世田谷パブリックシアターで別役実の童話をもとにサーカスがお話しに組み込まれた劇「空中ブランコのりのキキ」を観た。

 

この世で唯一三回宙返りが出来るそのサーカスの花形スターキキ(咲姫みゆ)。いつも万雷の拍手をもらっていたキキだったが、いつの日か他の誰かが三回宙返りを成功させる日が来たら、彼女の存在価値がなくなってしまう、と怯えていた。

そんなキキの幼友達、サーカス団の人気者ピエロ、ロロ(松岡広大)は死ぬかもしれない四回宙返りのことなんて忘れろ、とキキに言うのだが。。。

 

一方で二人は丘の上に住む殺し屋三兄弟(玉置孝匡、永島敬三、田中美希恵)—未だ誰かを殺せたことがない殺し屋—と友達になり、彼らに三回宙返りを見にサーカスに来るように誘う。

その夜、三回宙返りを成功させた者がいると聞いたキキは”鳥のように空へ舞う”ことを願って一世一代の勝負に出る。

 

別役実の童話3作品「空中ブランコのりのキキ」「山猫理髪店」「丘の上の人殺しの家」を演出家、振付家、作家の 野上絹代が構成・演出し、世田谷パブリックシアターが長く続けてきたサーカスプログラムからの出演者たちのパフォーマンスと合体させて夏休みに大人も子供も楽しめる観て楽しい、考えて面白いエンタメ舞台を作り出した。

 

ジャグリングやエアリアル(天井から吊るされた布を身体に巻き付けて空中でアクロバティックなパフォーマンスをする)を楽しみながら別役童話のちょっと怖いファンタジーを味わう。

二人の宝塚出身女優(咲妃とMC役の瀬奈じゅん)が華やかに、そしてしっかりと舞台を引き締める一方で、殺し屋三人の見て、聞いて楽しいやりとりで笑いを誘う—特に長男役の玉置が出てくるだけで子供たちにウケていた—、全体のバランスが取れたエンタメを楽しんだ。

 

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