空海は、その名の通り、
空と海のように無限に広がる視野で世界をとらえていた。
空海は、欲望を肯定することが生きるエネルギーだと説いた。
「あれもしたい」「これもしたい」という人間の欲望を認めた。
欲望とは、自分の内側を満たすだけのものではなく、
外に向かって何かを生み出していくものでもある。
欲望を肯定するといっても、
自分本位に生きていいということではない。
自分が幸せになることで、他者も幸せにし、
満ち足りた社会を築いていくことが出来る。
欲望に知性を加えることで、エネルギーが生まれる。
欲望に感謝を加えることで、愛が生まれる。
欲望に愛を加えることで、貢献が生まれる。
欲望にプラスαして、もう一段上の何かに変換させていくことで、
社会に貢献出来る自分に成長させていくことが出来る。
意密、口密、身密。密教の大事な理念だ。
それぞれ、思い、言葉、行動を意味する。
自分の思っていることと、言っていることと、やっていることが
一つになるとき、悟りが得られると空海は言う。
自分の欲望を認め、自分の心に忠実に行動することで、
幸せが得られる。
それぞれが生きる場所で、自分らしい思いと言葉と行動を一つにするとき、自身が成長し人のために貢献出来るようになる。
この本を書いたのは、真言密教の大阿闍梨、松永修岳さん。
彼の心訳という形で、空海の残したことばが、
心を込めたわかりやすい表現で紹介されている。
例えば…
●願いとは、自分のためにあるもの。
祈りとは、他者のためにあるもの。
願いは祈りに代わっていき、
祈りは多くの力を集めます。
●華やかな薔薇や百合だけが美しいのではありません。
山奥の誰の目にも触れないような場所にひっそりと咲く
一輪の花もまた美しいもの。
花は誰かに認められようとはしていません。
誰にそう思われようとも、花は花として咲いています。
自分も自分として花開くことー
空海はそれを「悟り」と呼んでいます。
●薔薇は桜になれないし、梨は林檎になれません。
人間だけが自分とは違う誰かに憧れて、
その人のようになりたいと願うもの。
人は自分にしかなれません。
そのことに気づいたときから個性が開花します。
この本には、選ばれた223のことばが載せられている。
何度も声に出して読みたいことばばかりだ。