レジェンドサロン、もう一人のゲストは、
とうふやあこちゃんの菅原晃子さん。
リヤカー、100種類100キロのとうふやお惣菜を積んで、
雨の日も風の日も、引き売りしている。
転校先の小学校で、5年生の頃から、陰湿ないじめを受けた。
アニメ声のような高い声やたどたどしい話し方をバカにされた。
「無視」がいちばん堪えた。
酷いアトピーにもなり、喘息の発作も併発し、心身が蝕まれた。
コンプレックスの塊となり高校を中退した。
父が実の父でないとわかり、家庭にも居場所がなくなり、
17歳で家を出た。
どんな仕事をしても長続きしなかったが、23歳で転機が訪れた。
「心で販売できる人募集!」の広告をみて、
“豆腐の引き売り”の仕事についた。
18年間お客様と支え合うことで、生きる楽しさを知っていく。
一人暮らしのお年寄りが、あこちゃんが来ることを生き甲斐にする。
「晃子」という名の如く、日の光を照らす存在になれた。
笑顔を褒められ、誰からも愛される女性になれた。
苦しかった過去も、まるごと抱き締められるようになれた。
自分の体験を通じて「いじめをなくす」活動、
引き売りを通じて高齢化社会を間にあたりにし、
看取り士の資格を取得し「高齢者を支える」活動も行っている。
あこちゃんは、壮絶な過去を「淡々と」語る。
言い淀んだり、涙ぐんだりしない。
すごい人ほど、すごいことを大げさに語らない。
そういえば、西川さんも、エベレスト登頂のことを、
近所の山にでも登るように「淡々と」語っていた。
あこちゃんも41歳。期せずして、西川さんと同い年だ。
大久保さんに感想を求められた西川さんは、「こういう流れだったんですね」と述懐していた。
大久保寛司さんは、あこちゃんの背中にずっと手を置きながら
会話していた。その姿は、まるで慈父のようだった。