映画をこんなに息苦しい想いで観たのは初めてだ。
話題の映画『新聞記者』を観てきた。
平日なのに混みあっている。問題意識を持っている顔ぶれだ。
東都新聞の女性記者と内閣情報調査室の若手官僚が主人公。
記者役のシム・ウンギョンも、官僚役の松坂桃李も、
心理面の葛藤をよく演じていた。
カメラワークもすばらしい。映像のカットの切り替えも巧みだ。
無駄なシーンがない。
黄色く色づいた銀杏が舞い散る風景にも意味がある。
ラストシーン。2人の表情や松坂さんの唇の動きに、
感情移入させられる。
現実になっては困ると思いながら、現実になっていると思うから、
フィクションなのにノンフィクションに思えてくる。
全編に漂う閉塞感が「リアル」。
だから息苦しくなるのだろう。ドキドキするのだろう。
事実と真実は違う。
いま、「事実めいたもの」が流布するから、真実が見分けにくい。
〇か×、賛成か反対、いいか悪いかの二極分化がまかり通っているから、「別の考え方」が埋もれてしまう。
言論が危機的状況にある今、
このような社会派映画が企画され上映されたことに、
一縷の望みがあるように思う。