映画「新聞記者」 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

映画をこんなに息苦しい想いで観たのは初めてだ。

話題の映画『新聞記者』を観てきた。

平日なのに混みあっている。問題意識を持っている顔ぶれだ。

 

東都新聞の女性記者と内閣情報調査室の若手官僚が主人公。

記者役のシム・ウンギョンも、官僚役の松坂桃李も、

心理面の葛藤をよく演じていた。

カメラワークもすばらしい。映像のカットの切り替えも巧みだ。

無駄なシーンがない。

黄色く色づいた銀杏が舞い散る風景にも意味がある。

ラストシーン。2人の表情や松坂さんの唇の動きに、

感情移入させられる。

現実になっては困ると思いながら、現実になっていると思うから、

フィクションなのにノンフィクションに思えてくる。

全編に漂う閉塞感が「リアル」。

だから息苦しくなるのだろう。ドキドキするのだろう。

 

事実と真実は違う。

いま、「事実めいたもの」が流布するから、真実が見分けにくい。

〇か×、賛成か反対、いいか悪いかの二極分化がまかり通っているから、「別の考え方」が埋もれてしまう。

言論が危機的状況にある今、

このような社会派映画が企画され上映されたことに、

一縷の望みがあるように思う。