アイスショー、PIW 滋賀では、宇野昌磨君、今のフリーのタイムラプスを演じたのですね。世界選手権も近づいてきましたしね。靴はうまく調整できているのでしょうか?

 

備忘録となっているこの日記です。いってみましょう。

 

昨日の土曜日。古本屋の仕事をはじめ、いろいろな雑事をこなしました。夕方は所要があって、実家に行きました。

 

今日の日曜日。私は美容院に行きました。髪の毛をシャンプーセットして頂きました。それから、喫茶「風味」に寄ってランチ。ボルシチセットとホッとレモンティーを頂きました。寒かったので温かいボルシチは美味しかったです。

帰宅して、今日も色々な事務仕事をしました。

 

 

 

 

さて、私は玄原冬子様が御詩集「福音」(版木舎)をお送りくださったので、読みました。

 

ここでは、5篇、ご紹介させて頂きたいと思います。

 

「福音」

 

そのくじをひいて

あなたは桜になって

 

このくじをひいて

わたしはカタツムリになって

 

小さな町の川べりで

ひとむかしを ともに暮らした

 

仄明るい水辺のひと冬を

ふかくふかく あなたは眠り

枝々の固い芯に ひっそりと花びらの色を蓄える

 

 すると もう それだけで

 わたしは満ち足りて

 

 このままゆっくりと枝を這ってゆけば

 いつか 薄い殻ごと 似た色の枝になって

 何処までも ひかる空へ伸びてゆけそうな気がした

 

あなたの次に眠る番が来て わたしは

梅雨入りまえの幾日かをたっぷりと眠る

 

そうして

殻の中に雨の色の水を溜める

 

   *

 

もう一度くじをひいて

あなたは声を失くし

 

残りのくじをひいて

わたしは耳を失くし

 

静けさを ただゆびのように交わして

生きてゆく準備をはじめる

記念日に

 

「交信」

 

生まれた町の夏空を

今も よく憶えている

ひとり見つめているだけで

その遠さに 結ばれてゆくような気がした

 

産院の裏庭の朝顔が

未明にひとつずつほどけてゆく

はじめて耳の底に落ちる

やわらかな この世界の音を聴く

 

 それからいっせいに

 朝顔は 空に向かい花びらをひろげ

 我さきにと信号を送る

 

 私は草のベッドの中で

 豆粒ほどの掌をひろげ

 かすかな電波を受信する

 

小惑星の呼吸のような送受信が

ひそやかに

その日はじまる

 

   *

 

今でも夏が近づくと

日の出桟橋から舟に乗り

川面の風を受けながら

あの町を訪ねてみたくなる

 

産院の跡地にはガラス張りのビルが建ち並び

家並みの向こうには

ひときわ銀色にかがやく電波塔

 

私は 遠い記憶の花に似た

パラボラアンテナを高くかざす

 

「小憩」

 

隣家は炭を商っていて その薫りは

開け放した私の家の玄関まで流れ込んできていた

 

土間に下りて両掌ですくうと

ひえびえと 宵闇の匂いがした

 

吸い込むと 爪先まで透きとおりそうで

誰にも内緒で この闇の向こうへ

まぎれ込んでゆけそうに思えた

 

ーー 幼かった頃 幾世代もの家人たちと

 ひとつ平屋で 寝起きをともにしていた

夏になると くすんだ深みどりの蚊帳を吊って

 

それを不都合に思ったことも

煩雑と感じたことも さして なかった

 

けれど 年に幾たびか ざわざわと

わけもなく心が音を立てることがあった

 

ーー 束の間 ひとりになりたくて

 ちっぽけな私の影が

 町外れの草絡む窟へ逃げ込む音だったかもしれない

 

そんなとき 私は

遮二無二 妹の手をひいて

煙突の見える土手の辺りまで 昼下りの道を下った

 

少しずつ陽が傾き 辿りつく頃には

川面はすでに 鈍色にかげりはじめていた

 

私たちは素足で水に入ると

ひたひたと寄せる闇に

夢中で炭の薫りをさがしたが

 

冷えはじめた川岸の窪みには

炭の気配など つゆほどもなくて

 

このまま日が暮れても ふたりきり

もう何処へも戻らなくていいような気がした

 

「サルベージ船で」

 

いつのころか 港町へ移り住んで

湾に浮かぶコンビナートの島に

小さな仕事を見つけた

 

夜の明けるころ 駅前の幹線道路を

海に向ってまっすぐに

灰みどりの小型ジープを走らせる

 

