映画『ツナグ』鑑賞記 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。


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いまマイブームの松坂桃季くんに惹かれて映画『ツナグ』を観た。やはり桃季くんはいい。演技しない演技がいい。声高にせりふを言わず、しぐさも大げさでなく、それでいてさりげない自己主張がある。樹木希林さんを相手に物怖じしていない。

死んだ者と生きる者の再会を仲介する使者“ツナグ”の見習いを努める高校生が、さまざまな依頼者の姿を目の当たりにして成長していく姿を追う。

松坂桃李くんは主人公の高校生。

ツナグの師匠でもある彼の祖母を樹木希林が演じ、温かな掛け合いを見せてくれた。

人と人のつながり、家族の絆、生死を深く見つめた物語だ。映画の全国公開は、おおむね7日までみたいだから、まだ見ていない人はぜひ!

映画の中で祖母役の樹木さんがつぶやく『最上のわざ』という詩がいい。樹木さん自身が気に入っている詩を、映画にも取り入れたものらしい。

上智大学学長も務めたヘルマン・ホイヴェルス神父(1890-1977)が、ドイツに帰国後、南ドイツの友人から贈られた詩だ。先日、日野原重明さんも101歳の心境として引用していた。

この世の最上のわざは何?
楽しい心で年をとり、
働きたいけれども休み、
しゃべりたいけれども黙り、
失望しそうなときに希望し、
従順に、平静に、おのれの十字架をになう--。
若者が元気いっぱいで神の道をあゆむのを見ても、ねたまず、
人のために働くよりも、けんきょに人の世話になり、
弱って、もはや人のために役だたずとも、親切で柔和であること--。
老いの重荷は神の賜物。
古びた心に、これで最後のみがきをかける。まことのふるさとへ行くために--。
おのれをこの世につなぐくさりを少しずつはずしていくのは、真にえらい仕事--。
こうして何もできなくなれば、それをけんそんに承諾するのだ。
神は最後にいちばんよい仕事を残してくださる。それは祈りだ--。
手は何もできない。けれども最後まで合掌できる。
愛するすべての人のうえに、神の恵みを求めるために--。
すべてをなし終えたら、臨終の床に神の声をきくだろう。
「来よ、わが友よ、われなんじを見捨てじ」と-。