今日は雛祭り。春の陽光でしたね。フィギュアスケート、世界ジュニア選手権での日本人選手の活躍は見事でしたね。後輩が次々と育ってきていて、頼もしいですね。

 

備忘録となっているこの日記です。いってみましょう。

 

 

昨日の土曜日。古本屋の仕事をはじめ、溜まっていた雑務を、色々とこなしました。

 

今日の日曜日。私は美容院に行きました。それから、喫茶「風味」に寄ってランチ。トマトクリームシチュウーセットとホッとレモンティーをいただきました。それから、所要があって、百貨店に行きました。

 

 

 

さて私は内藤喜美子様が御詩集「浮釣木の顚末」(土曜美術社出版販売)をお送りくださったので、読みました。

 

ここでは、6篇、ご紹介させて頂きたいと思います。

 

「新盆を迎えて」

 

馴染んだ家の空気を

あなたは無断で カバンに詰めて

持ち去ったのではありませんか

 

白状しなさいよ

あの日 カバンが異様に膨れていたのを

わたし 見てしまったの

 

ごめんな

空の上から大事に隠しておいた空気を

こぼしてくれたので

閊えていた喉のしこりが取れました

 

あなたがあちらに行ってから

たった一年しかたっていないのに

時の移り変わりは猛スピード

空き地だった隣には三軒も

家が新築されました

 

新盆でお帰りになった時に

様相が がらりと変わり

道に迷ってしまうのではないかと

心配でしたが

 

目印は迎え火と白提灯

無事に帰宅できましたが

まだコロナ いたのかと呆れ顔で

わたしの肩にグータッチ

 

少し老けたみたいだなんて

冗談か 本音か

土産にミソハギを持ってきたよ と

すっかり あなたは元気になりましたね

            (夫の一周忌はコロナ最盛期)

 

「老いという方程式」

 

老いという方程式には

どんな数字も当てはまらない

確信していた素数には

あっけなく裏切られ

ますます口を閉ざしたまま

 

いつの間に

強がりが細り

昨日の夢は何処へ消えてしまったのだろう

誰かが持ち去ってしまったのか

 

いくら探しても見つからない

何処かに仕舞い忘れているのではないですか

そっぽを向いた人たちの

後ろ姿が 小さくしゃがんでいるだけ

 

その方程式を

運が良ければ

解く人がいるかも知れない

そんな人は稀だが

Xに当てはまる数字を

果たして見付けられていたかどうか

 

いつまで続くのでしょうか

老いという方程式を

私は 答案用紙の上で書いたり消したり

いじくり回している

 

駄目じゃないか

消えた男の皮肉めいた声が

頭上からぽたぽた落ちてくる

ねえ だったら答えを教えてよ

分かるはずないわよね

あなただって解けないまま

姿をくらましてしまったじゃないの

 

X=?

そうさ

みんな強がりを見せても

答えなんて見付かりっこないんだよ

 

ああ 指が痛い

尖った鉛筆の芯が折れた

 

「浮釣木の顚末」

 

赤い小さなランプの灯を

すっかり 消してしまった

凄まじいその勢力

 

ガーデンアーチに絡ませたチロリアンランプの

楚々とした姿は

通り掛かりの人々を振り向かせた

ランプを ぶら下げ

庭一面を包み込むように照らしていたのだが

 

藤の大きな鉢植えを

陽の当たるランプの傍に移してみた

昨年はたったひと房だけの

出会いしかなかったので

今年こそはと 希望を託して

 

ところが蔓は図太く手を伸ばし

自分の存在を誇示し始めたではないか

長い花の房が 見事にしだれ

勝ち誇った沢山の顔は紫を揺すり

 

チロリアンランプから急転直下

藤のアーチに変貌

絡みついた蔓の不気味さは

まるで蛇だ

手を触れる事すら躊躇うほどに

 

どこまで勢力を伸ばすのか

侵略を止めないロシアの影が

美しく咲き誇った藤の房に棲みついた

風の敵意が花びらを散らす

 

居場所を追いやられた

チロリアンランプの花は

アーチの端でしょんぼりと蔓を畳んでいた

 

「キラキラネーム」

 

「ひまりちゃん 待って」

散歩していた私の後から

声が追いかけて来た

お子さんづれの母親かしらと

振り向いたが

それらしい人はいない

 

犬に引っ張られて

駆けてくる女性がいるだけ

「あれっ」

もしかして犬の名前が ひまりちゃん?

