川崎市歯科医師会会長の松山知明さんは、東京ことば磨き塾や大人の寺子屋の熱心な受講生だ。
その松山さんに依頼され、川崎市の歯科医の皆さんの前で講演してきた。2時間たっぷり、診療での言葉かけについて、役立つ話を心がけた。つかみは、「歯磨きも大事だが、ことば磨きも大事」。
山口県周東町の河郷診療所の河郷先生は、週4日80人の往診をしている。高齢の寝たきり患者が多いが「なんとかなる、どうにかなる、なるようになる」をおまじないことばにしている。
南相馬の絆診療所の遠藤先生は「そうだね」「よかったよ」「大丈夫だよ」とことばかけしながら患者に寄り添う。
先日亡くなった鮫島純子さんの「なにがあっても有難う」精神も伝えた。
こうして、ことあるごとに鮫島さんの想いのバトンを渡していこうと思う。
参加した先生方も、ことばの取扱いに苦慮しておられる。
患者さんを傷つけないように言うにはどうしたらいいか、
事実をストレートに相手に伝えていいものか、
誤解した情報を信じ切っている患者さんとどう接したらいいのか、
自分と患者さんの感覚のギャップをどう埋めたらいいのか、
病状や治療の説明をいかにしてわかりやすくするか、
限られた診療時間の中で、短いことばにどうまとめたらいいか、
患者さんが「大丈夫」と言ったとき、なんともないのか…。
患者さんとのコミュニケーションの取り方にお悩みだ。
とにかく、自分本位はやめて、徹底して相手の立場にたって、1度で理解を求めようと思わず、何度も何度も、ことばを噛み砕きながら誠意をもって伝えるしかない。
一方、医療現場で、患者さんからの言葉で報われたことも多い。
●「痛みが取れました」と言われるとホッとする。
●「先生と話すと元気になる」
●「先生のおかげで夫も最後まで好きなものが食べられました」
●きょうで治療が終わりと告げると「もう来なくていいの?」と悲しそうに言われた。
●「身体を大事にして、いつまでも口の中を診てほしい」
●「先生の手はやさしく温かい」と障害のある方に言われた。
患者さんが、こういう言葉を口にするということは、お医者さんが温かく優しい言葉かけをしているからだろう。
言葉はブーメラン。嬉しい言葉には嬉しい言葉が返ってくる。嬉しくない言葉には嬉しくない言葉が返ってくる。
今回、自分の好きなところを10個あげてもらった。自分の「よかった探し」を習慣にしたら、患者さんの「よかった探し」もしやすくなる。症状の説明がしどろもどろな人、医師の説明の呑み込みがなかなか出来ない人、何かというと文句を言う人…いろんなタイプの患者さんがいるが、「いいところ」がない人はいない。いいところを褒めながら、言わねばならないことを伝えていけば、コミュニケーションが取れるはずだ。
講演後、2つの講演オファーがあった。ボクの話に共鳴共感してくださったゆえだろう。有難い限りだ。
(講演後、感謝状をいただく)
(ボクの右隣が松山先生)