東京大学赤門をくぐり、
矢作直樹教授の定年退官に伴う最終講義を聴講してきた。
会場の鉄門講堂には、白衣姿の大学病院の先生方に交じって、
学外の矢作ファンでいっぱいだ。
矢作さんは、一人ひとりを柔和な笑顔で出迎えていた。
最終講義では、
救急医療の体制整備に尽力してきた矢作さんが、
その来し方行く末を語った。
講義の後半は、日本人の心のありようや、安全保障体制に言及した。
終戦後から、アメリカの保護下にあるという意識が根付いているが、
それを変えないといけないと静かに強調した。
それには、「道徳心の向上、情報リテラシーの向上、食の自給、
地球にやさしく」という4つのポイントをあげた。
最後に、自分を支えてくれたスタッフ全員の名前を字幕で出し
亡くなった両親と弟の写真も映し出し、感謝のことばを述べ、
講義を締めくくった。
最終講義だからと、すこぶる意識することなく、淡々とした話しぶりだった。
余談だが、矢作さんは、東大に来てからの15年、
ほとんど学内で寝泊まりしていた。
つい先日、自転車に乗っていて学内で転倒し、
救急で運ばれたらしい。
ことなきを得たからいいものの、
救急医療部長が身を持って救急体制を体感してしまった。
『月刊清流』で対談したとき、
退官後は、「日本人塾」を開きたいと語っていた。
枠に縛られなくなった矢作さんが、
どんな「次の手」を用意しているのか、楽しみだ。