コミュニケイションのレッスン | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

劇団「第三舞台」の作家演出家の鴻上尚史さんの書いた

コミュニケイションのレッスンと名付けた本を興味深く読んだ。

 

どんなことでも少しずつの積み重ねが上達を生む。

コミュニケイションも、興味を失わず、少しずつ練習を続けたら

間違いなく上達する。

コミュニケイションとは、「情報」と「感情」をやりとりすること。

具体的には、「聴く」「話す」「交渉する」という3つの技術。

情報の命令・伝達・指示手段としてだけでことばを使うのではなく、

そこに感情や想像力を交えることで「伝わる」ようになる。

演劇のレッスンで「ムチャクチャ語」で伝えるというのがある。

ジェスチャー抜きで意味不明のことばで伝えても、内容を理解出来る人もいる。感情やイメージをふだんから意識していると、伝わりやすいようだ。

 

鴻上さんは、「世間」と「社会」の違いを意識する重要性を繰り返す。

「世間」は本音。「社会」は公式見解。

「世間」で通用することばと、「社会」で通用することばは違う。

これを混同すると、伝わるものも伝わらない。

日本は、「世間」を大事にしてきた文化圏だが、

仲間内だけでなく「社会」も意識して、ことば選びを考えたほうがいい。

その両方をうまく使い分けたらいい。

 

コミュニケイションの達人になるためには、まず誠実に「聴く」こと。

身体の重心を下げて、丹田を相手に向けて聴く。

いつも満面の笑みで聴くことはない。

ここぞというときに微笑めばいい。

ミラーリングというが、相手と同じ呼吸、相手と同じ所作が、相手の心を解く。

ペーシングというが、興奮している相手には楽しそうに聴く、沈痛な面持ちなら深刻な顔で聴く。相手の感情に共感するといい。

ポジティブなあいづち、促し、繰り返し、言い換えも効果的。

沈黙も恐れない。 

 

声の種類を使い分けることも大事。

「大きさ」「高さ」「速さ」「間」「声色」に気を配る。

一人で話す、二人で話す、みんなと話す時で、おのずと大きさは変わる。高さにも、建前、日常、本音で変わる。速さのコントロール、絶妙な間合い、多様な声色などを駆使することで魅力的な話し方になる。

 

なにごともワンクリックでは変わらない。

ゆっくりとしか変われない。

ゆっくりでも確実に変われる。

ゆっくりとしか結果が出ないことを楽しんで。

多くの人が「聴いてもらえる存在」を求めている。

聴く面白さに目覚めたら、コミュニケイションは上達する。