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 1971年、大阪の下町で壜入り清涼飲料水を製造販売していた石山食品工業社から缶詰のミルクコーヒーが発売された。「国破れて山河あり」から名を取ったというその製品の名は、「サンガリアコーヒー」。これがその後関西を中心に名を馳せるサンガリアコーヒーの始まりであったのだ。石山食品工業社はいわゆる「鉱泉屋」や「ラムネ屋」と称された中小飲料メーカーであったが、壜製品で培った技術を缶に転用しサンガリアコーヒーを発売するに至った。1974年には社名も「日本サンガリアべバレッジカンパニー」に変える。上の写真の缶は1976年製造のサンガリアコーヒー。缶コーヒー規格制定前のもので、品名は「清涼飲料水」である。原材料に牛乳があることから、初期のものはコーヒー牛乳に近いものだったのと推測する。
 
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 こちらはこの業界では大ベテランのつばめ92号氏の所蔵する1980年及び1985年製造のサンガリアコーヒーである。正式名称が「サンガリアコーヒー乳飲料」のようなので、自分は「乳飲料ロング缶」と呼んでいる。成分を見れば現在でいうところのカフェ・オ・レタイプのものであったのだろう。左の1980年版は無香料だが、右の1985年版は香料入り。ミルク分が多いとどうしても香料を使用しがちなのはいたしかたないところではある。これとは別に「フレンチカフェ・オ・レ」という製品もあるが、それは下の方で触れることにしよう。
 
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 70年代末期のロング缶コーヒーラインナップ。ゴールドは後にブラウンに改名するが、これは乳飲料ロング缶よりもコーヒー分の強いより大人向けの味。中南米産の豆をたっぷり使用とうたっているが、サンガリアは伝統的にブラジルやグァテマラを使用するのが好きだったというところが推測できる。アメリカンコーヒーは当時各社が出していたが、薄めで軽い味だったと思われる。サンガリアのコーヒーでコーヒー入り清涼飲料はこれ以外見たことないが他にあるのだろうか。そしてフレンチカフェ・オ・レはミルク分の多い甘めのコーヒー飲料。こちらは粉乳を多く使用した、当時の典型的なカフェオレ缶コーヒー。乳飲料ロング缶との違いを比較してみたかった。この製品はデザインが多少変わりながらも90年代まで販売された。そして、ミルク分が牛乳となりサンガリアコーヒカフェ・オ・レ牛乳25%に続いていくこととなる(現在は終売)。
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 これは1980年?発行のサンガリア製品カタログに記載されているショート缶コーヒー。左のサンブラウンは同時期に販売されたロング缶のサンガリアコーヒーブラウンのコーヒー分を増量したものと思われる(それでもコーヒー飲料なのはご愛嬌)。右はサンガリア初のコーヒー規格のショート缶と思われるコーヒーレグルス。注目してもらいたいのは、説明文の中にある「自家焙煎」の文言。現在サンガリアは煎りたて・挽きたて・こしたてを売りにしているが、これは当時から一貫して行われていた製法と思わせる文章だ。サンガリア恐るべし…。KOSAI氏の所蔵品の写真を見ると、原材料は「砂糖、コーヒー、加糖練乳」。当時からすでに本格派だったのには驚く。
 
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 こちらもつばめ92号氏所蔵の缶からサンガリアコーヒーカスタムとマイルドコーヒーガーランド。現在でもカスタムコーヒーの名で販売されているが、原材料の構成はかなり違う。右のガーランドは同じデザインでがぶ飲みサイズのマイルドコーヒーエステートもあった。この時代のサンガリアは関東にも進出していたが、自販機もレアで取扱い製品も関西より少なめ。まだまだ関西ローカルメーカーだった。向ヶ丘遊園の路地裏に自販機があったが、これら製品を扱っていたかは不明である。
 
 本当はもっと書きたいことがあったが、スペースの都合上かなり端折った。近年の安かろう悪かろう的な製品のせいでサンガリアコーヒーの評価はあまり芳しくないようだが、本気を出したサンガリアは軽く他社をなぎ倒すレベルなのは既に別記事でも触れた。今後、昭和時代のようなこだわりのある製品を多く出してくれることを期待しながら今回はここまで。昔のサンガリアコーヒーについては今後も第2弾・3弾と続けていく予定である。
 
写真を提供していただいたつばめ92号氏のサイトは缶コーヒー好きなら是非とも覗いてみよう。なお、サイトに掲載されているのは氏のコレクションのほんの「一部」である。この世は上を見ればきりがない…。つばめさん写真のご提供ありがとうございました。