永さんは死なない②~妻の大往生 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

永さんは、自宅で亡くなられた。

亡くなる前日、2人の娘とアイスキャンデーをなめて、

アタリメをしゃぶって、おいしいと言いながら大笑いをしたそうだ。

永さんは、

「哀しいことが起きたら、辛いことが起きたら、笑って吹き飛ばそう」と

言っていた。だから泣いていたら、笑われてしまう。

あのアハハハ・・・という独特の笑い声で。

 

愛妻の昌子さんも、在宅介護で看取った永さんは、

自分も自宅で逝きたかったろうから、よかった。

娘の麻理さん曰く、「七夕に、三途の川でなく天の川を渡って」

昌子さんに会いに行った。

 

妻の看取りの様子を書いた『妻の大往生』。

この本には、2002年4月10日、ボクが担当していたNHKラジオ番組に

ご出演していただいた一部始終が文字化されて掲載されている。

本が出る前日「本に載せたのでよろしく」とご本人から電話があったが、

それまで、何の断りもなかった。永さんらしい。ま、いいか。

というより、嬉しかった。


4月10日は、永さんの誕生日だった。そのことをボクが言おうとしていたら、

永さんから機先を制された。

「きょうは、ボクの誕生日。産んでくれて有難うの想いをこめて、

母の墓参りに行くんです」

ボクも、その時以来、誕生日に対する認識が変わった。

 

医師や看護師、家族が連携しながら、「その日」を迎える様子。

笑って「その日」を迎えるための、日々の心構え。

昌子さんがいなくなった家に、旅先から電話したり、ハガキを書くという、

ちょっぴり切ない話・・・。

放送で話したことが、ひとことも漏らさず、掲載されていた。

いまは、文庫化されているので、読んでみたらいかが?

 

この時の放送で、

永さんが作詞し、自らが歌っている『生きるものの歌』という曲をかけた。

♪ あなたがこの世に生まれ

   あなたがこの世を去る

     私がこの世に生まれ

  私がこの世を去る

  その時 愛はあるか

  その時 夢はあるか

  そこに幸せな別れはあるだろうか♪

この歌のように、愛のある夢のある幸せな別れ方が出来たと、

永さんは言っていた。

永さん自身も、家族と同じような別れ方が出来た。

まさに大往生。

大往生とは、死ぬことにあらず。往って生きること。