永さんは、自宅で亡くなられた。
亡くなる前日、2人の娘とアイスキャンデーをなめて、
アタリメをしゃぶって、おいしいと言いながら大笑いをしたそうだ。
永さんは、
「哀しいことが起きたら、辛いことが起きたら、笑って吹き飛ばそう」と
言っていた。だから泣いていたら、笑われてしまう。
あのアハハハ・・・という独特の笑い声で。
愛妻の昌子さんも、在宅介護で看取った永さんは、
自分も自宅で逝きたかったろうから、よかった。
娘の麻理さん曰く、「七夕に、三途の川でなく天の川を渡って」
昌子さんに会いに行った。
妻の看取りの様子を書いた『妻の大往生』。
この本には、2002年4月10日、ボクが担当していたNHKラジオ番組に
ご出演していただいた一部始終が文字化されて掲載されている。
本が出る前日「本に載せたのでよろしく」とご本人から電話があったが、
それまで、何の断りもなかった。永さんらしい。ま、いいか。
というより、嬉しかった。
4月10日は、永さんの誕生日だった。そのことをボクが言おうとしていたら、
永さんから機先を制された。
「きょうは、ボクの誕生日。産んでくれて有難うの想いをこめて、
母の墓参りに行くんです」
ボクも、その時以来、誕生日に対する認識が変わった。
医師や看護師、家族が連携しながら、「その日」を迎える様子。
笑って「その日」を迎えるための、日々の心構え。
昌子さんがいなくなった家に、旅先から電話したり、ハガキを書くという、
ちょっぴり切ない話・・・。
放送で話したことが、ひとことも漏らさず、掲載されていた。
いまは、文庫化されているので、読んでみたらいかが?
この時の放送で、
永さんが作詞し、自らが歌っている『生きるものの歌』という曲をかけた。
♪ あなたがこの世に生まれ
あなたがこの世を去る
私がこの世に生まれ
私がこの世を去る
その時 愛はあるか
その時 夢はあるか
そこに幸せな別れはあるだろうか♪
この歌のように、愛のある夢のある幸せな別れ方が出来たと、
永さんは言っていた。
永さん自身も、家族と同じような別れ方が出来た。
まさに大往生。
大往生とは、死ぬことにあらず。往って生きること。