一路、南相馬へ | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

原子力発電所中心半径30㎞ゾーンは危険地帯とされ
11
日目の56日から3日のあいだに92千人が
あわせて約15万人
人びとは100㎞や150㎞先の農村にちりぢりに消えた
半径30㎞ゾーンといえば
東京電力福島原子力発電所を中心に据えると
双葉町 大熊町 富岡町
楢葉町 浪江町 広野町
川内村 都路村 葛尾村
小高町 いわき市北部
そして私の住む原町市がふくまれる
こちらもあわせて約15万人
私たちが消えるべき先はどこか   
私たちはどこに姿を消せばいいのか



これは、東日本大震災後に書かれた詩ではない。

福島県の詩人、若松丈太郎さんが、1994年に書いた。

『神隠しされた街』と題された詩が、17年後、現実のものになった。


9日、南相馬まで日帰り取材に行ってきた。

いわきまでJR常磐線で行き、そこからレンタカーで、

国道6号線をひたすら北上する。

この詩の中に出てくる

広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町を通り、

南相馬市小高地区にたどり着く。

途中、線量計の数値が上がっていく。

帰宅困難区域の看板が目に入る。

道の両側に鉄柵が続く。柵の外と内、わずか数メートルで別世界。

道路一本をへだてて、同じ避難指示地域でも、

こちら側が居住制限区域(出入り自由)、

あちら側が帰宅困難地域(出入り禁止)になっている。

どちらの区域に入るかで大きな違いが出る。

立ち入りや宿泊の自由だけではなく、東京電力の対応も変わる。

保証金も違ってくれば、言うに言われぬ複雑な問題も起こる。


3月1日、常磐富岡ICと浪江IC間が開通し、

常磐自動車道は、震災以来、全通する。

インフラの復興ばかりが声高に叫ばれるが、

被災地は、4年前の時計が止まったままだ。

若松丈太郎さんの『神隠しされた街』は、こう結ばれている。


私たちの神隠しはきょうかもしれない
うしろで子どもの声がした気がする
ふりむいてもだれもいない
なにかが背筋をぞくっと襲う
広場にひとり立ちつくす