青の常滑焼 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。



素適なぐい呑みでしょ。

日本六古窯の一つ常滑焼の伝統を受け継ぎながら、

独特の「青」の風合いで、新風を送り込んでいる山田想さんの作品だ。

昨日、銀座で開かれている個展に出かけ、買い求めた。


常滑といえば、朱泥急須で知られる。

想さんの祖父の三代山田常山さんも、急須一筋で

常滑焼初の人間国宝に選ばれた。

想さんの作る青の急須を見たら、祖父は何と言うだろうか・・・。

きっと、何も言わず、目を細めるだけだろう。


名古屋時代、三代にインタビューしたのがきっかけで、

山田家とは昵懇の間柄となった。

四代常山さん(絵夢さん)夫妻とは、

つい先日、東京と名古屋で食事したばかりだ。

三代、四代の作品は、我が家でも重宝している。

だが、五代目にあたる想さんとは、初めて会った。

34歳とは思えぬ落ち着きを持ち、

過信ではない確とした自信を持った青年だった。

父親のような気分で、嬉しくなった。


陶芸家になろうとは思っていなかった。

高校を1年で中退。自分探しの日々を送るが、

22歳にして、陶芸の道に入る。

DNAというものは、突如として目覚めるものなのだろうか。

遺伝子は、宿命的なものなのだろうか。

ともあれ、三代が亡くなるまでの1年、

奇跡的に、伝統技法を直接教わる機会に恵まれた。

この世界は「守破離」の繰り返しだ。

伝統を受け継ぎ守り、そこを突き破り己の世界を磨くため離れては

独自の世界を築く。そしてまた伝統を見直す。その繰り返しだ。

だから、想さんは、朱泥も作る。焼き締めも作る。そして青も試みる。

彼と話していると、

伝統を重く受け止めすぎず、淡々と飄々と「想」を練っているように思えた。

そう出来るのは、やはり四代に渡って築かれてきた「伝統」があるからだろう。

五代目の想さんが、どんな新たな伝統を作っていくのが楽しみだ。

ぐい呑み片手に、彼の将来に想いを馳せたい。


山田想展は、明日19日まで

銀座・黒田陶苑 二階展示室で開催。

(銀座7-8-6 03-3571-3223)






         (山田想さんと)