こんなに笑顔良しの新聞記者に会ったことがない。
仕事柄、これまでも多くの新聞記者と接してきたが、
あまり笑顔の人にはお目にかかったことはない。
どちらかといえば強面でぶっきらぼうなイメージだ。
だが、この人は違う。
京都新聞文化部専門記者の鈴木哲法(てつのり)さん。
取材申し込みの時点で、丁寧な低姿勢なメールをいただいていた。
なんとか、この人の想いに報いたいと思った。
なんとか時間を捻りだし、お会いした。
マスク越しでも笑顔がわかった。
目尻の皺がそれを示していた。
ことば使いも丁寧。物腰も穏やか。聴き上手。
心の扉がどんどん開く。
手元を見れば、A4サイズのノートに、ボクに関する質問予定項目が、
ビッシリ書かれていた。ボクに関する事前リサーチも行き届いていた。
ノート1冊が「ムラカミ専用」。どの取材対象にも1冊専用のノートを作るそうだ。そのきめ細かさが、信楽高原鉄道事故の全貌を表す著作にも繋がったのだろう。
その笑顔で得したこと、割を食ったことを逆に質問してみた。
「事故に遭った当事者の家族取材などで胸襟を開いてもらえたが、会社では出世しなかったですね」と笑顔で答えてくれた。
63歳。定年退職後も健筆を奮う。
ボクを取り上げてもらうのは『それぞれの人生哲学』という企画。
かつて、同僚の住田功一アナウンサーも掲載されていた。
彼の声を「春秋を経てぬくもりを増した穏やかな声」と素適な表現で形容していた。「熟練アナウンサーの包み込む声は、寂しい夜はひとりぼっちでないと感じさせ、仕事の夜は伴走してくれる」とも表現してあった。事前に送られたサンプル記事を読んで、ボクが鈴木記者の紡ぎ出すことばによってどう表現されるのか楽しみで仕方ない。