今週末は初夏を思わせる陽気でしたね。アイスショー、The ICE は男祭りということ。昌磨君は何を滑るのかな?

 

備忘録となっているこの日記です。いってみましょう。

 

 

 

昨日の土曜日。小・中学校のクラスメート、優子ちゃんのお誘いで「朗読劇 私の頭の中の消しゴム 15th Letter」を見に行きました。会場はよみうり大手町ホール。恋に落ちて、結ばれて。幸せを手に入れたふたりの前に、突然悲劇が訪れる。彼女の記憶が消えていく・・・。若年性アルツハイマー病に侵され、徐々に記憶障害が進行する。  ジーンとくるお話でした。優子ちゃん、誘ってくれてありがとう!その後で、新宿の十徳で日本酒会があるということで、少しだけ参加しました。中学時代の懐かしい面々にお会いできて、嬉しかったです。優子ちゃんのおかげで、楽しいひとときを過ごさせて頂きました!

 

 

今日の日曜日。私は美容院に行きました。髪の毛をシャンプーセットして頂きました。その後で、喫茶「風味」に寄ってランチ。ビーフシチューセットとホッとレモンティーを頂きました。

 

 

 

さて私は荒船健次様が御詩集「川崎大師本町」(金雀枝舎)をご恵贈くださったので、読みました。

 

ここでは、6篇ご紹介させて頂きたいと思います。

 

「あとがき」

 

詩集が二冊送られてきた

一冊はあとがきがない

読むのを後回しにする

もう一冊はあとがきがある

早速 あとがきを読む

 

詩集が舞台とすれば

詩は表舞台

あとがきは楽屋裏

 

私は詩集を出すとき

あとがきか後記を記す

氷山を輝かせる

海面下の巨大な氷の根

あとがきは詩集という

果実を丸ごと齧るのに役立つ

 

詩集が送られてきた

あとがきを読む

レモンサワーのよう

ページをめくる

若草が萌える言葉の勢い

世界を拓いてくれそうな

春の青い息吹

未来を垣間見させてくれる

大きな予感

 

「人間をもっと好きになりたい」

 

伝えたい思いが言葉にならない

伝えたい言葉がこんがらがる

伝えたい言葉が逃げてしまう

何を伝えたいのか分からなくなる

言葉が空回りする

 

十代の頃

将来就きたくない仕事を聞かれ

相手に伝えられない言葉が気になり

営業マンと応えた

 

どうしたら言葉を伝えられるか

色々考え悩み 自分が

もう一人の自分になって

その人と話しているうちに

言葉が伝わるようになった

 

相手の言葉を丁寧に受け止め

伝えたい思いをゆっくり話す

人に会うのが苦手でなくなった

人に会うのがむしろ好きになった

 

生きるとは

人への恋焦がれ

侘しくなって自分から進んで

人に会いに行くこともある

 

コロナ禍

自分とじっくり向き合う時間がふえた

とはいえ 人に会えない寂しさ

人に会えない物足りなさが募る

マスクしてでも人と会って話したい

伝えたいこころを直に分かち合いたい

 

今日も街に出て趣味仲間と会う

喜怒哀楽の話を肥やしに

人生という木の枝に

豊かな果実を実らせる人と

濃密な時間を共有できる歓び

人間をもっと好きになりたい

 

「詩が書けなくなると」

 

春蘭の明け方

母は原因不明の病気で死んだ

父は病院の要請で母の解剖を承諾した

その夜 春の嵐になった

眠れずに寝返りを繰り返した

翌日 熱風にカラカラに乾いた

一枚の絵のように

目覚めた

ホルマリンの臭い

朝食がどうしても食べられない

青空 目が眩む

葉桜の緑が目に染みる

火葬場

火は母を浄め

かたちを白い煙に変え

宇宙に還した

母を支えた骨を骨壺におさめた

 

生きているのかいないのか

空っぽな日

中学生の私は母の詩を書いた

教師が目を止め

将来詩を書くことを勧めた

その言葉が十代の終わりまで

燻り続けた

 

詩を書いて傘寿を過ぎた

詩が書けなくなると

母の死を経験した

多感な中学生が顔を出す

生きていることが嘘のようだった

火葬場のあの虚ろな灰の中から

拾い忘れた思い出を拾い上げる

 

「どんぶり飯」

 

孤独死した兄は

米が何より好きだった

兄は大飯喰らい

どんぶり飯を数杯食べた

 

水が澄んで鎮まる米を入れた

釜底に兄が眠っている

米が兄に話しかける

堪えていた感情が点火

米が兄にぶつぶつ話しかける

 

