「おかえりなさい」
見ず知らずの中年女性に、不気味なほど
あたたかく迎え入れられる。
小3の春休み。
私は宗教施設に一人、預けられた。
森に囲まれた、
学校みたいな大きな建物。
中央の玄関で靴を脱ぎ、
巨大な靴箱の中から、自分の名前を探す。
あった。
中年女性の後ろをついていく。
玄関のすぐ前の階段を上りきると、
左右に長い廊下が一直線に伸びている。
左側へ進み、共用トイレと
大きな洗面所を過ぎたところに
ドアのない、奥まで見渡せる女子更衣室。
扉のない、衣服が丸見えのロッカーが
一人一列あてがわれているようだ。
私のロッカーは、前から2番目にあった。
「ここでパジャマに着替えようか」
教育係らしき中年女性の指示に従い
着替え始める。
周りの子達にジロジロ見られてるよぅ―――。
パジャマに着替えると、廊下をさらに奥へ進み、つき当たりの大部屋へ通される。
『3年生部屋』
同い年の男女が、全員パジャマで
賑やかに過ごしている。
就寝前の自由時間だろう。
女子のかたまりに入れられた。
「どこから来たの?」
「一人で来たの?」
質問攻めにあう。
それから、誰々は何々って呼んでね、と
自己紹介というかあだ名紹介が始まった。
名前の最初の1〜2文字に
「ち」をつける感じ。
私は、「ひーち」
秒で決まった。
なんだか人懐っこい子ばかり。
同士が増えて、単純に嬉しいのかな。
みんな、家族と引き離されて
死ぬほど寂しいのは、同じだもんな………。
仲良くやるしかない……!!
これから、
この子達と共に、
教育係からの「しつけ」という名の
「洗脳」と闘っていくこととなる―――。
