早いもので、東日本大震災から10年になる。
10年前、NHKのラジオセンターから、伝え手として
誰に何をどのように伝えたらいいのか
戸惑いながらマイクに向かっていた。
ラジオビタミンのレギュラーゲストのお一人、
ノンフィクションライターの千葉望さん。
千葉さんのご実家は、岩手県陸前高田市のお寺。
当時、お寺は避難所になっていた。
現地の様子を、何度か電話で伝えていただいた。
冷静沈着な語り口で、的確に伝えてもらった。
その千葉さんが、よもや「感情の出力」のコントロールも出来ないほど、
狼狽していたとは…。
このたび、千葉さんが書かれた新刊『大切な人は今もそこにいる』を
送っていただいた。
それを読むと、故郷の情報が手に入らず、やきもきする様子、
自分の肉親の無事は確認したものの、肉親を亡くした人との間に感じる温度差、甥や姪に聞いた当時の記憶などから、当時、千葉さんが心の置き場所が見つからなかったことがわかる。
この本のサブタイトルは、「ひびきあう賢治と東日本大震災」。
最愛の妹トシを亡くし、悲嘆にくれる賢治と、
東日本大震災で家族を亡くした方々の想いをオーバーラップさせる。
大切な人を亡くすという体験を、どう受け止めたらいいのか、
悩みに悩んだ末、千葉さんは、一つの着地点を見い出す。
それは「死者には死者の人生がある」があるということ。
生前の人生と、死後の人生がある。死後の人生は、愛する人の中にある。「いなくなって悲しい」から「いてくれて有難う」へ感情が変化した。