釜が泣く

涙が釜いっぱい湧き立ち

米の芯が透き通ってゆく

白い装束で眠る兄も透き通る

 

私は釜に悔いを曝け出す

淋しかったろう

辛かったろう

いたらなかった俺を許すな

 

釜が泣き止む

兄よ もう寝たふりをやめて

好きなだけ飯を食ってくれ

兄は焚きあがった熱い飯を

どんぶりに盛り

飢えたように掻きこむ

もっと 食える もっと

 

夜明けの手が釜に蓋をする

兄が釜底に眠っている

 

「小箱」

 

兄は小学校入学の日、先生に名前を呼ばれて泣き出した。

姉は兄が男のくせに泣いたのはみっともなかったと囃し立

てた。兄はどもり(吃音)だった。兄はどもることを恐れ

返事ができなかった。それが悔しくて泣いたのだが、姉に

は兄の気持ちが分らなかった。

 

近所に兄よりもっと強くどもる女の子がいた。ある日、兄

はその女の子のことを同士を得たように話した。兄は国語

の授業を嫌がる。読まされはしないかとびくびくしている

と言う。あのどもりの女の子は、国語の時間どう過ごすの

かと、兄は自分の悩みのように気にかけて話す。

 

個人個人が抱える悩みの小箱。人に開けてもらいたくない

小箱。私の小箱にも悩みが入っているが、大人になればそ

の小箱を開けられると思っていた。だが齢を重ねるにつれ、

病気や死などの悩みが増え小箱は窮屈になった。

 

兄は成人するにつれて、どもることを苦にしなくなり小箱

を開けて悩みを小鳥のように空へ解き放ち、ボディビルの

ジムで筋トレに励み、小箱に明るい風を入れた。

 

父母を永大供養の墓に移した翌年、兄は孤独死した。

兄の小箱を遺骨とともに入れ、私の建てた墓に納めた。

 

「蓮とこおろぎ」

 

コロナの感染が下げ止まり

義弟の墓参りは今なら行ける

そう話している矢先

親友の重く沈んだ電話

彼の息子が急死して間もない

奥さんの死

二重の哀しみ 絶句

 

歩行困難な妻を庇い

電車・高速バスを乗り継ぎ

義弟が眠る山上の墓地に立つ

晩秋

絹の風

澄んだ青空

赤城・榛名・日光連山を

パノラマ状に臨む

義弟の墓前に黙禱

 

胸の閊えがストン と落ちる

就寝

掌の温かみに目覚める

経験したことのない異質な温み

蓮の台に眠っていた

蓮の花に抱かれた夢を見たよ

それ 浄土のお使いよ

妻の思いがけない明るい言葉

 

親友の奥さんの葬儀後

しばらく経った夜更け

彼から電話

妻の骨壺の前で酒を飲んでいる

孤独の翅を震るわせ

受話器から零れるこおろぎの鳴き声

酒がじんじん腸にしみる

さみしいよ

さみしいね

 

 

荒船健次様、ご恵贈ありがとうございました。

 

「あとがき」 あとがきは詩集という 果実を丸ごと齧るのに役立つ  そう言えばそうかもしれないと思いました。私も詩集を出すときは、あとがきを書きますが、あとがきは思っている以上に大事なのかもしれないと思いました。

 

「人間をもっと好きになりたい」 豊かな果実を実らせる人と 濃密な時間を共有できる」歓び 素晴らしいですね 人間をもっと好きになりたい 本当にそう思います。

 

「詩が書けなくなると」 教師が目を止め 将来詩を書くことを勧めた その先生は先見の明があったのですね。それにしても、多感な時にお母様の死という辛い経験をされましたね。火葬場のあの虚ろな灰の中から 拾い忘れた思い出を拾い上げる 詩も拾い上げるのですね。

 

「どんぶり飯」 お兄様は大飯喰らいだったのですね。釜底に眠っているのですね 好きなだけ食べてほしいですね。

 

「小箱」 お兄様は成人するにつれて、どもることを苦にしなくなり、小箱に明るい風を入れたのですね。それは良かったですね。孤独死されたことは残念でしたが、小箱を遺骨とともに入れ、筆者の建てたお墓に納められたことは良かったと思います。

 

「蓮とこおろぎ」 蓮の台に眠っていた 蓮の花に抱かれた夢を見たよ それ 浄土のお使いよ 奥様だけでなく私もそう思います。 酒がじんじん腸にしみる さみしいよ さみしいね  さみしさが本当にこちらにも伝わってきます。

 

 

ありがとうございました。ますますのご健筆とご活躍をお祈り申し上げます!