逸青会はアバンギャルド | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

逸青会の15周年記念公演に行ってきた。

逸青会とは、舞踊家・尾上菊之丞と狂言方能楽師・茂山逸平が互いのジャンルを越え、新しい形としての舞踊と狂言の可能性を追求している二人会。

2009年から毎年創作を重ねさまざまな形で継続して開催し、このたび丸15年を迎えた。

古典作品の上演に加え、互いのジャンルの研鑽と、「舞踊」「狂言」という似て非なる芸能を合わせ、単なるコラボレーションに終わらない新しい可能性を求めて毎回「舞踊狂言」として新しい作品を創作、発表してきた。

15年を記念し、これまでにゲスト出演した、第一線で活躍する表現者、

松本幸四郎、尾上松也、、茂山千五郎など総勢19人を迎え1週間にわたり11公演する。

 

会場に着くと、逸平さん自らが、受付にいて、チケットを手渡してくれた。相変わらず、飄々と淡々としている。だから15年継続して来られたのだろう。客演の松本幸四郎さんがうまい表現をしている。「逸平さんの怖さを感じる飄々と、菊之丞さんの厳しさのある笑顔がブレンドされた舞台」だと。

平家の亡者と旅の僧の滑稽なやりとりを描く「いたりきたり」は抱腹絶倒。客演の幸四郎さんが不思議な可笑しみを醸し出していた。途中で舞台上に白い幕を出し、そこに映像を投影する試みは斬新。

新作の「御札(前編)」は、結婚したいが踏ん切りのつかない太郎が御札に振り回される話。会場のセルリアンタワー能楽堂の空間をうまく活用した演出が見事。

 

パンフレットに寄せられた関係者の表現が面白い。

●会話劇である狂言と、ノンバーバルな舞踊と、二つの世界が混ざり合ったり溶け合ったりすることで、自分の世界はこれだというコアな部分がよりクリアに見える。

●多忙な二人が、パパっと打ち合わせをして、ササッとスタッフキャストを集めて、ダダッと稽古して、バリバリ宣伝して、ドーンと晴れ舞台を披露して、ヤンヤとお客様を楽しませる。

●演者としてのみならず、プロデュース、演出、苦情処理から後始末まで、全部やっちゃう。それがすべて非凡のレベル。

●二人とも筋金入りの伝統継承者でありながら、異文化、他ジャンルとの融合を軽やかに楽しみ、その上で伝統と革新両方の良さを際立たせていく。

●真の前衛とは、経験を積み、思考を重ね、表現の真髄へと踏み込んで踏み込んで、到達する孤高の境地。逸青会はアバンギャルド。

●夫婦でいえば円熟味を増し、安定感そのもの。発想の多様さ、能力の高さで倦怠期を迎えることのないフレッシュさもある。

●当意即妙のイキまでピッタリ。コラボという陳腐な表現では言い尽くせない真に溶け合った舞台。

 

8月25日(日)まで、セルリアンタワー能楽堂で。