三者三様の法話会 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

三人の僧侶がリレー形式で法話をする。

去年9月、兵庫県の須磨寺で開かれた三者三様の法話会の動画を見た。お三方の話しぶり、話の内容がとても参考になる。 

 

まずは、須磨寺事務長の小池陽人さん。37歳。

東京都八王子市の一般家庭で、4人兄弟の末っ子として生まれた。幼い頃は、自分の言いたいことが言えないもどかしさがあったが、中学校でサッカー部のキャプテン、高校ではサッカー部で部長を務めた。

とにかく言葉で人を引っ張ることに喜びを感じていた。

奈良県立大学で地域づくりを学び、卒業後には企業からの内定を断り、母方の実家である須磨寺で僧侶の道を歩むことを決めた。

お寺で地域活性化に取り組みたいと思った。

京都・醍醐寺での厳しい修行、四国八十八カ所での歩き遍路などを遂げ、2011年に須磨寺での日々が始まった。

日々の思いを仏教に照らして2000文字ほどの文章にまとめ「陽人の随想録」と名付けた「ミニ法話」を毎月A4の用紙に印刷し、境内に置いたり、檀信徒に配ったりし始めた。

真摯に仏教と向き合う姿に感じ入ったウェブ制作会社の知人から「YouTubeで発信しないか」と提案された。定期的に法話の配信を始めたら、再生回数もどんどん増え、ファンが須磨寺を訪れる。

内容もさることながら、雰囲気や話し方から柔かい優しい人柄が滲み出ている。

小池さんは、弘法大師の「心暗きときは、遇う(であう)ところことごとく禍(わざわい)なり。眼(まなこ)明らかなれば途(みち)にふれて皆宝なり」という言葉が好きだそうだ。極楽を作るも地獄を作るも自分の心しだいということだ。

吉野弘さんの詩「生命は」をひもときながら、「誰かの風である」ような生き方が出来たらいいとも説く。

 

 

続いては、東京の野沢龍雲寺住職の細川晋輔さん。44歳。

大学卒業後、京都にある臨済宗妙心寺の専門道場にて9年間、修行生活をおくる。10年前から実家の龍雲寺住職になった。

細川さんとは、論語塾を通して知遇を得て以来、お寺にも何度も伺い、

その都度、爽やかな人柄に触れている。

細川さんは、松尾芭蕉の句を引用して、声なき声を聞く大切さを説く。

「須磨寺や吹かぬ笛聞く木下闇」木陰で耳を澄ませば、風に乗って、笛の音が聞こえてくる…。音なき音、声なき声を聴き逃さないということは、「お蔭様」も気持ちに通じる。

「やがて死ぬけしきは見えず蝉の声」地上に出てわずか1週間。蝉は死ぬ兆しも見せず、懸命に鳴いている。人間も一日一日を懸命に生きているだろうか…。

 

 

そして、トリは、言わずと知れた円覚寺管長の横田南嶺さん。59歳。

滋味深い話をユーモアにくるんで、締めに相応しい内容だった。

人に話を聴いてもらうと、嬉しいことは倍に悲しいことは半分になり、

心の整理が出来る。

人に言えない悩み事は、仏さまに聴いてもらうといい。お墓や位牌の前だと素直に話せる。冷静な判断が出来る。

観音さまの「音」とは声のこと。心の声を親身になって聞いてもらえる。

一人一人に心に「仏さま」はいる。

私の話を聴いてくださったみなさんが「観音さま」。

 

 

それぞれの話は、YouTubeで検索したら聴ける。