絵本作家の「いせひでこ」さん。
旅する「絵描き」として、
旅をしては心動くものに出会い、心動くものを求めて旅をして、
自分の目で見たもの、聞いたものを描いている。
パリの路地裏で本造りをする職人を描いた『ルリユールおじさん』、
阪神大震災復興への思いを込めた『1000の風1000のチェロ』
孤独な少年と三本足の犬との心の交流を描いた『あの路』・・・
ゴッホや宮沢賢治をテーマにした作品もライフワークにしている。
そのいせさんの最新作は、『最初の質問』という絵本。
中学3年生の国語の教科書にも掲載されている詩人長田弘さんの『最初の質問』という詩に絵本にした。
詩の言葉を表面的に捉えて絵をつけるのではなく、
自分の中で一度消化し、新たな作品として表現した。
今日、あなたは空を見上げましたか。
空は遠かったですか、近かったですか。
ページを開くと、
やわらかい言葉でゆったりと語りかけてくる質問に出会う
毎日の生活の中で、いそがしさにかまけて忘れかけていること、
見ることを忘れてしまっていることを、
思い出させてくれる研ぎ澄まされた質問ばかり・・・。
いせひでこさんの絵は、全身と五感を駆使して、
その質問に精一杯こたえているようにも感じる。
言葉と絵が互いに響きあい、豊かで大きな物語世界を作り出している。
空を見上げること、風を感じること、鳥の声に耳をすませること、
雨粒でいっぱいのクモの巣に目を見はること……。
この世界はこんなに美しいものにあふれているんだと改めて気づく。
同時に、自分が大切にしていることってなんだろう、
大切な人にはきちんと言葉で気持ちを伝えたいと、
考えや想像がどんどんふくらんでいく。
そして、この絵本の最後のページには、絵は描かれていない。
白地に2行の文字。
時代は言葉をないがしろにしているー
あなたは言葉を信じていますか。
この「最後に質問」が突き刺さる。
ボクも、言葉は、いま瀬戸際だと思う。
だから、使命感にかられて、自問自答しながら、
嬉しいことばの種まきをしている。
明日15日の文化放送『日曜はがんばらない』のゲストは、
いせひでこさん。
ムラカミは、この中で、『最初の質問』を全編朗読している。
ぜひ、聞いてください。