歴史をひもとくことは、推理小説を読むような感覚がある。
歴史は、常に勝者の手によって書き換えられているから、
真相は藪の中だ。
その藪の中に分け入って、自分なりの推理を立てるのが面白いのだ。
作家、安倍龍太郎さんが、その藪の中に入り、大胆な説を展開する。
戦国の覇者、織田信長が葬られた本能寺の変は、
歴史ミステリーの一つだ。
安倍さんの推理によると、
信長を抹殺したのは、朝廷とイエズス会が暗躍した結果だというのだ。
光秀は、手先に使われたにすぎず、
秀吉は、抹殺計画を事前に察知していたというのだ。
信長抹殺に向けて勢力結集に動いたのは、
室町幕府の最後の将軍・足利義昭の従兄弟にあたる近衛前久。
その背後に蠢いていたのは、イエズス会。
当時、日本には、30万のキリシタンがいた。
高山右近、黒田官兵衛らが指揮をとれば、
キリシタンは、政権を転覆させる力を持っていた。
前久が、なぜそのような行動をとったのか、
イエズス会が、なぜそこまでの力を持つに至ったのか、
作者は、自分で歩いて見つけた資料で喝破する。
大阪の陣が起こった最大の理由には、キリシタン問題があった。
家康の娘、千姫もキリシタンであったという説がある。
家康の息子、忠輝、その家老・大久保長安が悲劇の末路をたどったことにもキリシタン問題がある。
幕府が執拗にキリシタン弾圧に踏み切ったことには、
大きな理由があるのだ。
鎖国に踏み切る前の大航海時代の只中にあった日本。
世界史的視点から戦国時代を見れば、解明出来ることがある。
いや、そういう視点で歴史を見る必要があると著者は訴える。