってもなくても同じの

軽い、透明な、

ただ血の匂いだけの、

禍々しい”何か”に

化けてしまう。

 

いっぽう

”真実” と ”真実” は

人々の数だけ

その人々が生きた人生

流した涙

噛みしめた唇

喉を涸らした絶叫の数だけ

混じり合うことなく

無限に重なり合いーー

遂には

誰にも持ち上げられない

途方もない

大きさと重さに

膨れ上がる。

 

とすれば、ひょっとしたら

人は、その昔、

”真実”の

ただ増えるばかりの重荷に耐えきれず

楽になりたくて

つい、こっそり、

”正義”を

発明したのではないだろうか?

 

まるで

不要な社員の首みたいに

ばさばさ

斬るためにーー

 

不要な

”真実” を。

 

「ブーツ」

 

かみさんが白髪染めを止めてしまった。

かみさんの頭はたちまちばさばさの

灰色に変色してしまった。

俺の頭はもともとばさばさの灰色だ。

かみさんと俺とはその灰色の

ばさばさ頭を二つ並べて

いつもの神社まで

いつもの散歩と

いつもの参拝に出かけた。

 

広い何にもない坂道を

転がるように冬がやって来た。

「根無しヨモギ」というヨモギがあることを

むかし学校で習ったのを思い出した。

ばさばさ頭を突風に靡かせ

かみさんは却ってさばさばしていた。

笑っているような龍の口から

水が流れる小さな手水舎で

両手を洗って

口を漱いで

俺たちは昔話によく出て来る

貧しく善良な老夫婦のように拝殿に額づいた

ーーあくまで「のように」ではあるけれど。

賽銭は、いつでも、一人二十円。

二人合わせれば、四十円。

硬貨が木箱にばらばら音を立てた。

境内の公孫樹は概ね散り尽くした。

 

やがて後ろからクリスマスが来るだろう。

それから正月も。

どちらも、駆け足で。

まるで二人の元気な子のように。

そして、たちまち俺たちに追いつき、

一瞬微笑み、

それから再び歓声を上げながら

俺たちを追い越し、

もう振り返らず、

どこか遠くへ駆け去っていくだろう。

 

俺たちはまた坂道を下った。

きっぱり白髪染めをやめたかみさんの頭を

俺はたいへん好きだ。

これぞ冬だ。

途中いつものサミットに立ち寄った。

この前は柿が全盛だったが

今はもう銀色の紙ブーツが

ずらりと並んでいた

冷たく、豪勢に。

 

「厠」

 

かみさんと俺は

そこで厠を拝借したーー

 

散歩の途次

いつもの道を逸れて迷い込んだ

無人の大伽藍で。

 

椿が綺麗だった。

石段は細く急勾配で

門前から何度も折れ曲がりながら

ひたすら

上へ上へと延びていた。

そして

その全ての踊り場には

苔むした地蔵が

真新しい赤い涎掛けを並べ

消えかけの目で

虚空を見つめていた。

 

彼らは衆生を

(或いは、少なくともかみさんと俺とを)

殊更に斥けてはいなかったが

さりとて

殊更に受け入れてもいなかった。

石段を登り詰めた先には

本尊も堂塔もなく

ただ

ありふれた檀家の墓群が

雨を孕んだ風に

吹かれていた。

 

途方に暮れ

また石段を下り始めたかみさんと俺は

途中

広大な駐車場の片隅に

小さな厠を見つけた。

寒々しいタイルの障壁を隔てて

かみさんと俺とは

同時に

用を足したーー

 

あたかも

それだけが

散歩の途次

この椿の綺麗な無人の時空で得た

唯一の何かであるように。

 

「音」

 

いま

かみさんが

味噌汁(たぶん)を

温め直している

ステンレスの鍋。

 

その底が

やはりステンレスのおたまと擦れ合う

妙にのんびりした

冷たい音。

 

その

カシ、カシ・・・・という

擦過音に静かにあやされつつ

味噌汁(たぶん)は

まもなく温まる。

 

やがて

少しずつ

迫り寄り始める

沸騰に

世界を巻き込んで。

 

「亀」

 

うちのバカ亀は

餌をやるとき

いつもこっちの手元ばかり見て

よこせ!

よこせ!

ほら早く!

早く!

がんがん頭を

水槽にぶっつけて

折角フードを撒いても

相変わらず

ガラスの向こうばかり

睨んでいる。

 

バカだな

やっぱり詩人の亀だな

ほら

ひとまず深呼吸して

後ろを振り向けばーー

 

しあわせは

そこに微笑んでいるのに。

 

「詩と真実」

 

ただ

単純に

きちんと言えることは

きちんと言わなければならないと

思ったのだ。

 

まさかそこから

世界が

真っ二つに

裂けてしまうなどとは

思わなかったのだ。

 

 

 

原 詩夏至様、ご恵贈ありがとうございました。

 

「讃美歌」 世界の終わりなのか、と いう時に、人は子供の頃に習い覚えた歌とかを歌い出すものなのでしょうか?

 

「出立」 大きな光の矢 何ものかの飛跡を追いかけて。何が見つかるのでしょうか?

 

「ひょっとしたら」 奥が深い詩ですね。”正義”と”正義”がぶつかったら殺し合いになってしまう。”真実”と”真実”は両立できるかもしれないけれど、不要な真実”を斬るために”正義”が発明されたのだとしたら、それは悲しい結末になりますね。そうならないようにと、祈りたいです。

 

「ブーツ」 きっぱり白髪染めをやめたかみさんの頭を 俺はたいへん好きだ。  いいですね! これぞ冬だ。もうサミットには銀色の紙ブーツがずらりと並んでいたのですね。本当に冬ですね。

 

「厠」 無人の大伽藍の光景。 途方に暮れますね。広大な駐車場の片隅に小さな厠を見つけることができて良かったですね。この椿の綺麗な無人の時空で得た唯一の何かであるように。ちょっとクスっと笑えてきました。

 

「音」 迫り寄り始める 沸騰に 世界を巻き込んで。 面白い表現だなあと思いました。

 

「亀」 ちょっと滑稽な亀の様子。 バカだな やっぱり詩人の亀だな  に笑ってしまいました。

 

「詩と真実」 きちんと言わなければと そこから世界が真っ二つに  あり得るかもと。怖いですね。

 

 

ありがとうございました。ますますのご健筆を! 「キッザニア」は、これから読ませて頂きます!