コロナウイルスが教えていること⑦~「とりあえず自粛」の怖さ | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

安倍首相は、きょう「5月7日から、かつての日常に戻ることは困難と考える。ある程度の持久戦は覚悟しなければならない」と述べた。

大方の予想通り、緊急事態宣言は、5月6日では終わりそうもない。「かつての日常」は、まだまだ戻ってこない。

 

かつての日常…みんなが自由に集えて、一緒に食事が出来て、好きな演劇やコンサートに行けて…いつ取り戻せるのか見通しが立たない。

ボクが、毎月トークライブを開いてきた恵比寿アートカフェフレンズも、

4月5月のライブは皆無。一か月単位で数百万の赤字を抱えることになるそうだ。

 

歌舞音曲自粛の流れは3月下旬頃に出来た。それまでは、気を配りながら公演を実施していた団体が多かった。だが、ライブハウスでの集団感染が判明し、劇場やコンサートホールもウイルスの「温床」と一様に見なされた。「とりあえず自粛」の空気がじわじわと広まった。同調圧力の中、主催者は苦渋の決断を迫られた。

開催に踏み切れば、「観客の命より収益優先か」と非難を浴びる。

演者や裏方の大半は、本番がなければ無報酬。

ドイツでは、「文化は平時のみのぜいたく品ではない」として、無所属の芸術家への緊急支援予算(日本円にして最大兆円)を組んだ。

ドイツの文化相は「芸術家は、我々の生命維持に不可欠。あなた方を決して見捨てない」と述べた。

日本政府は、公演中止の損害額の補填は難しいと冷たい。

 

こうした中、稲盛財団が手を差し伸べた。

公演中止などを余儀なくされている劇団などの芸術団体に資金援助をすると発表した。文化芸術活動の担い手に対し、活動継続のための資金を提供する。総額は3億円。財団のホームページを通じ、5月17日まで募集する。5月27日をめどに1000万円10件、500万円40件の支援先を決める。支援金交付は6月上旬を予定している。支援の条件は3~4月に公演の自粛や中止などで500万円以上の損失が生じたことなど。実演芸術団体のほか、プロダクションや企画制作会社、舞台美術や音響、照明などを手掛ける会社も対象にする。暗い空気の中での朗報だ。

このブログを書く参考にさせていただいた毎日新聞の記事を書いた学芸部の斉藤希史子記者は、「ウイルスを劇場文化の刺客にしてはならない」と結んでいる。

(誰もいない客席に歓声や拍手が戻る日は…)

(消毒用アルコールに加え換気のための送風機が

設置された。3月22日東京文化会館で。毎日新聞より)

(毎日新聞4月2日付け朝刊記事)