春のはじめに

傷ついたメジロをジャンパーにくるんで

ともに暮しはじめた

 

幾本もの木軸を丹念にけずり

こざっぱりとした鳥籠をつくって

サンザシの実をあたえた

手なずけることの難しい鳥と知って

なお そうした

 

みずからも

病や怪我をかかえた半生であるのに

いつも穏やかな生のひかりをあつめて

夏には庭に瑞々しい葡萄の蔓を這わせ

誰もが手を焼くという

珍種のサボテンの黄色い花を

幾鉢も咲かせた

 

秋の長雨が終わると

出がけに鳥籠の戸を開けておくようになった

空に帰す日が近づいていた

 

 遠くから見ると

 鉄錆と重油の匂いばかりがしそうな

 コンビナートの島は

 海沿いに並ぶ白骨のような風車の風を浴びて

 時おり思い出したようにきらめく

 

 そのきらめきに魅かれて

 この町へ流れついたのかもしれない

 

日の暮れまでタフに働き

夜はもっぱらひとり部屋にこもって

木っ端を磨き 船の模型をつくった

玩具のような救命具を積み込んだ

幾度もの サルベージ船ばかりだった

 

いつか その船を曳いて

あの 遠い北の半島へ帰りたい

 

「銀のプレート」

 

診察室の入り口には

小さな長方形の銀のプレートが掛けられていて

窓からの陽があたると

産毛のような表面の傷とからみあって

やわらかなひかりになる

 

つぎ跡のある 待合室の老いた長椅子

掛けると まだ床に足の届かなかった頃から 私は

四隅を草の実のようなビスで留められた

そのプレートを 眺めているのが好きだった

 

ガラス戸の脇に置かれたハッカの鉢

ほんのわずか 葉の奥に透明な風が抜ける

 

そう教えてくれたのは 受付のなつさんで

腰までの ながいながい三つ編みをしていた

 

 〈眼科専門医〇〇 認可番号〇〇〇〉

 

プレートに刻まれた その文字を

あれから幾たび 確かめたことだろぅ

長い時間をかけて 待合室を掠めていったもの

透き通った傷をつくり

そこを 通り抜けていったもの

 

ーー 遠くが見えなくても きっと

 もっともっと 遠くのものなら見えるかもしれないよ

   眼 ではないものでね

 

初めてひとり 学校帰りに通院した午後

先生はそう言って微笑んだ

 

 眼の中にあたたかなものが満ちて

 眼ではないものの方へ あふれはじめて

 

診察室のドアを押して 長椅子に戻ろうとしたとき

熱っぽい鼻腔の薄暗がりを

つぅっと 掠めていったものがある

 

それはきっと なつさんのゆびが傷をつけた

ハッカのみどり葉とばかり思っていたが

 

そうではなく

先生の名が刻まれた あの

こまかな傷で覆われた銀のプレートが

ただ一度 陽のひかりのように香ったのだと

 

 

玄原冬子様、ご恵贈ありがとうございました。

「福音」 桜になり、カタツムリになり、素敵な関係ですね。 静けさを ただゆびのように交わして 生きてゆく準備をはじめる 記念日に よろこびの訪れ(福音)ですね。

 

「交信」 産院の裏庭の朝顔が信号を送るのですね。小惑星の呼吸のような送受信が ひそやかに その日はじまる 今では、産院の跡地にはガラス張りのビルが建ち並び 家並みの向こうには ひときわ銀色にかがやく電波塔 私は 遠い記憶の花に似た パラボラアンテナを高くかざす  交信も今では様変わりですが、昔の記憶が甦りますね。

 

「小憩」 束の間 ひとりになりたくて ちっぽけな私の影が 町外れの草絡む窟へ逃げ込む音だったかもしれない  ひとりになる時間、必要ですよね。妹さんの手をひいて 昼下りの道を下った気持ちがよく解ります。

 

「サルベージ船で」 メジロと暮したり、珍種のサボテンの花を咲かせたり、人にはできない暮しをされているのですね。

日の暮れまでタフに働いているのに、夜は船の模型 サルベージ船をつくって・・・ いつか その船を曳いて あの遠い北の半島へ帰りたい  郷愁がヒタヒタと伝わってきます。

 

「銀のプレート」 先生の名が刻まれた あの こまかな傷で覆われた銀のプレートが ただ一度 陽のひかりのように香ったのだと   そうですね。きっとそうだと思います。

 

 

ありがとうございました。ますますのご健筆とご活躍を祈念致します!