丹波市市島町に、10日前オープンしたばかりのパン屋がある。
その名は「市島製パン研究所」。
開店以来、客の絶え間がない。
午前中焼き上げたパンが昼までには売り切れる。
地元産の食材を可能な限り使い、
「地元の人のために安心安全で毎日食べたくなる」パンを焼いている。
オーナーシェフの三澤孝夫さんは、
西宮市の超人気店「エスケール」を24年前から切り盛りしてきた。
出来るだけ余計なものは入れないシンプルでスタンダードなパンを目指してきた。彼はそれを「引き算の美学」と呼ぶ。
例えば食パン。白米のように毎日食べたくなるパンにしたいとの思いから、余計な味や香りは避けた。バター、卵、生クリームも入れない。こだわったのは、「口どけの良さと粉の香り」。そのため、パン生地をじっくり熟成させ、小麦粉の香りと甘さを最大限に引き出すことにこだわった。
三澤さんは、パンを作る上で、食材を求め生産者を訪ねていた去年11月、自然栽培で小麦粉を作る高橋麻美さんに出会った。
農場も見学し、自然豊かな環境に感動したという。
「丹波にはすばらしい食材が多いのに、知られていない。自分で使うのはもちろん、知り合いの同業者にもすすめたかった。そのためには地域に住み、生産者と、製品を作る“表現者”の架け橋になる必要があった」。三澤さんは、四分の一世紀かけて育ててきた西宮の店を人に委ね、妻の桃子さんと2人で、見ず知らずの丹波にやってきた。
三澤さんは、神戸で創業90年の老舗パン店で修業し、ロサンゼルスで3年パン作りをし、1993年独立。パン作り37年のベテラン。
パン作りを究めたはずの三澤さんが、初心に返って、最高の小麦で素朴なパンを作りたい。「市島製パン研究所」というネーミングには、そん
な三澤さんの想いが込められている。
実は、丹波の地で、叔父叔母が「村上ベーカリー」というパン屋を営んでいた。幼い頃、田舎に来ては、小麦粉の香りに包まれながら、パンの袋詰めの手伝いをしたものだ。特にメロンパンが好きだった。三澤さんのメロンパンも昔懐かしい味がした。
日本家屋を改造した店舗は、落ち着いた空間。
カフェスペースでは、ボリューム感あるハンバーガーも食べられる。
土曜夜だけは“夜メニュー”をふるまい、酒や一品料理が味わえる。
午前9時―午後4時。土曜のみ午後9時まで。日、月、火曜は休み。
電話0795ー85ー2520
所在地の住所が、これまたいいのだ。
市島町喜多。喜びが多く集まる場所。
(三澤孝夫さんと)
(中央が妻の桃子さん)
(ネットオークションで手に入れたという
タバコ屋のショーケース)