私は場面緘黙という精神疾患を抱えていました。

鬱病や統合失調などと比べると、マイナーで耳馴染みのない病名だと思います。

といっても、当事者の多くが大人しい性格をしていて、人前で緊張して言葉が出ない病気なので、想像がしやすいと思います。周囲や自分に当てはめて考えやすいのではないでしょうか。

ただ、単に性格的にシャイで引っ込み思案な人と比べると、その度合いが激しく、日常生活に支障をきたしているのが特徴です。人見知りと違い、不安感の強い場所では「時間が経てば慣れて人と話せるようになる」ということはなく、何年も話せない状態が続くことがあります。そこでは感情表現が下手になり、抑揚のない喋り方や表情の乏しさで、周りから変に思われたりします。

それ以外にも、異常に自意識過剰だったり不安感が強かったりします(人によりますが)。学校のトイレが恥ずかしくて使えなかったり、道端を歩いているだけで不安に襲われ、泣いてしまったり。

また、自分でも不思議だったのが、場所によっては初対面でも問題なく話せることと、緘動という体が動かなくなる症状、吃音ぽくなることです。

「場面」緘黙という名前だけあって、Aでは話せるけどCでは話せない、Bでは少し話せた、Eでは笑えたけど話はダメ…と、場所や人や状況によって、症状はコロコロ変わっていきます。必ずしも理由づけ、解釈が簡単とは限りません。

緘動は表情が石のように硬くなり、顔が動かせないなんだこれは⁉︎となったので自覚しました。まさに金縛りのようなもので、ちょっと動かそうとしてもピクリとも動かないのです。

緘黙症の出る場所で無理矢理話そうとすると、吃音ぽくなっていました。声を押し出そうとしてもなかなか出てこない。「そうですね」が「そ...おぅ...でー...す、ね」みたいになるのです。苦しそうな話し方になってしまいます。

緘黙症は確かに生きづらいですが、持って生まれた気質が大きいので、あまり自分を否定せずに生きていきたいです。