 

近ごろ出会う犬たちは

みんなモダンづくし

人との境界線が見えづらい

 

現代の若者たちの名前も難解

素直に読めませんね

教えられてもシニア世代には

なかなか受け入れることが出来ない

 

国もキラキラネームに

疑問を持ち始めているようだ

読み仮名への基準を定め

戸籍法改正案が急浮上とか

 

古き時代の息を

吹きかけられた名前は

次第に姿を消し

新時代の小難しさが

犬や猫たちの上にも広がり

 

少子化の加速で 動物たちは

すっかり人間の子供になりきっている

当然を銜え家族の食卓を賑わせているが

自分が何者なのか

判らなくなっているのではないか

 

「ふうせん玉」

 

半開きの

最終章の幕を

引き戻す男の いかつい腕が

視線の先に

ちらつく

 

最後まで

人間を生きるんだぞ

いいか 俺の分まで

 

何処からともなく聞こえてくる

夫の声に

ハッと目が覚める

 

夢のなかで

過去が私の記憶の部屋から立ち上がり

強く肩を押す

でも どんなに望んでも

現在には蘇らない日々

あなたは幻

 

人は記憶があるから

強くもなり

希望のふうせん玉を

飛ばすことだって出来るのだ

赤 青 黄

それぞれが追い求める色の深さで

 

破裂することを恐れるな

何度でも息を吹き込んで膨らませたら

夕焼けの山の端まで 流れ着き

茜色の雲に乗ったあなたに

会えるかも知れないね

 

「感動の卵」

 

あの日

鉢植えの鮮やかな花々には

目もくれず

注がれた先は

日陰に生えた名もない雑草に

点された黄色い小花

 

わぁ かわいい

こんなに小さくても

お花は咲くんだね

 

三歳の孫は驚きのあまり

ころげ落ちそうになる眼玉を堪えて

暫くの間

庭の景色の中に溶け込んでいた

 

どんなに小さくても

みんな命があるから

お花を連れて来てくれるのよ

大切にしなくてはね

 

ママの言葉に こっくりと首を縦に振り

そっと五本の指を翳す

幼子の悠力

いつまでも笑顔は消えず

 

あの時生まれた

感動の卵は

大きく育っているだろうか

今では いっぱしの大学生に孵化している

 

これから どんな旅路を歩むのか

いつまでも忘れないで欲しい

あの手触りを

 

婆婆は信じているよ

 

内藤喜美子様、ご恵贈ありがとうございました。

「新盆を迎えて」 迎え火と白提灯が目印になって、ご主人様は無事に新盆に帰ることが出来たのですね。こうやって、思い出して頂いて、ご主人様は幸せですね。ご夫婦のかたい絆を知ることができて、こちらの気持ちも温まりました。

「老いという方程式」 Xに当てはまる数字を見つけるのは難しそうですね。それが老いという方程式なのでしょうね。

「浮釣木の顚末」 チロリアンランプの花は可哀そうですね。藤の蔓は本当にロシアの影と重なりますね。チロリアンランプの居場所を見つけてあげてほしいと思います。

「キラキラネーム」 今や人間だけでなく、犬や猫にもキラキラネームが蔓延っているのですね。私もついていけないなあと感じています。

「ふうせん玉」 最後まで 人間を生きるんだぞ いいか 俺の分まで  力強いご主人様の声 夢の中にまで現れて素敵ですね。そして 希望のふうせん玉を 破裂することを恐れるな 何度でも息を吹き込んで膨らませ  私も希望のふうせん玉を飛ばしてみたいと思いました。

「感動の卵」 この詩は特に好きです。 あの時生まれた 感動の卵は 大きく育っているだろうか 今では いっぱしの大学生に孵化している  お孫さんは幸せですね。いいお母様、お祖母さまに囲まれて!

ありがとうございました。ますますのご健筆とご活躍を祈念致します!