赤塚不二夫をパパに持つこと | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

赤塚りえ子さんの父は、赤塚不二夫。

赤塚不二夫を父に持つことは、どういうことなのだろうか。

 

りえ子さんは、株式会社フジオ・プロダクション代表でもあるが、

現代アーティストだ。

小学生の頃から美術が好きだったが、父の様に絵が上手く描けず、いつもレゴで遊んでいたからか、自分の表現は平面でなく立体と思っていた。

1994年にイギリスに渡り、陶芸を学んだが、自由な表現が出来るファインアートを学び直した。2002年以来、ロンドンのギャラリーと専属契約して、現地で個展を開いている。

 

幼い頃、時々ホームパーティが開かれていたが、壁にはピンク色の照明があって、ダンス系の洋楽をかけて、みんなで一緒に楽しく踊った。

ダンス・ミュージックは自然に身体にしみついた感覚で、70年代に初めてシンセサイザーの音を聴いてビックリして虜になり、10代からエレクトロニック・ミュージックを聞いてきた。
音楽を耳で聴くというより、身体で捉えているような感覚がある。

メロディや歌詞で自分の感情を操作されるのがあまり好きではない。

電子音楽は、新たな刺激で驚くことを常に求めている自分の感性を刺激し感覚を拡張してくれる。

とにかく束縛されることが大嫌いでいつも自由を求めているので、感情や思考の向こう側に連れて行ってくれるエレクトロニック・ミュージックで自由になることが最高に気持ちいい。

モロッコのジャジューカ村に1300年続いている音楽にハマって、2012年から毎年その村に通っている。いわば1300歳のダンス・ミュージックなのだ。

 

赤塚マンガのオノマトペの面白さを作品にしたことがある。

『レッツラゴン』の笑い声を抜き出し立体にしてランダムに並べ、見る人が立つ位置で自由に笑い声を組めるようにしてみた。

赤塚マンガを通して、「笑う」ことの大切さを父に教えてもらったと感じたので、使用するオノマトペは笑い声に限定し、父が描いたものでもあるので、「家訓」と名付けた。
『あかつか』では、仏壇の内部は仏がいる時間のない空間、仏壇の外は生きている人間がいる時間のある空間と考えた。

マンガと私生活に境界線がないような人生を送った父だったので、切り抜いた写真の父と赤塚マンガのキャラが永遠の今が続く空間(仏壇内)で生き生きと楽しく過ごしているようにした。

「赤塚」は私にとって名字であると同時に、赤塚不二夫の姿勢を示す動詞であり形容詞。“お仏壇のはせがわ”にかけて、タイトルはひらがなで「あかつか」にした。
父とコラボすることによって、大好きな父と一緒に居る感覚があるし、時には爆笑してしまうほど、とにかく制作している時がとても楽しい。

 

最近は、ネオンアートに凝っている。

赤塚家は、みんな夜行性で夜遊ぶことが大好き。

父は新宿のネオンに象徴される世界が大好きだったし、りえ子さんも  カラフルなネオンや照明で妖しくなった空間が落ち着く。

今でも夜が大好きで、やっぱり「夢は夜ひらく」のだと思っている。

ネオン管は、自分が好きな感覚や雰囲気も同時に表現できる。

 

父は誰もやっていない作品を作りたいとインタビューで話していた。

常識をギャグで壊し続けた父は友人に「オレは破壊のプロだよ」と言ったそうだ。

りえ子さんも、作品を作る上で、常識を壊す赤塚不二夫の姿勢を意識している。マンガという表現方法を拡張するための方法を特に探求しているわけではないが、父とのコラボレーションは、赤塚不二夫と一緒に遊ぶ、赤塚不二夫で遊ぶ自由な感覚は、とても楽しい。

 

『レッツラゴン』は、父が読者のことを考えずに好きなことを好きなようにやりたい放題やって連載を切られた作品。

ナンセンスを超えてシュールなギャグマンガと言われ、父も私も一番好きな赤塚マンガだ。

全く意味がないので自由で、ひたすらクダラナイ世界を突っ走るスピード感があり、「あー面白かった!」という読後感しか残らない清々しさがある。
「ベラマッチャ」のキャラ造形と屈託のないバカさがとても可愛い。

さらに切ないほど透明なバカ「トーフ屋ゲンちゃん」は、見習いたいバカの模範生。

 

『おそ松くん』のユーモアが『天才バカボン』でナンセンスに近づき、『レッツラゴン』でシュールに発展したと言われている。

赤塚ワールドでは、バカボンのママと、ハジメちゃん以外はバカ丸出し。「リコウよりバカが英雄なのだ」。

「バカにしか見えないことがある。バカにしか言えない真実がある」

バカナンバーワンと言えるバカボンのパパは、悩みも羞恥心も見栄もない。バカになると愚痴を言う暇も疲れる暇もない。

りえ子さんにとって、「バーカ」と言われるのは誉め言葉。

これからも、父を見習い「バカ」に徹していきたいと思っている。

 

赤塚りえ子さんをお迎えしての次世代継承塾。

9月1日(金)18:30~ 文京区の麟祥院本堂で。

 

きょうの打ち合わせでも、興味深い話がザクザク。

当日が楽しみなのだ。

 

りえ子さんのネオンアート