【編集長敬白】世界を目指すなら「特別枠」はもはやない



 一人の若者が今週、米テキサスに向け旅立つ。石田順裕(のぶひろ)。36歳、プロボクシング元WBA世界スーパーウエルター級暫定王者。2月18日にテキサス南部の港町、コーパス・クリスティで、元2階級制覇王者のビッグネーム、ポール・ウィリアムス(30)=米国=との一戦に挑む。


 スーパーウエルター級は、おおまかに言うと体重67~69キロぐらいの中量級で、日本人選手がこの階級で活躍するのはまれだ。


 石田選手は2010年に王座を失ったが、その後復帰をめざし、昨年4月、ラスベガスで元世界1位の有力選手との試合に臨んだ。相手方からすれば「噛(か)ませ犬」との試合を組んだつもりだったのだろうが、そこで石田選手は鮮烈な1回TKO勝ちを収め、再び世界への階段を昇り始めた。


 石田選手と一度会ったことがある。ボクサーが、一般に気が優しくて礼儀正しいのかどうかは知らないが、石田選手は絵に描いたような好青年だった。


 以上、経済とはまったく関係ない話のようでいて、そうでもないと思う。日本の中だけで興行が成立していた時代は去った。世界を目指すなら、「特別枠」はもはや存在せず、同じスタートラインから始めるしかない。その姿は、「特別扱い」なしでの国際化を迫られる日本のビジネスと重ならないだろうか。


 彼の挑戦を見守りたい。(フジサンケイビジネスアイ編集長・松尾理也)



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