内多勝康さん。
「生活ほっとモーニング」のキャスターをしていたこともある。
NHKアナウンサーとして、10年後輩にあたる。
彼は、2年前、53歳でNHKを早期退職した。
彼が新たな道に選んだのは、マイクを持つことではなかった。
重病の子どもとその家族のための医療型短期入所施設
「もみじの家」のハウスマネージャーを担っている。
社会的意義のある転身だと敬服する。
内多さんは、幼い頃から、勧善懲悪の正義感の強い人だった。
仮面ライダーになりきって遊んでいた。
だが、その炎も下火になり、のほほんと生きていた彼に再び、
着火させたのが、尾崎豊だった。
「夢のために生きてきた俺だけど、シェリー、お前のいうとおり、
金か夢かわからない暮らしさ」
こう尾崎に問われ、矛盾をはらんだ既成概念に立ち向かわねばと
決意を新たにした。
幼い頃は、仮面ライダーの「正義感」や王選手の「絶対的強さ」に憧れ、思春期にはドラマで描かれる「人間性の奥深さ」を学び、成人してからはドキュメンタリーが伝える「真実」に胸が躍った。
放送から得た感動や興奮を伝える人になろうと、マスコミの一員となる。NHKでは、一貫して「福祉」をテーマに取材してきた。
自分が取り上げたことで、廃止寸前の福祉タクシーが存続になったり、
自閉症は個性の一つという認識が広まったり、手応えを感じることもあった。だが、放送現場でやれることの限界も感じていた。
そんなとき、取材で関わった「医療的ケアが必要な子どもたちと家族を支える仕組み」に参加しないかという誘いがあった。
社会福祉士という資格を取得してしていたことも、転身する決意を後押しした。
医療技術が進歩したことで救える命も増えたが、その後の濃厚なケアが家族の負担になっている。そんな家族がひととき安心して過ごし、
明日への活力を養う場が「もみじの家」なのだ。
「もみじの家」は、世田谷区の国立生育医療研究センターの敷地内にある。緑豊かな閑静な場所にある。保養地のホテルのようだ。
専門のスタッフが、医療と福祉の両面からケアをしてくれる。
開放的な空間に、家族で過ごすベッドルーム、入浴施設、キッチン、
プレイルームなどがある。
内多さんは、まさに様々なマネイジメントを一手に担っている。
ここは、内多さんが見つけた「正義の場」だ。
医療的ケアが必要な子どもとその家族が幸せを感じる場が、
全国に広がっていくモデルとなるよう、汗をかいている。
セーフティネットの中核に進化出来るよう知恵を絞っている。
(内多勝康さんと)
(中庭には、シンボルのもみじの木が)
内多さんには、文化放送「日曜はがんばらない」に出演してもらった。
4月29日放送予定。