石田順裕/そんなときもあるやんか 2.0 -18ページ目
僕がボクシングを始めた理由、聞きます?笑
夢?
憧れ?
喧嘩に強くなりたいから?
いえ……違います。
父親に、無理やりやらされたんです。笑
これが全ての始まりです。笑
幼稚園の頃の僕は、気が弱くて、よく泣いて帰るタイプでした。
友達の輪に入れない。
入ってもすぐに揶揄われる。
今思えば、自閉症系で、コミュニケーション力がないので、そりゃ泣くわって話なんですけど、当時は真剣でした。
ある日、僕は勇気を振り絞って母に言いました。
「……幼稚園、行きたくない」
普通の家庭なら、
「どうしたの?」
「何かあった?」
ってなるところですよね。
でも、うちの父は違った。
父は、たぶん“優しさ”のスイッチを押したんです。
押し方が、ちょっと……いや、かなり雑やっただけで。笑
後から聞いた話では父は、
「いじめられてる」
「弱いままやと、潰されるかもしれん」
そう心配して、僕を強くしようと決めたらしいです。
……うん。愛やと思う。
愛やと思うけど。
愛の出し方が、ボクシング。
しかも、幼稚園児に。笑
そこから、父の指導が始まりました。
もちろん、僕は嫌でした。
嫌で嫌で仕方なかった。
でも、父親が怖くて「辞めたい」って言えない。
「やりたくない」も言えない。
なぜなら気弱な幼稚園児だから。
そんな僕に父が与えたもの。
それが……
ボクシング。
普通の幼稚園児が
友達と遊んでる時間に、
僕は
「ワンツー!」「アッパー!」「連打!」
とか言われてる。
なんやこの幼稚園児って感じですよね。笑
しかも、それが毎日。
何年も。
気づけば僕の中で、ボクシングは“日常”になっていました。
嫌いなのに。
泣きたいのに。
父が怖くて辞めたいとも言えない。
でも慣れって怖いです。
人間って「日常」になると、だいたい受け入れちゃうんです。
そんなある日、僕が小学5年生になったとき、事件が起きます。
父が僕を、無理やり車に乗せて言いました。
「行くぞ」
どこへ?
「京橋や」
京橋……?
小5の僕にとって、京橋はもう“異国”。
いや、異国っていうか、たぶん“修羅の国”。
(勝手なイメージです。京橋の皆さんごめんなさい)
そして連れて行かれたのは――
大阪・京橋にある 大阪帝拳ジム。
大阪のボクシングの“本場”みたいな場所。
扉の向こうに何があるか、分からない。
でも分かる。
ここ、絶対やばい。
僕は思いました。
「終わった…」
「怖すぎる」
“父の無理やり”が、プロへの入口になるなんて、
この時の僕は1ミリも知らなかった。
——続く

