大ヒット映画「国宝」が公開されてから、まもなく1年。
観客動員1400万人、興行収入200億円を突破。
22年ぶりに記録を塗り替え、実写邦画ナンバーワンの歴史的ヒット作となった。
そして原作の吉田修一さんの小説「国宝」も累計200万部を突破。こちらもミリオンセラーとなった。
上下巻合わせて800ページを超える長編をようやく読み終えた。
よく映画が先か原作が先か、どちらかだけにするか、いろんな考え方があるが、こと「国宝」に限っては、まったく別物と考えて、両方を堪能したらいい。映画には映画、小説には小説のそれぞれの世界観がある。小説には、映画には描かれていないシーン
が多々出てくるが、そういう背景を踏まえた上で映画が作られたと思うと、もう一度映画を観たくなる。
歌舞伎の演目と、小説で描かれる世界の繊細な重なり具合は、歌舞伎を知り尽くした吉田修一さんでなければ描けない。
1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」。
侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。
任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ世界に連れ出す。
名門の家に生まれた俊介と、互いに芸を磨き合っていく。ライバルなどという狭い了見など介在出来ない芸の極みを求める男たちしか見えないものがある。
舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。
舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、幾多の歓喜と絶望を享受しながら、「完璧を超えた完璧な芸」の先に、何が見えるのか…。
役者は、虚と実のあわいを生きている。舞台の上で生きて、死んでは奈落の底で蘇る。永遠にそれの繰り返し。切りのない世界だからこそ、極めたくなる。誰も見たことのない風景を見たくなる。
