小堺さんが「ごきげん」なわけ | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

           (撮影・鶴崎燃さん)

 

小堺一機さんと対談してきた。

ブラウン管の中と同じ、人をごきげんな気持ちにさせる人だった。

人をごきげんにさせるということは、本人がごきげんだからだ。

きょうも、終始、爆笑続き。人を楽しませる天才だ。

 

小堺さんをごきげんな人にしたのは、家族の存在が大きいと思う。

小堺さんは、失礼ながら、上を向いた大きなお鼻の穴がトレードマーク?

その鼻は、普通ならコンプレックスになりそうだが、

祖母が「お前の鼻には運が入るね」と言ってくれて鼻高々になった。

小堺さんは、色弱と診断され、デザイナーの道を諦めたとき、

父が「いいじゃないか。人と違う色が見えて」と励ましてくれた。

 

小堺さんは、12年前、がんを患ったことがある。

その時も、「なんで自分が?なんで?」と思い煩うことはなかった。

宮本武蔵の書いた『五輪書』にある「水を本として」をひも説き、

方円の器に従う水になればいいと気持ちを切り替えた。

自分でも「ごきげん」になる術を心得ている。

 

ちょうど1年前のきょうは、母の通夜だった。

突然の母の死を受け止められないまま1年が過ぎた。

20歳で、一機さんを産んだ母は、子ども扱いしないで育ててくれた。

大人が見るような映画によく連れて行ってくれ、

彼の素朴な疑問にも、きちんと耳を傾けてくれた。

「映画の最後にENDが出るのはどうして?」と聞くと、

「人生にはエンドマークが出ないのよ」と答えてくれた。

まさに、母は、エンドマークもつけずに逝ってしまった。

ちょっとせつない話も交えて、あっという間の対談となった。

「楽しかったです」と小堺さんは、ごきげんな表情で次の場所に移動して行った。

 

対談は、元日発売の『月刊清流』2月号に掲載予定。